TOAFAEC定例研究会記録(13)     TOPページ
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202312月定例(TOAFAEC309回)ご案内(再)
   ……江頭晃子(アンティ多摩) December 12, 2023 9:47 PM
 今年最後の定例会は、今週末日曜日に開催します。
中国における地方と都市部の賃金格差は1980年代から広がり、国による財政配分も都市に集中しがちでした。地方では公共サービスの一端を住民自治組織が担ってきましたが、さらなる若者の都市部への流出により、自治組織自体の高齢化も進んでいます。中国政府は、2017年から「郷村振興戦略」を開始し、農村支援に力を入れて新たな住民組織づくりを進めています。
 四川省の青神県における地域社会の変化の実態と住民活動の実際についてご報告いただきます。社会教育は「上から」と「下から」のせめぎあいの中で展開してきましたが、中国の地方都市における社会教育の発展の可能性を一緒に考え合いたいと思います。どなたもどうぞお気軽にご参加ください。
           記
・日時:1217日(日)13:0015:00  
・会場:杉並区高井戸地域区民センター第1集会室(オンライン同時開催) 
・テーマ:「中国農村の社会変化と農村における社区教育提供 ―四川省青神県の事例から」
・報告:祁 暁航(キギョウコウ)さん(北海道大学博士後期課程)
・申込:当日直接会場へどうぞ。(井の頭線高井戸駅すぐ)
 *事前にご連絡いただけると資料準備の関係で助かります。
 *オンラインに参加ご希望の方は、16日(土)夜までにご連絡ください。
   山口  IZK07252@nifty.com  090-1548-9595
・終了後は名護フォーラムの反省会、その後懇親会です(自由参加)→■
*<参考>報告者からの内容紹介(祁暁航さん・北大院)
●「1980年代後半から中国では都市と農村の経済格差が大きくなり、農村から都市部への出稼ぎ労働者が増え始め、人口構成や社会構造が大きく変化してきました。若年労働者が都市へ流出し、農村では高齢者などの留守家族問題が多くなり、農村の公共サービス提供の主役であった村民委員会は、住民自治組織としての側面と末端行政の窓口機関としての側面を併せ持っていましたが、多様化する公共サービスへの要求に応えられなくなってきました。
 このような状況下で、農村住民の自治が注目され、郷村振興戦略(2017)の主要課題の一つである「組織活性化」のために、新たに農村住民組織の設立が求められています。社会教育活動を通じて住民組織がどのように形成され、公共サービス提供への住民参加がどのように変化しているのか。相互扶助・相互学習の実態と、そのような学習支援が、生産と生活の問題を解決するためにどのように提供されているのか、中国四川省の青神県で、現地調査に基づく研究報告を行います。
 今回の報告では主に、①「留守家族」に代表される中国農村の社会変化と農村における社区教育提供(住民活動の展開)、②青神県における「留守家族」支援をめぐる多主体協働メカニズムの形成、③代表的な2つの事例(女性協同組合と高齢者食堂)について報告・考察します。」
祁 暁航(北海道大学博士後期課程)さんの報告  (撮影:王操さん) →当日の関連写真→■


記録
(王 操:北京師範大学大学院 2023年12月21日00:21)
〇参加者小林文人、山口真理子、石井山竜平、上田孝典、江頭晃子、呉世蓮、小田切督剛 祁暁航
 沈明明、王操、李正連(敬称略)
 *編集委員会ページもご覧ください。→■
〇内容:2023年最後の定例研究会は、編集会議(沖縄フォーラム反省会・29号編集) の前に開かれました。祁暁航さん研究報告、そして最後にイーストビレッジにて懇親会(忘年会)を行いました。
 今回の報告者は、北海道大学大学院教育学院博士課程の祁暁航さん、「中国農村の地域社会変化に伴う地域社会教育活動と住民組織の結成―四川省青神県の事例から」をテーマにご報告いただきました。まず、中国の農村政策の変遷(政治中心→経済・市場中心→公共中心)を新中国成立から現在まで振り返り、そしてそこから発生した地域社会の変化(労働力流出、農村コミュニティ再構築の試み、全面的な農村発展)を述べられました。次に、人口流出問題の激しい四川省青神県の実態に関わる各セクターを紹介され、研究調査地である留守家族(働き手が都市部へ出稼ぎに行き、実家に残っている家族)の住民たちが活動を展開するNPO団体「安家覇村女性農業協同組合」のあらましについてご紹介いただきました。
 現地に行かないと知ることが難しい内容を具体的に解説され、祁さんが報告されている途中にも小林先生や上田先生を始め、皆さんからの質問(農村戸籍など)で盛り上がりました。ところがこれが予想以上に盛り上がりすぎてしまい、半分の内容にも辿り着くことなく、なんと時間切れ。今この報告文を執筆中の筆者も未練がましいので、こちらに今回の祁さんによる要点を述べます。
 【祁さんの要点】中国の政策や社会情勢の変化が、農村地域に多くの変化をもたらした。農村コミュニティの再構築においても、それぞれの地域が手探りで試験的に行っているのが現状である。したがって、中国農村の発展をマクロ的視点のみではなく、地域に即してより深く考察することが重要。その地域が課題にいかにして対処するかを知り、地域多様な資源の調達・活用、地域の内生的な発展をいかに把握していくか、中国の農村を理解することに必要不可欠な点である。
 筆者は、社会教育とは、「各時代に生きてきた人々の魂の叫び」なのではないかと考えています。貧しい人には教育を、という啓蒙主義的なアプローチをする前に、そうした人たちがいるからこそ、今の私たちは豊かな生活を享受できるという感謝と反省の気持ちを忘れないこと、且つそうした彼らの生き方や価値観を的確に感じ取り、皆でよりよい方法を共に考え、共に実行していくことが重要なのではないしょうか。そしてそれこそが研究者としての使命なのではないかと今回の報告を拝聴し、改めて実感しました。
 続いて別室へ移動し、11月に行われた「東アジア種がい学習」名護フォーラムの反省会を行いました。今回のフォーラムでは素晴らしい外国人留学生達が集ったおかげで、日中韓において円滑な学術交流(通訳・翻訳)が行われたことや、島袋正敏さんが「東アジア生涯学習研究フォーラムin名護」のタイトル(墨筆)を書いてくださったこと、北京の楊樹雨先生が生きたカニを小林先生に託したこと等のエピソードを話されました。また、来年に向けた年報(第29号)執筆に関することも話し合いました。詳しくは編集委員会ページご覧ください。→■
 最後はいつもお世話になっている、あたたかい笑顔と美味しい料理を提供してくださるイーストビレッジへ! 日曜日は定休日だったにもかかわらず、私達のためだけに開けてくださいました。この日はクリスマスカラーをイメージした、いつもよりも特別な料理でした。途中から金亨善さんと遠藤輝喜さんも加わり、みんなで乾杯。今年最後を締めくくる、素敵な夜となりました。
今年の研究会終わるー忘年会へ(イーストビレッジ・20231217 撮影:金亨善さん)

イーストビレッジ・マスター夫妻と乾杯!(右端:遠藤輝喜さん)


11月定例(TOAFAEC第308回)研究会・ご案内(再々)   
             ー編集長・李正連 (2023/11/22(金) 10:03)
 「東アジア生涯学習研究フォーラム」が21日に終わりました。3日目のエクスカーションは、佐喜眞美術館(宜野湾市)に於いて、丸木位里・丸木俊夫妻の「沖縄戦の図」の前で佐喜眞館長のお話を伺い、海勢頭豊さんの歌をお聴きするという、小林先生ならではの企画でした。参加された各国の皆様も非常に満足されたようで、準備した側としても大変うれしく思いました。
 皆様にご協力いただいて無事発刊することができた『東アジア社会教育研究』第28号は「平和と地域」をテーマにしております。ウクライナ戦争の長期化をはじめ、米中対立の激化や東アジアにおける緊張関係に加え、つい最近はイスラエル・ハマス戦争も起きるなど、平和について一層考えさせられるこの頃です。
 今月19日〜21日に東アジア生涯学習研究フォーラムが沖縄の名護市で開催されましたが、その事前学習の意味も含めて戦争と平和について取り上げる、この特集になったものです。総論をはじめ、沖縄と済州、日韓市民及び高校生交流(川崎と富川)について読み応えのある原稿が寄せられました。そして、コロナ禍で3年間休止していた「やんばる対談」が再開され、その記録が久しぶりに掲載されました。その他にも沖縄・奄美から多くの論文とエッセイが投稿されました。
 下記のように28号の合評会(対面とオンライン)を開催いたしますので、是非ご一読いただき、忌憚のないご意見・ご感想をいただければ幸いです。
 なお、合評会の一週間前には東アジア生涯学習研究フォーラムが行われましたので、フォーラムでの感想も共有できる時間にさせていただきたく思います。
●『東アジア社会教育研究』第28号合評会  〇日時:1124日(金)18152050
〇内容:年報28号合評(各執筆者・投稿者・参加者)、東アジア生涯学習フォーラム名護の感想
〇会場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室  〇開催方法:対面及びオンライン同時開催
 

記録
 金亨善(韓国生涯学習研究フォーラム、東京大学・院博士課程)
〇日時:2023年11月24日(金)18:30~20:50 オンライン同時配信
〇参加者:李正連、内田純一、江頭晃子、呉世蓮、小田切督剛、金亨善、小林文人、齋藤真哉、
     松尾有美、山口香苗、山口真理子、梁炳賛(敬称略・五十音順)
〇記録: 金亨善(韓国生涯学習研究フォーラム) November 26, 2023 10:26 AM
 11月21日(名護府フオ-ラム)の振り返りと、年報28号についての合評を話し合いました。大きく1)第28号の合評、2)東アジアフォーラムの振り返り、3)第29号に関する話がありました。
 第一に、内田純一先生から年報28号特集のテーマ選定および執筆過程に関する経緯を振り返りながら話題提供をしていただきました。「平和と地域」は今回の東アジアファーラムの開催地となった沖縄をはじめ、日本・韓国・中国・台湾の歴史と今の課題を包括するものとして提起され、占領が戦後も形を変えて続いていることを共有することが今回のテーマであるという認識の基で、各国・地域の戦いの様子を載せていただきました。
 東アジアにおける冷戦体制の視点、東アジアの歴史に日米安保条約と米軍による沖縄の占領支配を結びあわせる一つのシステムを見つめることが今回の総論の根底にあったという話が出ました。その体制が構築される過程においておきた韓国チェジュ島の4・3事件や台湾の2・28事件といったさまざまな暴力や被害に対する共通の抵抗運動経験を背景としながら、東アジアという広がりの中に、それぞれの運動経験をつき合わせる「対話」を作り上げることが特集の目的ともいえます。そして各国の実践の記録を共有しあい、巻頭言で行っている住民の教育決定権を保障する社会教育の「心」を描き「地域」を守ることはどういうことかを改めて考える機会となりました。
 第二に、話題提供を踏まえた参加者からのコメントをいただきました。文人先生からは、東アジアも各国の「事実」をおさえながら「地域的に現実」を考えてきたこと、さらにそこから日本の社会教育の課題を考えていくことの大事さに関するコメントがありました。沖縄だけでなく、各地域の現状という事実を浮き彫りにすることがTOAFAECの仕事でもあることですね。梁先生からは、これまで漠然としていた東アジアの課題意識について、沖縄の事実を見ながら、より明瞭になり、特に社会教育施設の所々で活躍している住民たちに会うことでその活動の具体性が分かってきたという感想がありました。私自身も「事実」を知ることから論を立てていくことの意味が今回の特集と沖縄の機会を経てより明確に体得できたことが、何よりも大きい成果だと思っています。
 ここで江頭さんからの話題提供に移り、「人々を分断する歴史」を「つなぐ文脈」の実践から学ぶことが今回の年報を貫通するテーマであり、それを裏付けるものとして小田切さんの論文が位置づけられていることに関する話になりました。特に川崎の事例では、市民と行政をつなぐ役割として「議会」と「職員労組」があったこと、さらに「国際交流」を内なる問題にしていくことが、まさに社会教育職員の仕事として実現されていることから、「つなぐ文脈」の役割を誰が担うのかという質問に関わる論稿になっているというコメントでした。これに関して小田切さんは、28号年報では地域を「掘る」事例、平和につながる歴史や文化を再認識しようとする事例が多く、川崎の場合も、26号の「ふれあい館の識字学級」がそのような事例であったことを振り返りました。特に川崎は日本人と在日コリアン、韓国人が、「向き合い、学び合い、語り合い」に加えて「ぶつかり合う」ことで、地域を掘ることがつながりを作ることになっているという点で特徴的だということでした。その地域を掘ることで「自治を支える文化、アイデンティティ」につながっているという点は、名護の事例に通じております。
 やんばる対談のエッセンスが今回の年報と沖縄フォーラムにあり、今後の課題としてはそこに存在する様々な葛藤や社会教育の現実、例えば社会教育(職員)が市長部局に行くことで生じている課題や新自由主義と非正規化をベースとする各地の社会教育の現状、学会の役割などを掘り下げていく作業も必要だという話になりました。
 最後に、来年度の年報第29号に関しては、「名護フォーラムの準備段階・事前学習で出た内容も共有すること」、「今回のフォーラムを踏まえた提言、例えば名護提言・原則のようなことをまとめること」が主に提案されました。各国からの感想コメントもいただき、お互い考えている方向がわかるようにしていく計画です。
 終了後、「イーストビレッジ」でビールを飲み、文人先生のお土産抽選会を開きした。(先生方のご配慮でほとんどのお土産は私の手のものに入りました。家で幸せな気持ちでもりもり食べております。)
終了後、手前に金亨善さんー(江頭晃子さん写す、2023/11/24 イーストビレッジ)


2023年10月定例(TOAFAEC第307回)研究会・記録
     ……江頭晃子(アンティ多摩 )October 12, 2023 9:50 PM
 <「沖縄の社会教育」学習会2
 9月定例会に続いて「東アジア生涯学習研究フォーラムin名護」(11/1921→■)の事前学習会として開催します。
 米軍施政下の暮らしの中で、地域の連帯なくして安心に暮らせなかった沖縄は「集落・字公民館」を中心とし、福祉や教育・安全のための自治が行われてきました。前回の定例会で名護市第一次総合計画(1973年)の「逆格差論」が話題になりましたが、経済的に豊かに見えた本土の公的社会教育も、いつの間にか経済論理が優先し、自治と連帯の力を培える地域の場所も少なくなってきてしまいました。
 コロナ禍を経て、「足元の地域での暮らし」の豊かさが問われる中、祭りや文化・地域産業・食・福祉・観光をひっくるめた学びとともにある沖縄の集落・字共同体から東アジア全体で何を共有できるのかを一緒に考え合えたらと思います。
 フォーラム参加予定者それぞれの「沖縄との出会い・大切にしたい視点・フォーラムへの期待」を出し合いながら、共有・対話していきます。小林先生からも前回の続きのお話をされると伺っています。フォーラムに行きたいけれど行けない人、沖縄に関心のある人など、どなたもどうぞお気軽にご参加ください。
 ー再案内(11月26日)     記
日 時:1027日(最終金曜日) 18302050
場 所:杉並区高井戸地域区民センター 第3集会室
テーマ:「沖縄の集落・新しい共同体づくりから学ぶことーやんばるを例に」
 対談:小林文人(TOAFAEC顧問)×石井山竜平(フォーラム実行委員長)
    参加者の皆さんから:「沖縄との出会い・大切にしたい視点・フォーラムへの期待」など
終了後(21002230頃)は、いつものイーストビレッジで懇親会です。
連絡先:山口 EmailIZK07252 @nifty.com  Tel090-1548-9595 
※オンラインも設定しますので、参加ご希望の方は山口までご連絡ください。
記録 ……小田切督剛(韓国生涯学習研究フォーラム、10月29日)
〇日時:2023年10月27日(金)18:30~20:50 オンライン同時配信
〇参加者:石井山竜平、上田孝典、江頭晃子、王操、小田切督剛、菊地史彦、栗山究、小林文人、
     山口真理子(敬称略・五十音順)
〇内容:9月定例会に続いて、「東アジア生涯学習研究フォーラムin名護」(11/19~21予定)の事前学習会として開催しました。10/27:18:40~20:15対談、20:15~50意見交換。ポイントは、大きく3つありました。
 第一に、共同による、個と連帯の結合について。研究会テーマは「沖縄の集落・新しい共同体づくりから学ぶこと-やんばるを例に」でしたが、文人先生から「『共同体』は論争的な概念。『体』というと同質的になってしまう。『共同』はあっても『共同体』ではない実態もある。『新しい共同』と言い換えるなど、限定的な概念として使った方がいい」と指摘。江頭さんが「沖縄・やんばるでは個のアイデンティティがしっかりある、と感じる。文化の中に『個の尊重』があるのでは?」と問題提起すると、文人先生は「集落のアイデンティティが、『個』を結び付けている。『個』と『連帯』を背反的にでなく、結合的に捉えなければ」と応えました。
 第二に、集落の自治と行政について。石井山さんが「名護の公民館と社会教育行政は、集落の自治にどう関わっているか?」と問題提起。文人先生は「本土型の公立公民館はない。集落の自治組織を基盤に『集落(しま)公民館』『字(あざ)公民館』と位置づけてきた。歴史的に旧「ムラヤー」などの自治が元々あったところに、戦後『集落公民館』がかぶさってきたイメージ」とアドバイス。そして「自治は、農耕などの生産上の協力、生活的な相互扶助、年中行事(祭祀、芸能など)といった共同、「ゆいまーる」の集積のなかから培われてきた。集落の共同の歴史、「ワッター(われわれの)シマ」意識が地域・集落に内在して文化・自治・アイデンティティが形成されてきた」とまとめました。なるほど!行政から見ると、自治を「地域における合意形成過程」や制度・機関と考えがちですが、そのイメージは貧困だったと改めて気づかされました。自治は、文化でありアイデンティティ。今、川崎の桜本地域では、在日コリアンの生活史や、地域での民族差別撤廃運動の歴史を残していくミュージアムづくりを進めています。これも地域・集落に内在する文化やアイデンティティ、そして自治へつながっているのだと再認識しました。
 さらに石井山さんが「集落自治と自治体との関わりにおいて、行政は禁欲的でなければならないのでは?」と問題提起。文人先生は、稲嶺進さん(前市長)の「新採用職員への“必ず地元の公民館に挨拶に行きなさい”という言葉(年報28号、p.208)を引いて、「むしろ積極的でなければー」と応えました。行政が、社会教育主事の配置、字誌づくり、在来文化資源の保存・産業振興などを積極的に進めることで、集落の文化やアイデンティティ、そして自治を育てることに関わってきた歩みなのだ、と理解できました。
 第三に、近代化を問い直すことです。文人先生から「東アジア的な集落は、『土俗的』『非現代的』などと差別的な見方をされてきた、経済成長過程で(やんばるの)自然破壊、格差意識、文化蔑視されてきた」と問題提起。なるほど!だからこそ、東アジアフォーラムを名護で開き、「集落・マウル・社区」の文化やアイデンティティ、そして自治や共同を議論する意義があるのだと再認識しました。同時に、近代化の美名のもとで1872年からの琉球処分や1910年の韓国併合などが強権的に正当化されてきた歩みを思えば、過去150年の近代化そのものを問い直す機会でもあると気づかされました。
 終了後、「イーストビレッジ」へ。農中茂徳さんと王操さんから差し入れをありがたく分かち合いました。文人先生は「ますます美味しくなりましたね~」とマスター御夫妻を囲んで、笑顔で乾杯。手作りのカボチャプリンまで、美味しくいただきました。最後は、「在沖縄見!(zài Chōngshéng jiàn)」“沖縄でお会いしましょう!”でお開きとなりました。
 文人先生が、実は“ジャズお宅”という石井山さんが働いていたジャズ喫茶(福岡天神)を訪ねたエピソードなど紹介、また改めてゆっくりお聞きできたら、と思います。 
第307回定例研究会ー左・小林、右・石井山・・・対談(2023/10/27夜、高井戸、撮影:江頭)


2023年9月定例(TOAFAEC第306回)研究会ご案内
     ー上田孝典(筑波大学、2023/09/06 (水) 6:59 PM
 <「沖縄・名護の社会教育」学習会>
 何度か『TOAFAEC通信』でお知らせしましたように、1118日~22日の予定で、東アジア生涯学習研究フォーラムを沖縄県名護市で開催いたします。
 この間、韓国、中国、台湾の研究者とそれぞれを訪問し合いながら、交流を重ねてきました。コロナ禍で中断していましたが、今回、沖縄名護の社会教育を見聞する機会として、小林先生、石井山先生を中心に準備しています。そこで、これをきっかけに長年にわたって沖縄との交流と研究を続けてこられた小林文人先生に「名護の社会教育」についてお話ししていただきます。特に、「東アジア生涯学習研究フォーラム」通訳を引き受けてくれる留学生にとっては沖縄の社会教育を学ぶ事前学習会になります。
 具体的な内容としては、以下の3点が柱となります。
 1.沖縄の歴史(社会背景)
   特に戦後沖縄の米軍施政下から本土復帰、現在までの概略。また基地問題など
   沖縄の抱える現状と課題について。
 2.沖縄の社会教育
   集落(字)公民館と共同売店、青年団活動とエイサーなど
 3.名護の社会教育
   やんばるの社会教育の特徴について、図書館、博物館、字誌づくりなどを含めて。
 なお、TOAFAECでは年報で連載している名護「やんばる対談」をまとめた『やんばるの地域活動と社会教育』(2018)を刊行しています。こちらもご一読ください。
         記
日 時:9月29日(金)18152050Zoom併用) 
場 所:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室
テーマ:名護の社会教育を学ぶ
お話し:小林文人先生
   ※1)レジュメがあります。当日も準備しますが、ご連絡くだされば事前にお送りします。
   ※2)Zoom参加ご希望の方は山口までご連絡ください。
      URLをお知らせし、レジュメもお送りします。
   ※3)『やんばるの地域活動と社会教育』も会場で販売いたします。\1,350
 終了後(21002230頃)、いつものイーストビレッジで懇親会
 連絡先:山口 EmailIZK07252nifty,com  Tel&Fax042-482-9143
江頭晃子さん写す、他に嘉納英明・入江優子さんなどズーム参加7人(2023/9/29夜)

左・上田孝典さん(筑波大)、今帰仁村基本構想「集落公民館」図をかざして小林 (9/29)


記録 記録者:張鼎甲(筑波大学大学院、2023/10/02)
上掲写真1/後列右から2人目
2023年9月定例(TOAFAEC第306回)研究会・記録
参加者(敬称略):小林文人、江頭晃子、李正連、山口真理子、菊地史彦、上田孝典、金亨善、
    祁暁航、沈明明、張鼎甲、李天睿(11人)+オンラインの参加者7人
・テーマ:名護の社会教育を学ぶ
内容:TOAFAEC第306回は、「名護の社会教育を学ぶ」をテーマに、小林文人先生から沖縄の歴史、沖縄の社会教育、名護の社会教育について概要が紹介された。11月に(名護)開催→■が予定されている「東アジア生涯学習研究フォーラム」の事前学習としても位置付けられ、留学生にとっては沖縄を学ぶ素晴らしい機会になった。
 私の印象に残ったのは沖縄の歴史だった。第1部では、小林先生が歴史と自身の経歴を交えて、「琉球藩」から「沖縄県」とされるまでの前後の経緯を詳しく紹介した。留学生である私は、今の沖縄は旅行する良い場所という印象を持っていたが、沖縄の歴史や風土に対する理解が非常に限られていて、昔の沖縄の苦しい経験について知ることができた。特に米軍が上陸した部分は印象的だった。
 小林先生が言及された共同売店や沖縄の特産豚であるアーグーのような内容が、社会教育とどのような関係があるのだろうか。社会教育の位置づけは何であり、社会教育を通じて何が達成できるのか。この質問をたくさんの人に聞いたことがあるが、人によって答えが大きく異なる。小林先生は「やんばる」の集落について、「一人では生きられない。多くの人はこのような「共同」集落に頼って生きている」と話されたが、この言葉は私に社会教育の意義を改めて思い出させてくれた。
 「教育」という文字があるからかもしれないが、社会教育を考えるときに伝統的な学校教育の概念を踏まえて考えてしまうが、社会教育はむしろ学校教育と対応する概念だと思いました。社会教育には「つながりの構築」という思想が存在するからである。小林先生が言ったように、人間は社会的な生き物であり、人と人のつながりの中で在来のものを活かし、再生させ、継承させながら歴史をつなげていくことも社会教育なのだと思えた。そのつながりを研究し、発展させることが社会教育の重要なコンセプトのひとつだろう。
 研究会の後、初めて「イースト・ビレッジ」に行った。TOAFAEC研究会の重要な拠点として、過去の記録でお店の写真を何度も見た。思っていたより小さな店だったが、とてもいい雰囲気だった。11月にまた会いましょう!
記録(2):菊池史彦(9月30日)上掲写真1,後列右端
 昨夜、会ではたいへんお世話になり、ありがとうございました。
若い方々に向かって語られる沖縄の歴史や、戦後社会教育の歩みは、実際に現地と現場をご覧になってこられた方だけが有する「熱」に満ちており、とても迫力のあるお話でした。また、1970年代の名護のようすも、先生のお話から改めて実感することができました。
 貴重な機会を与えてくださったことに感謝申し上げます。「逆格差論」を書くためには、まだ多くの調査すべきテーマが残っておりますが、急がず、一つひとつ噛み砕いていきたいと思っています。どうぞ今後もお教えくださいますようお願いいたします。11月の名護の大会のご成功を祈念しています。

2023年7月定例(TOAFAEC第305回)・第50回東京社会教育史研究フォーラム
  合同第305回定例研究会ご案内 …石川敬史(十文字学園女子大学) July 9, 2023 10:31PM
 暑い暑い季節となりました。昨年11月以来の東京社会教育史研究フォーラムの開催(定例研究会と合同)です。
この間、オンラインでの開催が続いていましたが、201912月開催の第44回東京社会教育史研究フォーラム(野々村恵子さんを偲ぶ会)以来の対面開催です。加えまして第50回を数える節目の研究フォーラムという意味も込めて、若手(?)4名が報告いたします。この間の各自の研究活動を通して視る東京社会教育の課題をリレー形式でご報告いただきます。
 文科省から国立市公民館に戻られた井口啓太郎さん、障害と当事者性をテーマに筑波大学にて学位を取得した橋田慈子さん、そして博物館研究の視点から栗山究さん(法政大学非常勤講師)、図書館研究の視点から石川が登壇いたします。いずれも『大都市・東京の社会教育:歴史と現在』(エイデル研究所,2016)の執筆者です。
 4名による問題意識を共有しながら、次回以降の東京社会教育史研究フォーラムの開催へとつなげ、議論をさらに深めていきたいと考えています。皆様のご参加をお待ちしています。
        記
・日時:728日(金)19:0020:50
・会場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室 (井の頭線高井戸駅すぐ)
・テーマ:東京社会教育の課題を語りあう
・報告:井口啓太郎、栗山究、橋田慈子、石川敬史
・申込:当日直接会場へどうぞ。*事前にご連絡いただけると助かります。
           山口  IZK07252@nifty.com  090-1548-9595
・終了後(21002230頃)いつもの「イーストビレッジ」で懇親会です。
 今回は、石川・橋田さんの学位取得のお祝い会にもなります。


記録:
  王 操(北京師範大学大学院生.(July 31 2023 4:17pm)
・参加者:井口啓太郎、石川敬史、江頭晃子、王 操、栗山 究、小林文人、齋藤真哉、
      橋田慈子、山口真理子(敬称略) 以上9
・内容:TOAFAEC305回(7月定例会)は、同時に記念すべき第50回目となる東京社会教育史研究フォーラムとの共催で開催されました。報告者は、『大都市・東京の社会教育:歴史と現在』(エイデル研究所, 2016)の執筆者が4人という大変豪華なメンバーがズラリ!でした。
  トップバッターは、文科省から国立市公民館へ戻られた井口啓太郎さん。国立市公民館における社会教育職員の新規採用を含めた職員体制の状況を中心にご報告いただきました。現在の社会教育職員の働き方が多様化する中で、正規職員数はどんどん減少していること。公民館職員に関する法令が十分でない中で、指針等が存在するところもあるが、自治体により公民館運営に差が出てしまう懸念を指摘されました。各地の公民館が培ってきたことを継承していける、運営内部に対する具体的な法整備や、専門職制度化の必要性を説かれました
 つづいて、筑波大学の博士学位を取得された橋田慈子さん。障害とその当事者性を通して見た東京社会教育の課題についてご報告いただきました。人々が障害に対する「当事者性」を獲得するには、障害者と継続的なかかわりを持つことが必要不可欠であるということ。また、障害者に一般的な講座を開くことにより、多様な経験を有した人々が積極的に交流できる機会を設けることで、障害の問題とほかの社会問題の交差が見えてくるのではないか、と提起されました。研究対象とされた英国ロンドンの取り組みも少し紹介されました(詳細は来年出版予定の『障害の問題への「当事者性」を獲得する学び』を参照してくださいとのこと)。
 番目は、博物館専門の栗山究さん。『大都市・東京の社会教育』第4章は、故伊藤寿朗の研究方法の①法制史、②民衆史、③職員史、④教育実践史、⑤学説史の中で、①と②に焦点を当てた報告となり、現時点においては、2022年博物館法改正と1970年代からの研究の問い直しの重要性を説かれました。また、学芸員や、90年代以降の博物館に関する研究が豊富ではないことを強調されました。そして、博物館活動に関わらない人たち(参加が難しい人も含む)という異なる視点から、「博物館」とは何かを見つめなおさなければならない必要性を説かれました。
 最後は、図書館学から石川敬史さんでしたが、時間切れとなり、ごく簡潔なご報告のみとなりました。日本の戦後移動図書館史からみた、今後の東京・図書館の課題、戦後初期の移動図書館の成立として、高知県「青年のための自動車文庫の成立」、徳島県「憲法記念館の理念を運ぶ文化バス」、富山県と兵庫県「文化の缶詰としての移動公民館」等の事例とともに、1970年代の市立図書館による移動図書館の成立について紹介いただきました。東京の図書館の課題として、「図書館」が施設だけの枠内に留らず、「直接・間接サービス」、「館内・館外活動」という内部と外部の在り方について再検討し、多文化・福祉・ヤングアダルト等の境界を越えた「場」づくりの重要性を説かれました。
 定例会終了後、優しいマスター御夫婦が待つ「イーストビレッジ」へ。文人先生の「これからは君たちが(社会教育研究を)支えていかなければならない」が、非常に重みのある、印象的な言葉でした。今回、文人先生と報告者4名の皆さんは数年ぶりの対面再会だったようですが、とてもそうとは思えないほど楽しそうにお話されていて、人間らしい、あたたかいものを感じました。何年ぶりに再会しても、まるでいつも顔を合わせているかのように親しく話せる師弟関係は、滅多にないのではないでしょうか。私は皆さんが楽しそうに談笑されるのを拝見し、ゲーテがエッカーマンに話した「人生は短い。お互いに、楽しみあうようにしたいものだね」という言葉を思い出しました。文人先生を通じて、こうした「縁」があり、そしてそれが広がっていく。素敵なひとときをありがとうございました。

久しぶり山口真理子さん「乾杯」(お祝いの歌).。左・手前より石川、王(記録)、栗山、井口、橋田の皆さん (江頭晃子さん写す、イーストビレッジ、2023/7/28) 

2023年6月定例(TOAFAEC第304回)研究会ご案内 
  ……小林ぶんじん (TOAFAEC顧問)     June 16, 2023 5:09 AM
 六月定例研究会(第304回)では、久しぶりに夜間中学をテーマに、とくにその増設運動についてお話を伺うことになりました。話し手は、東京・夜間中学教師として活躍されてきた関本保孝さん(基礎教育保障学会初代事務局長)です。これまでTOAFAEC関連の集い(「やんばる対談」など)にも参加されてきたお馴染みの方です。
 TOAFAECとしては、もともと1990年代の創設初期から基礎教育・識字運動については、大事な研究テーマとして位置づけ、年報編集の中でも(東アジア識字問題を含めて)論文・報告等に取りあげてきました。今世紀に入って「基礎教育保障学会」設立(2016年)の動きが始まって、TOAFAECとしての研究活動は控え目になってきた経過があります。この間には2016年「義務教育機会確保法」が成立し、夜間中学・自主夜間中学運動の新しい取り組み、その熱気・拡がりは目を見はるものがありました。法制定に満足するのでなく、とくに映画「こんばんはⅡ」上映運動は全国的な展開となって、関係各位のエネルギーには驚くばかり(関本先生はその中心)でした。
 いま日本の教育政策(社会教育、高等教育など)が全般的に停滞し後退している昨今、夜間中学の諸施策が前進してきた経過・状況に注目したい。とくに超党派「夜間中学等義務教育拡充議員連盟」の役割は大きく、あらためて「議員連盟」が動いてきた歩み、関係議員だけでなく文科省の事務当局も参加し、夜間中学諸団体(学会を含む)も参集して諸施策が協議されてきた経過について、積極的な役割を果たされた関本さんからお話を伺いたいという企画です。当夜、多くの方々のご出席をお待ちしています。
       記
日 時:2023630日(最終金曜日)18:3020:50
会 場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室(井の頭線高井戸駅すぐ)
テーマ:夜間中学の増設運動―「夜間中学等義務教育拡充議員連盟」結成とその前後
報 告:関本保孝さん(東京・元夜間中学校教師、基礎教育保障学会初代事務局長)
申 込:当日直接会場へ。事前にご連絡いただけると助かります。
オンライン申込先:山口  IZK07252@nifty.com tel:090-1548-9595
終了後(210022:30頃)交流会:イーストビレッジ(03-5346-2077


右よりー王国輝(中国・温州大学)、金亮善(東大院)、関本保孝(夜間中学・報告者)、小林ぶ、マスター、李正連(東京大学)、梁炳賛(韓国公州大学)、王操(北京師範大学・院)、江頭晃子(TOAFAEC)の皆さん 
報告 金亨善(東京大学大学院、韓国生涯学習研究フォーラム)July 5, 2023
参加者:李正連、江頭晃子、王国輝、王操、金亨善、小林文人、関本保孝、梁炳賛(敬称略・五十音順) 
内容:今回の定例会は、夜間中学をテーマとし、その歴史および設置運動について関本保孝さん(基礎教育保障学会初代事務局長)からお話を聞きました。
 日本の夜間中学は、戦後学校に行けてなかった学齢期の児童のための動きとしてはじまり、1976年奈良に自主夜間中学が誕生してからその創設における全国的な動きが拡大されていきました。 それから各都道府県に少なくとも一校以上の夜間中学を制度化に向け、さらに学齢児に限らずすべての義務教育未修了者の学習権を守るための動ききが30年以上の長い努力として続きました。近年の成果としては2016年の「義務教育機会確保法」が成立されたことで、全国すべての人に年齢を問わず学ぶ権利を保障する場所として夜間中学が確立されつつあります。
 特に印象深かったのは、夜間中学の制度化にあたって議員立法成立に向けた取り組みとともに、超党派参加による法律成立ができたことです。夜間中学の活動を学校教育として扱うか、社会教育として扱うか、その責任の主体は国になるべきか、市民の自主的参加に委ねるべきか、という問題と絡んで様々な意見の衝突もある中、学習権という人権レベルの議論が進み、共通認識形成が可能となったことは大きな成果だと思いました。単に教育領域に限らず社会を構成する人々の人生に直接かかわる問題として夜間中学の活動が理解されたからだったと思います。映画「こんばんはⅡ」のDVDまでいただき、うれしかったです。他の院生や学生さんたちと一緒に映画を見ながら議論するのに非常に有効な内容になると思います。
 終わってからはいつものイーストビレッジ。今日は福岡から梁先生もお越しいただき、韓国の無形文化財が手かけたというムンベ酒を美味しくいただきました。そして王国輝先生が来月中国に帰国されるということで、今回が最後のご参加となりました。これからも東アジアの交流を重ね、また会える日を楽しみにしています。

2023年5月定例(TOAFAEC第303回)研究会ご案内 
         ・・・江頭晃子・(2023/05/16 (火) 9:32)
 公民館を会場とする住民の学習活動を規制する根拠として、「公民館が」してはいけないことを明記している社会教育法第23条(営利目的とした事業、特定の政党の利害、特定候補補者の支持)が持ち出されることがあります。1949年の法制定時において、23条は公民館における利用者の学習活動を制限する意図をもって挿入されたのでしょうか。
 この研究に取り組んでいる手打先生が、『社会教育法成立過程資料集成』(1981)、『公民館史資料集成』(1986)などを編集した小林先生、公民館学会で長年関われた谷先生と鼎談しながら、23条が法に挿入された意味と歴史経過を探ります。
・日時:2023526日(金)18152050
・会場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室 (井の頭線高井戸駅すぐ)
・テーマ:社会教育法23条と「公民館史資料集成」鼎談:
      手打明敏さん(筑波大学名誉教授)、谷和明さん(東京外語語大学名誉教授)
      小林文人さん(TOAFAEC
 申込み・参加予定の方には事前に、手打明敏著「占領下の社会教育法制定と第23条の意味」を添付ファイルでお送りします。参加無料。申込先:IZK07252@nifty.com(山口) tel:090-1548-9595
2100~交流会を予定しています(高井戸イーストビレッジ 参加自由)。
※今回はオンラインありません。ご了承ください。
303研究会(イーストビレッジ)

報告
…江頭晃子(アンティ多摩)June 1, 2023 10:08 PM
参加者:李正連、江頭晃子、小田切督剛、小林文人、谷和明、手打明敏、山口真理子(敬称略) 
内容:今回の定例会は3人の豪華なメンバーがそろいました。主報告である手打さんから「占領下の社会教育法制定と第23条の意味」の報告の後、小林さん、谷さんからコメントがありました。
 社教法23条については、これまでもさまざまな解釈が行われてきましたが、手打さんは社教法の制定過程に注目。戦前は団体との強いつながりで社会教育政策がすすめられており、戦後すぐに公私を分離することに実態としても踏み切れなかった文部省に対し、憲法89条に沿う形でプレッシャーをかけるCIEとの攻防がみえる社教法草案の変遷経過、日本側が1948年の「7.14社会教育局長通達」で大きく転換することなど解説がありました。結論的には、これまでは23条を「団体活動の規制」として誤用されてきたこともあり、23条の存在を「不自然」とする解釈もあったが、手打さんは「ノーサポート・ノーコントロール」を実現した形で23条が制定されたことを積極的に評価されました。この規定により公民館が特定の団体に専有されない、当時の民主化から逆コースが始まる混乱の中で大きな意味があったと解釈されました。
 小林さんからは、社会教育法を論じるにあたって重要なこととして、①19467の最初の「社会教育を奨励する」案の重要性(以降は条件整備論になっていく)、②CIE担当官ネルソンは大学院生の世代、強権的ではなく公民館構想にも理解があったが、ノーサポート原則(法13条関連)では譲らなかった。19487月局長通達もその関連で理解しておく必要がある、③現法制定の意味を探るだけでなく、時代に応じた立法論の重要性などの指摘がありました。23条については、60年代から各地で配転や委託・講座内容などにおいて、各地それぞれで闘いやせめぎあいがあり、多くが消極的中立(危ないから触れないでおこう)を保ってきたことなどの指摘がありました。
 谷さんからは、23条問題は1970年代以降の法的意識の高まりとともに、行政側を規制する条文として注目されることが多くなったが、団体利用を規制するために使用された最初の裁判は1952年北海道赤平町で、前進座の公演会場として町が貸し出さなかったこと。前進座側は表現の自由と住民が鑑賞する権利を奪ったと訴え、最高裁までいったが敗訴したことが紹介されました。参加者それぞれが23条をどう捉えるのかを持論を持ちたくなるような、刺激的な研究会でした。


2023年4月定例(TOAFAEC第302回)研究会記録
    ……江頭晃子(アンティ多摩)  April 17, 2023 8:10 PM
 ご案内
 今年も428日がやってきます。1952428日に発効した「サンフランシスコ講和条約」によって、「本土」ではアメリカ軍の占領が終わったと喜んでいた日。一方同日に「日米安保条約」と「日米地位協定」が発効して、沖縄が日本から再び捨石にされた日(屈辱の日)。そして現在、台湾有事の恐怖を煽り、米軍だけでなく自衛隊による要塞・軍備強化が進む沖縄…、報道しないマスコミ・他人事のように暮らす市民、「真理と平和を希求する」日本の教育目標はどんどん遠ざかっているようです。
 その沖縄で今秋計画されている東アジア生涯学習研究フォーラムの開催は、出会い・つながり・学びの輪を広げることで平和を構築していく社会教育論を共に考える貴重な場になるでしょう。遠回りに見えても、小さな動きであっても、一個ずつ積み上げていきたいと思います。
 今月の定例会は、前月に続き同フォーラム開催に向けて、これまでのフォーラムを振り返り、沖縄の地から何を学び、議論するのかを検討します。どなたもどうぞご自由にご参加いただき、小さな一歩をご一緒ください。 
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日時:2023428日(金)18502050
会場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室(井の頭線高井戸駅すぐ)
テーマ:① 「第15回(20102019年)東アジア生涯学習研究フォーラムのテーマ・議論・課題」  
              石井山竜平さん(東北大学)、これまで参加した皆さん
    ②「やんばる対談(20102019年)に参加して」 山口真理子さん(TOAFAEC事務局長)
申込:当日直接会場へ。また事前にご連絡いただけると助かります。
オンライン申込先:IZK07252@nifty.com(山口) tel:090-1548-9595
終了後(210022:30頃)交流会:イーストビレッジ(03-5346-2077
※1)会場にはwifiなく接続状態が不安定なこと、ご了承の上でご参加ください。
※2)定例研究会の前には1815から同じ会場で、年報第28号第3回編集委員会開かれます。
 こちらも、関心のある方はご参加くださいオンライン用)。Zoom URLは以下の通りです。
江頭晃子さん写す



報告
:小田切督剛((韓国生涯学習研究フォーラム、 2023年5月4日)
〇参加者:李正連、石井山竜平、内田純一、江頭晃子、呉世蓮、王国輝、小田切督剛、祁晓航、小林文人、武田拡明、山口真理子、梁炳賛(敬称略・五十音順)
〇場所:杉並区高井戸文化センター第3集会室&オンライン同時配信
〇テーマ:第7回東アジア生涯学習研究フォーラム(名護フォーラム)について
〇発題:石井山竜平「東アジア社会教育・生涯学習研究フォーラムin名護にむけて」
〇報告:山口真理子「やんばる対談に参加して」
〇内容:
 まず石井山さんが「東アジア社会教育・生涯学習研究フォーラムin名護にむけて」と題して、経過について発表しました。2016上海フォーラムで現場からの報告が増え、2017佐賀フォーラムで制度・政策についての発表・討論が定着し、2018韓国公州(コンジュ)フォーラムから、テーマを「学校と地域」とより具体的に絞るようになり、2019北京フォーラムのテーマ「高齢者教育」につながりました。また、「ボトムアップの動きと、政策をどう結びつけるか」といった政策過程についても、話し合えるようになりました。2020はオンラインで開催し、コロナ禍という共通課題に対して、学習権をどう保障しているか・できていないか、率直に話し合えました。
・より広く長期的な視点を共有できた。
 ここで石井山さんは「姜大仲(カン・デジュン)さんの(1918年のスペイン風邪とコロナ禍を比べるなどの)大局的な報告が、韓国の参加者からとても好意的に受け止められていたのが、画面ごしにも感じられました。でも、自分は同じようには受け止められませんでした」と語りました。こうした文化の違いが感じられるのも、フォーラムの成果と言えます。
 筆者(小田切)が想起したのは、朝鮮半島を植民地にした時に、朝鮮半島の歴史を否定的に描く、いわゆる「停滞史観」「他律性史観」を日本が押しつけたことでした。「朝鮮人は劣っているので、優れた日本人が支配しなければならない」と正当化する歴史観です。韓国では、そうした歴史観を克服しようと、歴史に関心を持つよう多くの人たちが努力してきました。姜大仲さんの大局的な視点を好意的に受け止めるのも、そんな風土が土台になっているのでしょう。
 ここで文人先生が「三国として本格的に集まったのは、2010上海フォーラムだった。2010年を第1回としてはどうか」と提案されました。議論の結果、2010上海フォーラムを第1回として、2023名護フォーラムを第7回と数えては、とまとまりました。
 次に、名護フォーラムについて、石井山さんの案をもとに議論しました。「名護から東アジアの社会教育に、どんな提起ができるか」、さまざまな意見が出ました。「集落の自治」「地域の文化」。「共同と自治の集落活動をエネルギーにしながら、博物館などの社会教育行政に結びついている」。「社会教育などの行政を住民参加で進めるためには、再編交付金に頼らない、独自財源を確保する必要がある。『そのためにはプロパー職員の力量を高める必要がある』と前市長の稲嶺進さんは強調している」と、インタビューが掲載された雑誌「けーし風(かじ)」が配られました。「名護は闘う自治体。『どんな自治体を作るか』も重要なテーマ」。「(やんばる対談のパートナーである)島袋正敏さんは、我々に想像できないような、はかり知れない存在。名護〜やんばるの自然と文化を身につけて、在来的なものの価値を再発見し、現代に生かしてきた。名護の新しい博物館をどう見ているか、お聞きしたい」といった意見が出ました。
 今後については、「どんな宣言を提案するか、日本側が事前に翻訳まで準備を」「発表資料や現地の説明なども、事前に準備を」「一番重要なのは、全日程の通訳体制の確保」と、実務的でポイントを押さえた意見が出ました。韓国や中国出身のメンバーも一緒に議論している、TOAFAECの強みです。

 最後に、「やんばる対談に参加して」と題して、山口真理子さんが発表しました。2010年の市長選で稲嶺市長が誕生したことをきっかけに始まり、2023年まで13回積み重ねてきました。「一番感動したのは、2011年第3回、リュウキュウアユが復活するまでの話でした。高校の先生をはじめ地域ぐるみで取り組まなければ、どうしても復活できなかったとわかりました」。文人先生も「本土資本が経済優先、政治優先で進めたものは、ほとんど失敗しました。それに対して、ポストモダン論の影響もあって、在来資源、在来文化の価値を見ていくようになりました。その象徴が『逆格差論』だったわけです」と補足されました。
さらに山口さんは「島袋正敏さんは、『職員だけでなくみんなで作るんだ』と繰り返してきました。対談を重ねることで、その意味が通奏低音のようにわかってきました。圧巻だったのは、2013年第5回、地域史づくりの話でした。話してくださった中村誠司さん(名桜大学名誉教授)は、広島の大学を出た人でした。そんな、外から来た人たちと地元の人たちが、一緒になって作り上げていくダイナミックさを感じました。しかも「地元」の名護の人たちが、(1973年に合併して名護市になる前の)4村1町が「地元」という感じなのも、実におもしろかった」とにこやかに語りました。
 終了後は、「イーストビレッジ」へ。マスター御夫婦も「先生、お待ちしていました」と、笑顔で乾杯。文人先生はますます元気になって、隣に座った王国輝さんと「遼寧省・錦州のお生まれですか。錦州には私の叔母が・・」と話し込んでおられました。午後11時近くまで盛り上がりながら、お開きとなりました。また今後の定例研究会で、韓国や中国の方たちが、沖縄をどう見ているのか、ゆっくりお話しできたら、と思います。

 付記(事務局):1,東アジア名護フオーラム(11月予定)の構想について、3月研究会の論議を整理するかたちで石井山さんより報告。しかし他用あり中途退出のため、5月5日夜、オンライン・関係者で2023年5月5日~■に再論・検討の予定。
 2,小田切 督剛さんは、同人誌「けーし風」116号(2022年10月)を紹介。論議は行われなかったが、名護・東アジアフォーラムで何をテーマに、何を議論するか、と関連して、後日、次の提案があった(5/2コメント送付)。
 テーマは「どんな自治体を作るか」はどうか。中央政府から独立性を保って、社会教育・生涯学習などの市政を住民参加で進めるには、独自財源を確保する必要がある。そのためには、プロパー職員の力量を高める必要がある。(【出典】「〈インタビュー〉名護市長選挙後、名護市政をどう考えるか/どうなっているのか」新沖縄フォーラム刊行会議「けーし風」116号、2022年11月3日発行、pp.23-36。
 1 再編交付金に頼らない、独自財源の確保。
・名桜大学→学生用アパート等の増加→課税対象物件+評価額上昇→固定資産税確保→p.24。
・学生が市内に転入→人口増→転入者人口比率などで算定額割増し→普通交付税増→p.25。
・SDGsはまさしく「逆格差論」を言い得ている→p.36。
→「逆格差論」は、「持続可能な街づくり」を目指し、SDGsを先取りしていた。→p.36。
→現市政の問題
・予算の「執行率を高める」に囚われ、ハコモノなど「簡単なもの・やり易いもの」へ→p.29。
・法の解釈をねじまげて、再編交付金を経常経費(給食費、保育料)に使うpp.29-30。
→ずっと続くものに、期限付きの予算を充てるのはおかしいp.33。
2 職員力を高める
・行財政改革→「本当に必要なもの」「なければいけないもの」に最大限努力pp.28-29。
・職員に求められるのは、イマジネーション。10年後、20年後、50年後を考え、いま何をすればいいか考えて仕事をする。イマジネーションはクリエーションにつながる→pp.34-35。
→現市政の問題
・名護市職員を育てず、総務省からの出向が企画部長。地方自治・住民自治ない→pp.31-32。
→名護市職員が思考停止になる。何も考えない、言われたことだけやればいい職員に→p.33。
3 川崎市の経験(反面教師)
 川崎市職員としての経験から、川崎が1971~2001年革新市長のもとで先進的になり、2001年~保守市長のもとで後退しているのは、市長の姿勢に左右されたと痛感している。
・2001.11.19阿部孝夫(元自治官僚)市長就任。「これだからお前たちはダメなんだ」叱責。
・2004.4.1人事異動。教育文化会館の館長に、まったく教育行政の経験のない上意下達型の職員が、中野敏雄さん(労働組合教育支部の元支部長。伊藤長和さんの同志)の後任として、市長部局から送り込まれてくる。こうした人事異動で「社会教育畑」の職員集団を破壊。
・2006.4.1「人事評価制度」を段階的に導入。ヒラ職員は係長から、係長は館長から、館長は生涯学習部長から、年度はじめに年業務上の目標を設定され、年度末に達成度が評価され、給与にも一定の影響が出ることに。社会教育職場は、「下剋上」と呼ばれて、ボトムアップ型で自由闊達な職場風土だったが、有無を言わせぬ上意下達を持ち込み、職場風土が変質。
  

3月定例(第301回)研究会記録 
                  ……山口真理子(TOAFAEC事務局)
 桜の季節となりました。皆様お元気にお過ごしでしょうか。春らんまんの301回研究会お知らせです。
 この間、石井山竜平さん(東北大学)より今年の「東アジア生涯学習研究フォーラム」沖縄開催について、なんどか提案・報告があったこと、ご記憶でしょうか(TOAFAEC通信33号、39号)。
 通信第33号では、今年は日本で開催する予定、開催地として沖縄が各国から希望されており名護市での開催案を協議してきたこと。第39号では、3月の名護訪問により開催について大筋のご理解をいただいたことなど報告されました。具体的には11月あるいは12月開催のスケジュール案など日程・会場・プログラム等を詰めていく必要があります。
 3月定例研究会では、石井山さんから経過などご報告いただき、用意された案をもとに具体的な課題を検討していきたいと考えています。その具体案をたたき台として、さらに名護関係者の方々と最終案に仕上げていくことになります(5月予定)。皆さまは沖縄開催ということでは、どのようなプログラムを期待されるでしょうか。ご自分が参加されるおつもりで、ご一緒に考えていただければば幸いです。
 「東アジア生涯学習研究フォーラム」開催に向けた大事な出発点となります。東アジア研究交流委員会メンバーの方々はもちろん、関心ある多数の方々のご意見・ご検討をいただければと思っています。当日のご参加をお待ちしています。
日 時:2023331日(金)183020:50(開場18:15
会 場:杉並区高井戸地域区民センター第3集会室(井の頭線高井戸駅すぐ)
テーマ:「東アジア生涯学習研究フォーラム」開催についての具体的な検討
提案者:石井山竜平さん(東北大学)
申 込:当日直接会場へ。また事前にご連絡いただけると助かります。
     山口 IZK07252@nifty.com 042-482-9143 090-1548-9595
中央:(小林・上野の間に)報告者・石井山竜平さん。  *江頭晃子さん写す

終了後の交流会:イーストビレッジ。宴はいつまでも終わらなかった。*亨善さん写す


記録
 …江頭晃子(アンティ多摩) April 6, 2023 9:44 PM
テーマ:「東アジア生涯学習研究フォーラム」開催についての具体的な検討
提案:石井山竜平さん(東北大学)
参加者:石井山竜平、李正連、上田孝典、上野景三、内田純一、江頭晃子、遠藤輝喜、小田切督剛、金亨善、小林文人、山口真理子/オンライン:呉世蓮、祁暁航、山口香苗、梁炳賛、豊孝子 (敬称略)以上16
内容:初めて東アジア共同で生涯学習国際フォーラムが開催されたのは2010年(中国・上海)。その後、2016年(上海)、2017年(佐賀)、2018年(韓国・公州)、2019年(北京)と続いた。2020年は日本・松本での開催を計画していたところにコロナ禍となり、2021年はオンラインでの開催となった。今年こそ対面でのフォーラムを再開したいと、韓国・中国メンバーから沖縄開催のリクエストがあり、3月上旬に石井山、上田、上野、内田、小林、山口、山城が名護を訪問、開催が可能かどうか現地の皆さんと協議した。
 沖縄訪問の報告と、具体的な計画について、石井山案の提起があった。日程案は九州教育学会をつなげた2023112022日、または12911日の2泊3日。会場はホテルゆがふいんを中心に公民館や博物館なども候補に。内容は、やんばる対談、各国報告とディスカッション、エクスカーション、名護宣言検討・採択などの案が出された。小林先生からは「全体テーマの設定」「この間の各国・各地からの状況報告」「平和を探求した歴史と現在の沖縄現地をみるエクスカーション」を特に考える必要との指摘があった。また、今回のフォーラムを通して、名護に55ある字公民館や集落の力が、東アジア全体の社会教育にどういう意味を持ちうるかを検証することになること。公立公民館や博物館、図書館がない時代から祭りや文化などを集落のみんなの手(ぶりでぃ)で紡ぎだしてきた名護から何を学ぶのか。社会教育主事で名護市長だった稲嶺進、やんばるの在来資源を活かす「ものづくり塾」を展開する島袋正敏、博物館館長の比嘉久やコロナ禍でも地域活動・エイサーを継続した城区青年会OBの渡口裕はもちろん、共同売店の再建をしている山田沙紀など若い人の力を借りる必要がある―など。
 その後参加者間で活発にフォーラム開催に向けて議論が交わされた。「各地からのこの間の生涯学習の動向の報告・交流は欠かせない」「集落が持つ文化・芸能など市民・自治の力と自治体行政との関連について共有したい」「名護宣言を出して明文化したい」エクスカーションなどの感想を共有する時間をしっかりとりたい」「あまり大きく広げず各国・各地か10人前後の参加として密な議論が良い」などなど。次回までに、日程等について各国のメンバーの参加が可能かどうか打診してくることになった。
 次回の428日の定例会では、東アジア全体で共有したいことについて学び、議論できるような企画を考えたいと思います。次号で改めてご案内を出します。予告:日時:428日(金) 18:5020:50、会場:高井戸地域区民センター第3集会室


2023年2月 定例(TOAFAEC 第300回記念)研究会記録 
     江頭晃子市民活動サポートセンター・アンティ多摩2023/02/09 (木) 21:43)
 199562日に始まったTOAFAEC定例研究会、毎年ほぼ11回(8月は全国集会でお休み)を開催し続け、28年目となる今回、300回を数えます。ちなみに第1回研究会は、文孝淑(ムン・ヒョスク)さん(一橋大学大学院:当時)の「韓国社会教育法をめぐる近年の動向」でした。記念すべき第300回は、昨秋に中国で『蓬勃向上的国終身教育』(躍動する韓国の生涯教育)を企画した王国輝さんと、『躍動する韓国の社会教育・生涯学習』(2017年、エイデル研究所)の編著者の小田切督剛さん、そして当会顧問の小林文人さんの鼎談を対面で行います。
 この間、東アジアの生涯学習は各地で大きな拡がりと躍動がありました。そんな中、TOAFAECは、東アジア生涯学習研究フォーラムに参加し続けてきました。上記の2冊は、そこで積み重ねてきた研究交流の成果ともいえます。
 中国では、韓国の平生教育法をはじめとする法整備や、マウル教育共同体などの地域実践が大きな注目を浴びています。日本と韓国を比較しながら、韓国の特徴を浮き彫りにした本書が、中国でどのように求められ読まれているのかを伺いながら日本・中国・韓国の実践・研究交流、さらには東アジア全体での社会教育・生涯学習のあり方を考えていきたいと思います。
 終了後は、王国輝さんの来日の歓迎会と300回記念のお祝いも開催します。どなたも、どうぞお気軽にご参加ください。
日時:2023224()18:302030(開場1815
 ・会場:杉並区高井戸文化センター第●集会室(高井戸駅歩すぐ)
 ・テーマ:東アジア社会教育・生涯学習の拡がりと躍動
    ~『蓬勃向上的身教育』(躍動する韓国の生涯教育)の意味~
 ・鼎談:王国輝さん(中国本の企画・翻訳、温州大学教授・日本大学客員研究員
      小田切督剛さん(『東アジア社会教育研究』編集委員・韓国生涯学習研究フォーラム)
      小林文人さん(TOAFAEC顧問)
・申込み:当日参加もできますが、前日までにご連絡くださると助かります。
 →ringox@nifty.com(江頭) /Fax 042-482-9143(山口)
・終了後(20402230)交流会(イーストビレッジ)

前列右:王国輝さん(温州大学教授)ー新・中国本(青表紙ー右端)を祝って。  *李正連さん写す


記録
ご報告……金亨善(東京大学大学院)  February 26, 2023 5:19 PM
・鼎談王国輝さん(『東アジア社会教育研究』翻訳・温州大学教授・日本大学客員研究員)
   小田切督剛さん(『東アジア社会教育研究』編集委員・韓国生涯学習研究フォーラム)
   小林文人さん(TOAFAEC顧問)
・参加者:会場)小林文人、 王国輝、 小田切督剛、山口真理子、江頭晃子、  李正連、 山添路子 、 遠藤輝喜、金亨善    オンライン)祁暁航、 武田拡明 (敬称略)
・内容:
 今回は記念すべき300回目の定例会。そして久しぶりの対面での会合ということでわくわくしながら高井戸まで向かいました。2017年に日本で出版された『躍動する韓国の社会教育・生涯学習』を底本として、中国で『蓬勃向上的韓国終身教育』(躍動する韓国の生涯教育)として出版されたことを記念し、 王国輝さんのお話を中心に現在の中国の状況や今後の期待などを話し合いました。
 まず、1995年から始まった本研究定例会が、毎年着々と回数を重ね、100回記念はベトナム特集、200回記念は内モンゴル、特に150回の時は日本の社会教育法が制定されてから60周年を迎え、韓国との交流も進み、2000年以降の中国での社区教育の動きの芽生えに関して小林先生が韓国でお話されたことなど、今回の300回にいたるまでの道を振り返りました。
 そして、 王さんと小田切さんは2017年の佐賀大会で始めて会ったわけですが、その時点では中国の研究者たちは韓国のことについてあまり興味がなさそうにみえたのに「なぜこの本を翻訳しようと思ったのか」という質問から、『蓬勃向上的韓国終身教育』の出版の目的について懇談の時間を設けました。
 王さんは2012年日本で大学院を卒業された時、2006年に出版された『韓国の社会教育・生涯学習市民社会の創造に向けて』を紹介され、その後改めて出た『躍動する韓国の社会教育・生涯学習 市民・地域・学び』を見て、特に「市民・地域・学び」というキーワードを中国の人々に伝えたい気持ちがあったということでした。
 コロナ禍の中で社区という単位が地域住民の生活支援にどこまで対応できるのか、特に人口高齢化のスピードが早く中国では、市民の自発的な活動による地域の基盤がより堅固になっていくことが課題となっていることを知りました。
 さらに、まだ専門職員制度(韓国の平生教育士)が整ってない現状やスポーツ・博物館・図書館などの領域が生涯学習というよりは「文化」という観点から理解されている長い歴史があることも、今後の中国の生涯学習の法制度や職員制度の将来にかかわるテーマであることも興味深かったです。
 この本が中国で発行されたことで、より多くの人々が東アジアの状況を知り合い、自分の国のことについてより深く理解する貴重な資料が増えたこと、嬉しく思います。
 こうして直接会うことによって話しきれなかったことや東アジアの現状について各国のメディアでは到底知ることのできない事情が話せることは何より楽しい時間です。また会える日を楽しみにしております!
終わって、なじみの「イーストビレッジ」へ、久しぶり「大海」「松花江上」など中国歌をうたった。宴はつきず帰りは最終電ちかく。右方二人はマスター夫妻    *金亮善さん(東大院)写す



2023年1月定例(TOAFAEC 第299回)研究会・記録 
            李 正連(年報編集長、東京大学) : Sunday, January 8, 2023 1:02 AM
 皆様 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 
 コロナ感染が日本で本格化してから年。最近少しずつ国内外の旅行もできるようになり、対面による研究交流も増えています。しかし、最近周りに感染者が増えているのを見ると、まだ油断はできない状況かと思いますので、くれぐれもお気をつけください。 
 さて、本年初めての定例<第299回>研究会(兼 年報第1回編集委員会)を以下の通りに開催させていただきたく思います。今回は、秋に出版予定の年報28号に向けて、諸般の状況を語り合い、編集アイデアや意見を出し合って、年報編集をスタートさせる時間にしたく存じます。昨年は、沖縄復帰50年と日中国交正常化50年という大きな節目でもありましたが、今年はとくにそうしたテーマもありませんので、皆さんから多様なご意見・アイデアを出しあっていただき、特集テーマにも結びつけることができればと考えています。
 とくに若手の皆さんからのご提案、アイデアをお寄せいただければ幸いです。関心ある方々のご参加歓迎。多くの方のご来会をお待ちしております。 どうぞよろしくお願い致します。
  ●TOAFAEC第299回 定例研究会 (年報編集委員会と合同)、
  日時:2023127日(金)20:0022:00 
  〇内容:年報28編集特集構想等についての意見交換 
  〇実施方法:Zoomによるオンライン議(Zoom URL日午前中にお送りします。) 
  加申:下記のURLにアクセスし、126日(木)までに申しんでください。 
   https://forms.gle/svhukEgdC4w59XoV8 
記録(李 正連) January 28, 2023 1:12 AM
  ・第299回(1月)定例研究会、年報28号第1回編集会議
○参加者:小林文人、上野景三、山口真理子、内田純一、石井山竜平、江頭晃子、包群聯、山口香苗、
       キギョウコウ、呉世蓮、金亨善、松尾有美、李正連(敬称略)
〇内容: 新年が始まって早くも1ヶ月が過ぎようとしています。毎年この時期に年報づくりを始めており、今年もオンライン開催で第1回編集委員会を開催させていただきました。
 今回の編集委員会では、に特集のテーマについて話し合いました。まだ企画段階ではありますが、今年の東アジア生涯学習研究フォーラムを沖縄の名護で開催する案が検討されています。沖縄といえば、戦争や平和問題は欠かすことができないテーマであり、最近東アジア諸国・地域では戦争の脅威が増していることもあり、「戦争と平和教育」という案が出されましたが、実際各国・地域に特集原稿を依頼することを考えれば、もう少し幅を持たせた方がよいということから、「平和と共生」(仮)というテーマに決めました。
 そして、コロナ感染症で3年間中止していた沖縄「やんばる対談」を今年から再開することになり、28号には久しぶりに「やんばる対談」(第13回)が掲載されます。各国の「この1年の動向」、自由投稿等についても話し合い、大枠を決めました。投稿希望申込期限は421日(金)です。
 228日に石井山先生の科研で台北生涯学習の視察が計画されていますが、今回視察する台北の生涯学習施設や機関をはじめ、生涯学習研究者や実践家との面談、地域づくり等の取り組みについて、参加者による報告をまとめて年報に掲載することにしました。
 次回の編集委員会は、まだ決めていないのですが、決まり次第、ご連絡いたします。引き続き、年報28号へのご関心ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。


12月定例(TOAFAEC 第298回)研究会ご案内 
   ……江頭晃子(市民活動サポートセンター・アンティ多摩) 2022/12/4
     ※時間がいつもと異なります!ご注意ください。
 今年最後の研究会は、東京学芸大学と名護こども食堂の両方の実践を展開している入江優子さんから、
現在の沖縄の地域社会や学校の状況などについてお話いただきます。どなたもどうぞご自由にご参加ください。
日時:20221223() 19:002030zoom開場1850
・テーマ:「東京学芸大学と名護こども食堂。そして名護市の学校-地域連携の今」
・お話: 入江優子さん(東京学芸大学准教授ーこどもの学び困難支援センター、
               名護市のコミュニティ・スクールアドバイザー)
・申込み:ringox@nifty.com <mailto:ringox@nifty.com> (江頭)
      ※前日までにお申し込みください。
<資料>
 東京学芸大学と沖縄・名護との新たな連携について-『南の風』№42502021.6.7)より再掲
          入江優子(2021/06/02 21:57)*東京学芸大学・こどもの学び困難支援センター
 大変ご無沙汰しております。東京学芸大学の入江です。4月より、学芸大学に新設されました「こどもの学び困難支援センター」(貧困虐待・不登校などの困難な状況下にある子どもの学習保障に関わる実践研究センター)の専任になりました。息子も早10か月となり、この4月からベビーシッターさんに協力いただき、少しずつリモートワークで復帰をさせていただいております。 この度は、一つご報告がありましてご連絡いたしました。
 かねてより個人研究で調査を進めてきました名護市において、この度、私の配属の新センターの研究フィールドの一つとして、名護こども食堂さんと東京学芸大学の連携をスタートさせる運びとなりました。
 具体的には、子どもの貧困対策の居場所として設置された名護こども食堂が、この4月より、城公民館に拠点を移すこととなりまして、子どもたちのつながりの入り口となる居場所と豊かな学びの創造を目指して、現地と連携してオンライン学習タイムも設け、学芸大関係者が遠隔で関わる実践です(コロナが落ち着きましたら実地も含め)。既に城公民館へのWifiの設置工事が完了し、6月11日にキックオフを行い、原則毎週金曜日の夕方、現地の子どもたち・スタッフとオンラインで東京学芸大学の学生・参画教員をつないで学習をスタートしていくこととなっております。(コロナの悪化で、少し予定変更もあり得る状況になってきましたが・・・)
 こども食堂に来ている子の中には不登校の子も多く、ここでの学びは教科学習中心ではなく、沖縄の地域文化を大学生が共に学び合う内容を想定しており、現地の関係者とその内容を今詰めているところです。(今のところ、サバニづくりの継承者の方との打ち合わせが実現し、ハーリーに関連する学習からスタートできそうです。)
  名護こども食堂は、名護の公設市場を会場にスタートしましたが、運営面や実施場所の確保などの困難が伴ってまいりました。対象の子どもが市域からのため一つの字公民館で開催することが難しく、地域との接点を持ちにくいという課題も抱えております。今回も、公民館事業としてではなく、城公民館をお借りする形ですが、子ども食堂関係者(地元の企業・団体、名桜大学をはじめとする学生(子供の貧困対策等のために沖縄11大学で組織している「大学コンソーシアム沖縄」の学生など)の新しいネットワークと、城の地域の皆さんとのコラボレーションが生まれるような形を一緒に模索しつつ、研究としても進めていければと考えております。
  学芸大の方では、ハイサイ・ウチナーラボという学習体を組織しまして、関心のある学生の参加を促し、諸先輩方の沖縄研究の蓄積の学習も含めて進めていくこととしております。また、「大学コンソーシアム沖縄」と東京学芸大学でも学生教育面、共同研究面、寄附などの資金獲得面等で今後連携していくことを念頭に、事務局の琉球大学の先生とも検討を進めております。
  沖縄のコロナが心配な情勢ではありますが、諸先輩方が築かれてきた東京学芸大学と沖縄の深いつながりに敬意を表しながら、少しでも継承の一つにつながるよう進めていければと思います。また具体的な動きがスタートしましたら、ご報告させていただきます。今後ともご指導のほど何卒どうぞよろしくお願いいたします。
  ★東京学芸大学・こどもの学び困難支援センター
    TEL:  0423297921 E-mail: yukoirie@u-gakugei.ac.jp
記録;
 ……内田純一(高知大学) December 28, 2022 10:56 AM
・日時:20221223日(金)19:0022:00 オンライン(Zoom)開催
・参加者:李正連、入江優子、内田純一、江頭晃子、江利川法孝、大久保芽衣、神谷康弘、木住野正子、
 祁暁航、金亨善、見城慶和、小林文人、孫冬梅、田嶌大樹、渡口裕、仲村真太朗、中村津希子、
 山口真理子(敬称略)
・内容: 
 ことし最後の定例研究会は、内容が盛り沢山で「一回で二度美味しい」(真理子さん談)締めくくりとなりました。前半は、入江優子さん(東京学芸大学こどもの学び困難支援センター)による名護こども食堂の取り組みと名護市における学校と地域の連携の現状に関する報告。続いて後半は、名護こども食堂の会場ともなっている名護市城公民館で区の青年会活動に長く携わって来られた渡口裕さん(名護市教育委員会)から三線のライブ演奏を交えて、エイサーに関する話を小林先生との掛け合いでしていただきました。
 入江さんからは、沖縄の集落(シマ)社会が持ち続けてきた子どもの教育福祉機能への着目とともに、現代の地域社会の変化に伴う「貧困の周辺化・不可視化」という新たな問題に対して、最初に、東京学芸大学をはじめとした遠隔・広域からの地域文化・つながりの再構築を支援する仕組みをもつ名護こども食堂の実践紹介がありました。名護こども食堂は、毎週4回(火・水・金・土)3時間程度開催されており、生活困窮家庭の小学生から高校生まで60名を超える登録があり、1回の参加者が20を超える時もある。スタッフは平均8名程度で殆どが学生・ボランティア、年間の運営費はおよそ150万円で、主に募金や企業協賛、自治体補助等とのことでした。具体的な活動は、子どもたちの希望による個別支援としてのアドバイスタイムと、地域文化・資源を生かして「楽しい」からつながる社会関係支援としてのプロジェクトタイムがあり、学芸大学の学生たちはオンラインで関わりながら、例えば後者については、勝山シークヮーサーを使ったスィーツづくり(その一部は「沖縄カラフルパフェ」として東京で商品化)や、オリオンビールとのコラボレーションによる麦芽粕の転用学習、糸満市サバニ職人との協働による沖縄文化体験学習の支援などを行っているとのことでした。
 こうした沖縄の地域資源と人的資源(企業・学校・大学等)を巧みにコーディネートとし、ネットワーク化しているのが、神谷康弘さん(名護こども食堂運営者・学芸大学学同センター客員准教授)です。神谷さんからは、名護こども食堂が2016年に名護市公設市場を会場にスタートしたこと、当初のボランティアから現在は運営者を引き継いでいること、その後、会場の確保に苦労し、福祉的アプローチだけでなく、教育的なアプローチを入れられないかと考えていた折に入江さんとの出会いがあったことなどが話されました。子どもたちの大半が何らかの不登校経験を持ちながらも、全体として「誰かを幸せにしようという雰囲気が出てきている。子どもの成長を感じる」ということでした。また仲村真太朗さん(東京学芸大学スクールソーシャルワーカーコース・宜野湾市出身)からは、主として福祉について勉強してきた中で、入江先生と出会い教育的な視点をさらに加えて学ぶことができているということでした。入江さんの同僚の田嶌大樹さん(東京学芸大学こどもの学び困難支援センター)は、この沖縄協働実践には、多様なルーツを持つ人々が関わっており、また一個人でも多面的で面白い人々も多く、ローカルでもフォーマルでも、外と内をつなぐ可能性があるように思うとおっしゃっていました。
 入江報告の二つめは、今年度から市内全校でコミュニティ・スクールをスタートさせた名護市の現状と、学校統廃合に伴い小中一貫校として設置された「緑風学園20124月、久志10区+校区外)」と「屋我地ひるぎ学園(20164月、5区+校区外」の取組みを中心に紹介がありました。両校とも地域の豊かな自然や文化を取り入れたふるさと学習や、豊年祭をはじめとする地域行事等への積極的参加を進め、学校を核とした地域再生(教育協働体づくり)を目指しているものの、校区外からの児童生徒が半数に及ぶ実態や地域力推進課(旧社会教育課)や社会教育主事との関りが見えにくいこと、委員や活動の担い手と地域(字)との距離感があることなどの課題が提起されました。江利川法孝さん(久志地域校区・緑風学園地域コーディネーター)からは、学校内の都会化が進み、子どもたちの多様化、教師の多忙化といった課題の深刻さなどから、どうしても学校では地域連携は二の次となりがちで、教員の働き方改革とも矛盾しているように見えてしまうが、学校は地域の灯であり、地域の思いはとても強いものがあるということでした。
 質疑の論点としては、沖縄の集落(シマ)社会が持ち続けてきた内在的・共同的な力に学びながら、それこそ「本土と沖縄」の関係をどう考えるのか。こども食堂にしても、コミュニティ・スクールにしても本土とは異なる沖縄型、名護型の可能性を追求すると共に、その姿を通してあらためて制度のあり様や自分たちのものの見方・考え方を振り返ることを大事する。入江さんの報告にもあった集落公民館での「字幼稚園」「字幼児園」の経験や学事奨励会・育英会の活動に代表される教育福祉機能の分厚いシマ社会の蓄積と、コミュニティ・スクール制度や東京学芸大学をはじめとした遠隔・広域からの地域文化・つながりの再構築を支援する仕組みをもつ名護こども食堂の実践との、どのような出会いを創るのか。新たな課題がより深刻さを増しているからこそ、沖縄・名護の取り組みから多くを学びたい。最後に手前みそですが、「子どもたちが主人公」を合言葉に進められた『土佐の教育改革』では、子どもたちも構成員として参加した「開かれた学校づくり推進委員会」が各校ごとに設置され、実践を積み重ねてきました。コミュニティ・スクール制度の導入は、参加と共同による学校・地域づくりの主旨をかえって矮小化しているように感じます。地域の歴史や文化を尊重しながら制度をどう我がものとしていくか。多くを考えさせられた時間でした
 <名護エイサーのサンシンとお話>
 入江優子さんたちによる「東京学芸大学と名護こども食堂。そして名護市の学校-域連携の今」の報告に続いて、休憩後、残った時間は、渡口裕さん(城区青年会OB)の三線による ♪島人ぬ宝♪からはじまりました。渡口さんは、名護市城区の生まれで、1996年から区青年会長を10年、名護市青年エイサー祭り事務局長などを務めてきました。ひとしきり皆が最初の演奏に酔いしれたところで、名護城から名護湾へ降りてきた城区の民の話や現在の区の状況(戸数315、人口550?)、小林先生のトーカチ(米寿の祝い)の会場ともなった城公民館の様子、そして城公民館で青年会が中心となって行われているエイサーについての紹介がなされました。
 エイサーの原型は、お盆の時期に現世に戻ってくる祖先の御霊を送迎するために、若者たちが歌と囃子に合わせ踊りながら地区の狭い路地を道ジュネ(練り歩く)する伝統芸能で、各地の青年会がそれぞれに型や旗をもっていますが、渡口さんによれば、城の場合には、太鼓を使わずに三線(地方)と手踊りによるエイサーが特色で、旗頭は「瑞気満城南」ということ。続いて2曲目は、エイサーでもおなじみの仲順節(ちゅんじゅん)、♪えいさーえいさー ひやるがえいさー すりさーさー すり。すりとは、みんな揃ってせーのといった意味で、さあやろう!という感じ。合わせて、三線の楽譜「工工四(くんくんしー)」の画像もみせてくださいました。城公民館では、エイサー(7月)と豊年祭・村踊り(9月)に合わせて各40日前後、計80日以上は、ほぼ毎日、公民館で青年会による練習が行われています。そうしたシマ社会の中で子どもたちも育ち合っていきます。
 最後の曲は、国頭(クンジャン)サバクイでした。首里城の改築に使う材木を国頭から運び出す労働歌で、城区のエイサーの締めとして歌い継がれているとのことでした。小林先生からは、今回の研究会全体をふまえて、地域に文化があり、それが誇りであること。そうした暮らの共同や独自な意味を見出したいとの発言がありましたが、その時、渡口さんから「先生、次はカジマヤーですね」との声。カジマヤー(風車)とは、数え年97歳の長寿をお祝いする親戚・集落の集いですが、その祝う会をトーカチ(米寿)に続いて再び城公民館で実施したい。すでにそこで謳う予定の曲も集めて稽古をはじめているとのこと。この部分をなんとしても記録しておかなければ。嬉しいこととなりました。
 城(ぐすく)エイサーの道ジュネ(20190813) 手踊りエイサーは区の繁華街を練り歩く



11月定例(TOAFAEC 第297回)研究会
   ー(前回につづき)東京社会教育史研究フォーラム第49回と合同ー
   ……
江頭晃子(市民活動サポートセンター・アンティ多摩) 2022/11/12
 先月に続きまして11月も東京社会教育研究フォーラムとTOAFAEC定例研究会と合同の研究会を開催いたします。
 今回は、東京・北区で文化センターなどの指定管理を受けている㈱旺栄に勤める工藤千佳良さんからお話を伺います。工藤さんご自身のご紹介と経歴、②北区・文化センター・指定管理者の概要、③16年間で築かれてきた指定管理者と所管課・地域住民(文化センターでの学習グループ)とのつながり、④コロナ下での経過・現状などを伺います。
 東京23区では社会教育施設の指定管理は多く、受託内容や運営企業により異なります。工藤さんが勤める「旺栄」は、北区文化センターや他自治体の自然の家などの委託を受けており、施設運営だけでなく多様な事業を企画・運営し続けてこられました。16年間の蓄積により見えてきたこと、新たなつながりづくりや可能性と課題などを伺いながら、東京23区でどのような社会教育が展開されているのかを伺います。また、工藤さんは『東京23区の社会教育白書2021』(20222月刊行)のとりまとめのお一人でもあり、現在の多様な立場の職員のつながりや白書づくりのご苦労なども伺えたらと思っています。みなさま、どうぞお気軽にご参加ください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・日時:20221125日(金)20:0022:30Zoom開催)
・テーマ:指定管理期間16年目の北区立文化センターとコロナ下での施設運営
・報告者:工藤千佳良さん(㈱旺栄、社全協23区支部)
・申し込み:1124日(木)までにお名前とメールアドレスを申し込み先にお送りください。前日までに(もしくは当日の午前中までに)ZoomURLをお知らせいたします。
・終了後(21402230)質疑応答・懇親会
・連絡先:Zoomお申込み先:石川 takashii@jumonji-u.ac.jp
★『東京23区の社会教育白書2021』の購入方法は以下をご覧ください。
 https://japse.main.jp/wp-content/uploads/2022/02/23-hakusyo2021.pdf
記録;江頭晃子
参加者:飯沢美紀、井口啓太郎、石川敬史、江頭晃子、遠藤輝喜、岡本正子(川崎の文化と図書館を発展させる会)、祁暁航、工藤千佳良、栗山究、小林文人、斎藤真哉、武田紘明、山口真理子、吉見江利(横浜市社会教育コーナー)
内容; 先月に続き11月も東京社会教育研究フォーラムとの合同研究会として開催、北区のお話を伺いました。工藤さんから大変丁寧な資料をつくってくださっての発表でした。
 最初にご自身のこと(大学時代のボランティア活動、和光大学から沖縄大学へ、エイサー等芸能との出会い、知的障がい者のグループホームでの勤務、中国・煙台本州日本語学校教員、北区指導員、㈱旺栄入社)をご紹介いただきました。

 北区(人口35万)の概要、3つの文化センターとそれぞれの地域の特色の紹介に続き、㈱旺栄の指定管理者としての取組みについて具体的に話していただきました。㈱旺栄はビル管理、給食受託、寮運営、事務機器や教材販売などが合併してできた会社で、学校施設との関連が深い。初めて指定管理を受託したのが北区の文化センターで、他区の少年自然の家などの指定管理を受けたこともある。文化センターは2022年度末で4回目の指定管理期間が終わるところで、次期受託に向け準備をしている。利益のためと言うより、会社としては地域貢献としての位置づけが強く、一方で更新時に他社との競争のため金額を落とさないと受託できない恐れもあるが、「これ以上は下げられない」というラインも死守してくれている。
 職員体制は、中央公園と滝野川文化センターが各8人(常勤6=施設長1、副施設長1、事業学習担当2、受付業務2/パート2)。赤羽文化センター(常勤7/パート9で、事業・学習担当を束ねる役割の工藤さんは赤羽に所属。事業・学習担当(合計6は、社会教育主事有資格者が中心である。直営から指定管理者に移行する時、「有資格者を入れること」を条件に入れるように区職員が頑張ったと聞いている。
 最初は区民からも区職員からも「敵がやってきた」と見られ、区の意向を聞くことが多かったが、16年の継続により、()旺栄職員の方が事業や地域のことが分かるようになり、反対に説明したり職員研修を担当するなど、対等な意見交換ができる機会が多くなった。
 事業展開の中で特徴的だと感じたのは、北区からの委託事業は各館年間110回の他に、①自主事業が70回(3館合わせて)と多い。②所管課(生涯学習・学校地域連携課)との連携が密。当初は連絡・調整だけだったが、事業に特化した連絡会議も1回開催するようになり、共同で通信を発行したり、教育委員会事業も共同で開催することもある。③利用団体との連携による事業展開(利用団体学習会、体験会、発表、連絡協議会等)が多く、④高齢福祉課など他部所との連携などで、多忙さが心配にもなりました。
 参加者からは、具体的内容への質問や感想とともに、他自治体の指定管理者の経験、導入が阻止できない状況での条件提示内容、指定管理の選定委員として見える自治体側の状況などの情報交換も行われました。
 小林先生からは、工藤さんが苦労しながら良い仕事をしていること、北区と前月報告の国立市の違いの根本はどこにあるのかと考えながら聞いていたという感想。そして、「地域のことをしっかり考えてつくっていこう」という視点が公民館活動のスタートだが、大都市では地域が見えにくく、成人の公共教育空間は位置づいてこなかった。しかし、地域の共同は年寄りや子育て、災害救難などにも関係しており、地域のことを考える市民は公民館の有無に関わらず、どこにでも存在する。それを継続的につなぎ・広げていく役割を行政が担うかどうか。市民の権利と行政の役割をどう結んでいくか。松本や沖縄のあゆみを振り返ると、地域の結びつきがあり、公民館が重要な役割を果たしてきた、という話がありました。個人的には、地域に関わりつづける職員集団の事業展開が、区民や職員と信頼関係をつむいできたのだろうなと感銘を受けつつ、そのご苦労は大変だったろうなと想像していました。


10月定例(TOAFAEC 第296回)研究会
   ー東京社会教育史研究フォーラム第48回と合同ー
  ……石川敬史(十文字学園女子大学)  2022.10.15 7:02   
 久々の東京社会教育史研究フォーラムの開催です。今回は江頭晃子さん(アンティ多摩)より、国立市公民館の紹介,公民館運営審議会の歴史・蓄積、そして答申「新型コロナウイルス感染拡大時における教育機関としての公民館事業について」策定の経緯についてお話をいただく予定です。
 詳細につきまして、江頭さんより以下のメッセージをいただきました。
 東京社会教育史研究フォーラム、10月は多摩地域(国立市)、11月は23区(北区・工藤千佳良さん)のお話を伺い、皆様とともに、東京社会教育史を再びしっかりと見つめていく契機にできればと考えております。皆様のご参加をお待ちしています。
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 2020年4~5月、国立市公民館は休館し、公運審も3~5月は開かれませんでした。
公民館でほっと一息ついたり、つながり、学び続けていた市民に「公民館とは何か」「生存権の中に学習権は含まれないのか」という問いをつきつけました。また、休館について何ら相談されることのなかった公運審も自分たちが公民館の「民主的運営」を担保する役割を果たせなかったのではという思いが募りました。
 2022年10月11日、第33期国立市公運審は、標題の答申を館長に提出しました。2021年5月に諮問が出されてから1年半、国・都・市行政や教育委員会の政策決定を追い、市民とともに学習会を開き、利用団体・市民個人アンケートを実施し、館長や職員へのヒアリングを行い、2020年のコロナ禍を記録化することで見えてきた課題から、10の提言を答申としてまとめました。
 国立市公民館や公運審の簡単な歴史、答申策定の経過と内容について報告させていただき、忌憚ないご意見をいただきながら、「公民館とは何か」「公運審の役割」について議論しあえたら嬉しいです。
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・日時:2022年10月28日(金)20:00~21:30(第二部 21:40~22:30質疑・交流)
・テーマ:国立市公民館運営審議会答申「新型コロナウイルス感染拡大時における教育機関と
 しての公民館事業について」策定経過と10の提言
・報告者:江頭晃子さん(第33期国立市公民館運営審議会委員)
・申し込み:10月27日(木)までにお名前とメールアドレスを申し込み先にお送りください。
 前日までに(もしくは当日の午前中までに)ZoomのURLをお知らせいたします。
・連絡先:Zoomお申込み先:石川 takashii@jumonji-u.ac.jp
※答申全文は当日配布、また、10月末に国立市公民館HPにもアップ予定

記録;石川敬史 10月定例(第296回)研究会:第48回東京社会教育史研究フォーラム
・日時:20221028日(金)20:00-22:45 ・方法:オンライン(Zoom)開催
・出席者(敬称略):内田純一,江頭晃子,祁暁航,栗山究,隈井裕之,幸島裕子,小林文人,
 中村津希子,山口真理子,山根浩子,石川敬史
・内容
 第48回東京社会教育史研究フォーラム(10月定例研究会)は,第33期国立市公民館運営審議会の江頭晃子さんより,国立市公民館運営審議会答申「新型コロナウイルス感染拡大時における教育機関としての公民館事業について」の策定の経緯と10の提言についてのお話です。答申は国立市公民館のWebページに掲載されています。
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/kouminkan/kouminkan5/1666765685335.html
 今回の研究会には,江頭さんと同じく第33期公運審委員である隈井さん,幸島さん,山根さんにもご参加いただきました。
 江頭さんより,まずこの答申の内容に入る前に,国立市の歴史と国立市公民館の歴史を確認しました。国立市公民館の歴史的経緯からみる特徴として,市民がつくった公民館,公民館運営審議会の存在,図書室の存在,専任職員配置努力,多様な事業・講座の展開,『公民館だより』等の情報発信,都市型公民館のあるべき姿の模索,無料原則の追究,行政改革の動きの食い止め,条例・規則化の10点について,1950年代後半から2000年代までお話いただきました。
 このうち,公民館運営審議会については,職員配置前に公運審が設置されたこと(1955年),職員体制充実の要望書・意見書を継続的に市長や教育庁へ提出していること,館長任命の際に公運審の意見を聞いていること(社会教育法第282項遵守),数々の答申・提言の存在,職員と公運審委員による合同研修,多数の意見書や文書の提出といった歴史と特徴をまとめていただきました。
 こうした公運審の活動と歴史に触れると,寺中構想から続く公民館運営に対する理念の連続性,そして国立市の公運審の歴史の重みを痛感します。出席者の皆様からは,とりわけ市民大学・講座編成,わいがやの喫茶,公民館保育室が全国的に注目されたこと,さらには国立市の特徴として,世代をこえた個性的な市民同士のつながりがあることなどの話題が出ました。
 続けて,「新型コロナウイルス感染拡大時における教育機関としての公民館事業について」の答申についてです。答申には,市民団体や個人利用アンケート,職員へのアンケート・ヒアリング,さらには社会教育学習会の記録も含まれ,印刷すると144ページにも及びます。江頭さんより,答申に基づきながら,コロナ禍における国立市公民館の問題,そして公運審委員の報告から明らかになってきたこと,そして最後に答申における10の提言の意図と思いをお話いただきました。
 参加者からは,こうした答申(さらには各班)が策定されている具体的なプロセス,職員へのアンケートや聞き取りの方法,1館のみではなく分館設置の可能性,国立公民館の独自性などの活発な質問・発言がありました。
 小林先生からは,学習権のみの視点ではなく,集会・結社の自由の視点などから重層的に捉えていく必要性,公民館は市民のものとなっているのかどうか,などの問題提起がありました。公運審の隈井さん,幸島さん,山根さんからも活発にご発言をいただきました。
 私自身は,いくつかの市の図書館協議会の委員をつとめていますが,「行動する」図書館協議会になるために,国立市の公運審の活動から学ぶべきことが多いと痛感しました。とりわけ,第1回目の緊急事態宣言下・公民館の閉館によって,「人とのつながりが生きる意味」を公民館が実践する意義,そして,公民館の開館が原動力である, という江頭さんのご指摘が印象に残っています。
国立市公民館・市民交流ロビー「わいがや喫茶」、右側に青年室(2003年11月16日)


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