小地域・町内公民館・ろばた懇談会・関連レポート
        −川崎・横浜・松本・京都(ろばた懇談会)ー 
  



<目次1−2004年・日本公民館学会研究大会、ほか研究報告資料−>
(1)川崎市の公民館(都市型大型公民館)配置計画 (2004年11月、小林雄介)
(2)横浜市・大都市のなかの小さな学び社会 (同、伊東秀明)
(3)松本市における町内公民館の役割と行政の支援 (同、矢久保学)
(4) ろばた懇談会(京都・1967〜1978)をめぐって (2004年・南の風記事)下掲




(1)「川崎市の公民館(都市型大型公民館)配置計画」
    −日本公民館学会・ポスターセッション・発表要旨−(2004/11/21)
                             小林雄介(川崎市教育委員会)

1.川崎市の公民館配置計画
  川崎市では、老朽化した公民館を建て替える時に、市民社会の創造を目指す市民の学習・文化活動の拠点にふさわしい施設名称として「市民館」を採用した。市民館は、社会教育法上の公民館である。政令指定都市の川崎市は7つの行政区に1館の市民館を配置してきた。
 市民館分館の配置は、半径1.5km円をエリアに9館の配置が計画化されており、現在6館が実現しており、あと3館が残されている。市民館と分館から離なれた地域は、学校施設の転用によるコミュニティルームの配置を計画しているが、現在1館が開設している。
 なお、市内57ヶ所に開設されている市民局所管のこども文化センター(児童館)と市民館との連携による有効利用が検討されている。
2.多様な市民館施設
  大都市の公共用地の取得は困難であるため、川崎市の市民館は多様な施設形態を呈している。@単独施設、A図書館との複合、Bマンション等民間施設との同居、C区役所との複合、D商業ビルとの同居、などである。
 市民館の特徴は、市民要求に基づきそれぞれ演劇や音楽コンサートのできる大ホ―ルが備えられていることである。また、児童室(保育室)や閉館時間帯に自由に利用できる「グループ室」が人気がある。
3.市民館の課題
  行財政改革が推進されるなかで、市民館の主催事業である@社会教育事業の見直し検討、Aコスト意識による事業検討、B費用対効果による事業検討、C組織・職員の削減、D通年開館・年中無休・不規則勤務の実施、E市民自主企画事業の拡充、F区役所機構への移管、G教育の自由・自治の確保、などが問われている。
4.参考資料
   配布プリント資料(略)参照


(2)横浜−大都市の中の小さな学び社会
     −日本公民館学会(第3回)研究大会ポスターセッション、2004/11/21−
          横浜市教育委員会社会教育主事(磯子区役所地域振興課)  伊東秀明 
1 概況
 大都会・横浜市磯子区は人口16万人、世帯数7万戸、小学校17校、中学校7校、図書館1館、博物館2館である。地域学習に使える施設は地区センター4館、コミュニティハウス7館、地域ケアプラザ5館など(以下総称して地域学習拠点と呼ぶ)である。公民館は無い。
2 生涯学習の限界
(1)生涯学級の限界:16万人の区民を一括して対象とし、年間10本余の生涯学級を開設していた2000年ごろは、一講座の受講生を30人平均として年間400人ほどの人が生涯学級に参加する機会を得ていたことになる。16万区民の0.2%である。これでは学習機会が少ない。しかも会場はほとんど区役所の会議室を利用していたので区役所から離れた地域の区民はバスや電車に乗って参加をしていた。
(2)生涯学習の限界:地域学習拠点でもさまざまな教室が開設されている。しかし生涯学習の目的は個人が学ぶための機会を提供することに置かれているため、開設される教室のテーマは趣味や習い事に偏ってしまい、地域社会について学ぶテーマや現代的課題をテーマとする講座や学級は皆無という情況であった。
 生涯学習が個人の学びを支援することを目的としているため、受講生同士が仲間を作るという視点も弱かった。大都会は地域コミュニティを失ったために、孤立した密室の中の困難な子育て、犯罪の増加や孤独な高齢者の存在が社会問題として指摘されている。個人の学びを支援する生涯学習では、これらの問題に対処することができない。
3 生涯学習から地域学習へ
(1)生涯学習の限界を超えるために、2000年から試みていることは、生涯学級が終了したあとに学習グループを作ることである。5回程度の連続講座が終了すれば、受講生はそのままどこかへ消えてしまう。イベントとしての連続講座で終わらせないで、永続的な学習グループをつくろうと呼びかけた。「製本の会」が最初に学習グループをスタートさせた。
(2)パソコン講習会が終わると教えてもらったことをみんな忘れてしまう、もっと継続してパソコンを学びたいという声に答えたのが「オンライン街づくり」の試みだった。先生がいなければ学べないという既成概念を取り払った。いっしょに学び教えあい学びあうという学習スタイルの中で人間同士としての信頼関係を深めている。
(3)「おんなの夢おこし」:初年度は講師を呼んだが、2年目からは自前のメンバーが講師を引き受けるとともに、受講生が自分の夢を宣言するという受講生が主人公になる講座の形態を編み出した。
(4)地域学習拠点では「地域の歴史と街づくり」という講座を開設して地域コミュニティづくりに挑戦し始めている。


3) 松本市における町内公民館の役割と行政の支援
    −日本公民館学会(第3回)研究大会ポスターセッション、2004/11/21−   
                        松本市南部公民館 矢久保 学

1 松本市の地域コミュニティづくり

 松本市は本州の中央に位置する人口約21万人、世帯数約81千世帯の地方都市である。市民の学習意欲は旺盛で自治意識が高い土地柄であると評価されている。松本市には現在28の条例公民館と385の町内公民館(自治公民館)があり、どちらも市民生活の一部として根付いている。
 松本市では70年代に公民館かコミセンかの論争が勃発し、結果として市民は公民館を身近な地区(旧村または小学校区程度の日常生活圏域)に配置することを選択した。以後、市は一貫して地区を単位としたコミュニティづくりを市政の重要な柱としている。
2 「町会福祉」で変わった町会・町内公民館
 松本市は平成7年度から「地区福祉ひろば事業」によって住民参加型の地域福祉づくりの推進を図ってきた。そして、地区に共に支えあう地域づくりの取り組みが浸透してくると、地区よりもさらに身近な町会や隣組での福祉づくりを考えよう、という流れが出てきた。松本市はこれを「町会福祉」と位置付け、福祉ひろばや社会福祉協議会等による支援を進めてきた。
 その結果、今では自己増殖的に「町会福祉」の輪が広がってきている。さらに、「町会福祉」の取り組みを通じて、これまでの町会のあり方を問い直す動きも出てきた。例えば町会住民の誰もが自由に発言できる雰囲気をはじめ、町会への女性の参加やボランティアの位置づけ等が大きく変化してきている。「町会福祉」の広がりに伴い、町内公民館は「町会福祉」を推進する拠点としての役割を新たに担うことになった。
3 新たな町内公民館の支援とネットワークの強化
 町内公民館は本来住民が気楽に集い語り合う町内の縁側であった。ところが、都市型の生活様式が一般化し地域の人間関係がかつてほど濃密でなくなると、いつしか町内公民館に人が集まらなくなり、活動は停滞気味となった。さらに、タテワリ行政の影響を受け、本来もっと豊かなはずの町内公民館の活動は学習・文化の枠組みの中に押し込められてきたように思われる。しかし、町内公民館は「町会福祉」という新たな理念を獲得したことによって再活性化されてきた。住民が集ってお茶を飲みながら語り合う場としての機能も復活してきている。「町会福祉」の取り組みが地域に新たな人間関係を構築し、ひとまず人間関係の希薄化に歯止めを掛ける効果を生んでいる。
 こうした状況の中で条例設置公民館は、これまで以上に町内公民館との連携ネットワークを強化し、地域の課題を共に考え、解決に向けて共に取り組んでいく姿勢が求められている。今後、松本市の公民館は「学習参加型の総合的な地域づくりの拠点」となるよう、職員の地域づくりの力量を向上していくことに力を入れていきたいと考えている。 
<参考:ポスター>
 松本市における町内公民館の役割と行政の支援
1 松本市の地域コミュニティづくり
 (1) 松本市の概要(H16.10現在)
    ・人口:208,447人   ・世帯数:83,217世帯   ・面積:265.9Ku 
    ・高齢化率:20.2%   ・行政地区数:29地区   ・町会数:385町会
 (2) コミュニティ施設の配置状況
   @ 公民館  28(町内公民館385)  C 図書館分館     9
   A 運動広場 66(内学校開放37)   D 児童センター  21
   B 体育館  61(内学校開放37)    E 地区福祉ひろば 29
  (3) 地域コミュニティづくりに対する公民館の役割
    ア 住民主体の理念を踏まえた、町会・町内公民館との連携
    イ 公民館が地域づくりの拠点となり、住民と職員が協同で地域課題に取り組む
2 「町会福祉」で活性化した町内公民館
 (1) 町会福祉とは、町会や近隣程度の身近な地域における住民主体の福祉活動
 (2) 町会福祉の推進による効果
   ア 共に支えあう地域づくりの意識が浸透(セーフティネットの構築)
   イ 町会のあり方に関する議論が進展(女性が元気になる)
   ウ 町内公民館が福祉の拠点として活性化
 (3) 松本市における「町会福祉」の事例

 地区・町会名

人 口

世帯数

町会福祉の主な内容

白板地区
蟻ヶ崎西町会

1,706

    771

・町内給食サービス:町内公民館で調理したお弁当を毎週月曜日に宅配
・あ・うんの会:利用者と提供者の対等な関係を大切にした1回300円の有償サービス

庄内地区
神田町会

1,612

    637

・ほたるの会:町会内の支えあいボランティア活動利用者は地域通貨で気軽に利用が可能
・町会内に9つのボランティア団体

島立地区
大庭町会

   609

    222

・かぶらの会:町会内の高齢者が気軽に町内公民館に集うことをサポート

3 「学習参加型福祉コミュニティ」の創造に向けて
 (1) 町内公民館の実態把握(現場の声の聴取、実態調査、事例研究)
 (2) 町内公民館との連携・ネットワーク化(NPO、コミュニティビジネス等を含む連携)
 (3) 地域課題解決に向けた地域に根ざした学習と実践への支援(集落こそ暮らしの原点)
 (4) 公民館は社会教育の機関であると同時に、日常生活圏域における「総合的な
   地域づくりの拠点」として位置づけ







(4) ろばた懇談会(京都・1967〜1978)をめぐって
                        (「南の風」記事その他、2004)
               *2002〜2003 社会教育研究全国集会−治公民館・小地域の学習と地域づくり
                   *2004〜2009 社会教育研究全国集会・分科会
<目次>
 1,京都「ろばこん」文献(小林文人)
 2,ろばこん文献2点(美若忠生)
 3,横浜より 社会教育の方法=新しいエネルギーの育成(伊東秀明)
 4,「自治意識を育てるために」(美若忠生、小林文人)
 5,「ろばた懇談会」をめぐって(大前哲彦)
 6,ろばこん・社会教育実践の参考として(伊東秀明)
 7,ろばこんの群像 伊東秀明さんへ(大前哲彦)
 8,住民と行政・教育行政と一般行政 大前哲彦さんへ(伊東秀明)
 9,横浜・伊東秀明さんへ−「市民活動への支援」(大前哲彦)



★1,」<京都「ろばこん」文献>     南の風1282号(2004年6月10日)
 かって京都府の社会教育を代表する「ろばた懇談会」(ろばこん)の取り組みが注目を集めました。住民の自治意識を重視した地域活動・社会教育の実践、ほぼ1970年代の歩み。蜷川府政とともに終焉?しました。この歩みを西村弘さんは「栄光去って府民のなかに生きる」と表現しています。(月刊社会教育1991年12月号)
 いま社会教育研究者でも「ろばこん」のことを話題にする人はいなくなりました。ところが最近のこと、横浜の伊東秀明さんが「ろばこん」についての関心を(南の風には紹介せず)。岡山の美若忠生さん(奥多摩町→京都府の社会教育主事を歴任)が、これに応えて貴重な文献を送られたそうです。
 おや?と思うような、こんな話題が交流されているのは、社会教育研究全国集会の小さな分科会・世話人のメールネット。沖縄集会(2002年)の字公民館・分科会が契機となって、岡山集会(2003年)でも自治公民館に関する分科会が設けられ、さらに今年の猪苗代集会へ向けて、小地域の自治活動と地域づくりについて分科会の準備が進んでいます。このネットが呼びかけて、今年1月には沖縄の字公民館をたずねる旅が企画されました。応援サイトとして、ぶんじんのホームページには「自治公民館・小地域の学習と地域づくり」を掲載。ご覧下さい。ご参考までに、伊東さんのメールに答えて、ぶんじんが送った文献名は下記の通り。いろんな本がいま稀少なものになりました。
 「1,2,3,4,5,…(略)…
6,横浜・伊東秀明さんの“ろばこん”についてのお尋ね。美若忠生さんより情報が届いているかも知れませんが・・・、小生からいくつか文献名のみ。
(1)津高正文編『地域づくりと社会教育』(総合労働研究所、1980年)
   *「総合労働研究所」は昨年?つぶれました。
    ここから分立した「エイデル研究所」はいま元気。この本は貴重。
(2)津高正文編『戦後社会教育史の研究』(昭和出版、1981年)
   *「昭和出版」もつぶれました。
(3)宇佐川満編『現代の公民館』(生活科学調査会、1964年)
   *生活科学調査会も現存しない。
(4)西村弘「ろばた懇談会」月刊社会教育1991年12月号
 その他に論文なども。しかし主要な文献はすぐに手に入らない、図書館で探すほかなさそうです。当時、京都府は「自治意識を高めるために」という記録を刊行してきましたが、いまとなってはこれも入手できないでしょう。美若さんがお持ちでしょうか。」  (小林ぶんじん)

★2,<ろばこん文献2点 美若忠生>    南の風1282号
 岡山集会の「討議の柱」を、添付でお送りします。なお、伊東さんの「ろばこん」の件ですが、先生が参考資料として示された、
(1)『戦後社会教育史の研究』
(2)京都府のろばこんに学ぶ『地域づくりと社会教育』
を伊東さん宛てに送りました。
 私が京都府教育庁に入ったのが、79年で、どちらも執筆を始めた時期でしたので、特に(1)の方は社全協京都支部の学習会を兼ねて討議をしたことを懐かしく思い出しました。(美若忠生、Wed, 9 Jun 2004)

★3,<横浜より 社会教育の方法ー新しいエネルギーの育成 伊東秀明>南の風1282号
 資料(京都「ろばこん」)のご紹介ありがとうございます。早速、図書館に問い合わせをしてみます。5月29日(名護)のこと、参加できず残念でした。 
 当方は「むかし磯子に戦争があった・パート5」の集会でした。学童保育所を使って地元の人を中心に30人でこじんまりとした実りのある集会を行いました。自治公民館で集会を催した気分です。
 ところで最近磯子区役所の福祉の部署や、子育ての部署の人と話をしています。福祉の部署の職員と話した時に社会教育の方法=学級講座の開設=既存の組織ではない新しいエネルギーの育成、という主張をしました。福祉の部署の職員は、地域の人の意見を反映した地域福祉健康計画作りを進めています。しかし、福祉の部署の職員にとっては「地域の人=既存の組織の役員」になってしまうのです。でもこれではいけないと思っています。 
 そこで、伊東のいう「社会教育の方法」に大いに関心を示してくれました。これからは定期的に話し合いの機会を持つことになりました。
 子育ての部署の人たちも、伊東の言う方法に関心を持つようになり定期的に話し合うこととなりました。どちらの部署とも、地元の小さい集まりでの活動を展開することが目指されています。
 全国集会では、市長部局に「社会教育の手法=学級講座の開設」を取り入れた地元での活動情況の報告をしたいと思います。(伊東秀明、Tue, 8 Jun 2004)

★4,<『自治意識を育てるために』  小林文人>       南の風1283号   
 昨日のメール(1282号・掲載)に書き添えておけばよかったのですが、「ろばこん」文献のうち、『自治意識を育てるために』(昭和42年度〜53年度版)を美若が持っています。1・2冊欠けているかもしれませんが、ほぼそろっていると思っています。
 同書(各年度の、府レベルでのまとめ)は、神戸大学、京都府総合資料館、部落問題研究所にあります。現在、京都府教育庁社会教育課長をしている高熊秀臣氏は「ろばこん」実施時代の社会教育課員で、個人的に資料を保存しているはずです。研究者では、神戸大学の津高先生、京都大学におられた森口先生、大前哲彦氏、江坂正巳氏などですが、地域の実情・実施状況を詳しく聞くには 日本福祉大学の中川晴夫氏が「ろばこん」の後半期を主担当でやっていたので、資料も持っているし、一番詳しく(年齢も56前後)適任です。中川氏は、京都府教育庁で社会教育主事、府立図書館を経て日本福祉大学に移り現在教授です。
 なお、西村弘氏は今年4月他界され、宇佐川満の『現代の公民館』に京都府久美浜町の自治公民館について書いた友松賢氏は高齢ですが、久美浜町で健在と聞いています。(美若忠生、Thu, 10 Jun 2004)

有り難うございました。西村さんは亡くなられたのですね。ぶんじんと同じ世代かと思いますが、ほんとに残念です。京都「ろばこん」からほぼ30年が経過。現代の移りゆく地域状況のなかで「ろばた」はなくなりましたが、自治や地域の火は静かに、また新たに、燃えつづけている、各地の“自治”公民館的な活動、その実像を明らかにしていけば、そんな確信をもつことができるのではないでしょうか。かっての農村だけでなく、いまとくに都市部でも。(小林ぶんじん) 

★5,<「ろばた懇談会」をめぐって  大前哲彦>     南の風1286号
 「ろば懇」の資料の件ですが、私のところにも全てが揃っていると思う(江坂君に貸した分が返ってきていませんが、返却を求めることができます)のですが、枚方市から大阪市内のマンションに引っ越した際に田舎に送ってしまっています。
 私の田舎は農家だったものですから米を貯蔵する倉があるのですが、親父が米を貯蔵していた容器を出して、引っ越し屋の段ボール箱(段ボールに詰め込んだ書架名がマジックペンで大書してあった)のメモが見えるように積み並べて、倉中に電灯を配線して、いつでも目的に段ボールを見ることができるようにしてくれています。倉が一杯になって、何か豊になったようだ、と言うのですが、田舎に帰ってくることを期待されているようで身につまされました。
 田舎に帰るたびに、眺めなければ悪いような気がしまして、倉に入ってきましたが、引き出す余裕がないまま、パイプをくぐらして時間をつぶして出てくることが続いています。
 伊東秀明さんが、どこまでやってくださるのか分かりませんが、うれしいことです。かってお茶の水女子大の学生が小川剛先生の紹介で卒論を書くために連絡してこられたことがありました。そうそう、小川利夫先生のお弟子さん(大田さん)が、修論のために枚方の家に泊まりがけで来てくださったこともありました。可能な協力はさせて頂くことをお伝えください。
 また、同和地域における地域課題に対する学習活動がマンネリ化して、「ろば懇」に注目してこられたこともありました。このあたりにも関連実践があり、兵庫県の青垣町の足立宏之さん(今は、帝塚山学院大学、梅花女子大学、大阪経済大学などで社会教育を教えておられる)なども関心を持っておられます。
 伊東さん、いずれにしましても、小林文人先生が、一番に全体が見えておられると思います。私は「ろば懇」を権利としての社会教育論に位置づけるために、最末端の自治組織(生活・生産共同組織)である町内会・自治会を学習集団(社会教育関係団体)に措定して一般行政職員を助言者にする(社会教育法第8条の活用・情報公開)学習組織論と規定して分析してきました。
 これは、自治公民館に重なるのですが、京都の社会教育界で中央公民館・地区公民館と自治公民館を対立させて論争されていましたから、それを整理する必要があったからです。ですから自治公民館ではなく、自治公民館方式(ろば懇方式)で、建物の方はあくまでも部落公民館(○○区公民館)とすることを提案しました。
 小林先生が、集落公民館という概念を出されましたので、こちらのアプローチに魅力を感じていますが、矛盾はしていないと考えています。
 話を混乱させたかもしれません。伊東さんが、どのような問題意識でろば懇に注目されているのか、分からないまま書いています。
 美若さんと倉吉市を訪ねたことなどを懐かしく思い返しています。貴重な情報ネットに感謝しています。まずは、ご報告まで。(大前哲彦、Wed, 16 Jun 2004)

★6,<ろばこん・社会教育実践の参考として  伊東秀明>   南の風1287号
 大前哲彦さま
 「ろばた懇談会」についての情報ありがとうございます。ただ 伊東(横浜市磯子区)は社会教育実践の参考として「ろばこん」を学びたいと思っているので、あえて「ろばこん」を研究しようという時間的な余裕は、残念ながらありません。
 公民館という施設がないなかで、きめの細かい学習活動を作り上げていく手立てはないのかを考えている今日この頃です。
 地域の課題は;
1子育て支援のためのボランティア養成や学習機会の提供、
2命を守る学習、
 短期的には震災に備えるための学習と震災発生時に一人暮らしの高齢者をおとづれるボランティアの育成、
 長期的には地球環境を守るための学習機会の提供、
3健康にいつまでも、
 「寝たきりにならないためのおしゃべりと健康のつどい(美若さんから拝借!)」など、地域の福祉と健康計画作りを進める学習機会の提供、
 などなど。できれば町内会の班(組)(20世帯前後)を基礎単位としたいような地域課題を想定して、「ろばこん」の取り組みが参考になるのではないかと思ったしだいです。
 《学習する会場は、 誰が学習を組織するのか、学習への取っ掛かりとなる内容は?》 
 現在社会福祉協議会の職員や地区センター 地域ケアプラザなど「学習可能と思われる」施設の職員や区役所の関係部署の職員と話し合いをしている情況です。
 期待はずれで申し訳ありませんが、今後ともアドバイスをいただければまたご質問などさせていただければ幸いです。(伊東秀明、Fri, 18 Jun 2004 08:25)

★7,<ろばこんの群像 横浜・伊東秀明さんへ  大前哲彦>      
                    南の風1291号(2004年6月24日)
  ・・・(承前)・・・
> 公民館という施設がないなかできめの細かい学習活動を作り上げて いく
> 手立てはないのかを考えている今日この頃です。
  −以下、略−                 (伊東秀明・南の風1287号)
 ・・・胸が熱くなる思いで拝受しました。
 ろば懇の本質は、自治体労働者(都市)による過疎と貧困、封建制の残さに呻吟していた農村援助の事業であったと考えています。そして、封建制を残している農村の地域自治組織(町内会・自治会)におきましても階級分析をしますと、教職員組合、自治体労働者、農協労働者、全逓に組織されている労働者階級や他の勤め人が多数を占めていることを確認し、労働者階級の人権性に依拠して地域課題に取り組むというのが、当時の京都府・府下市町村の社会教育主事・公民館主事集団のリーダー層の視点であったと思い起こしています。
 社会教育法第8条の活用と分析したのですが、社会教育主事が町内会・自治会単位に開催される予備ろば懇(府・市町村社会教育主事と地元の世話人)で、出てくると予想される地域課題を整理し、それに対応した一般行政職員や教員を助言者に招聘するわけです。
 夜に開催されるのが通例ですから、助言者としてろば懇に参加する一般行政職員(自治体労働者サイドでは、地域自治研活動・・これが、どこまで合意されていたか?リーダー層の問題意識にあったことは事実です。)も大変なわけです(11時に終わってから車で京都市内に帰る途中にイノシシをはねてしまい、猪は山の中に逃げてしまったにもかかわらず20万円近い車の修理費を払ったという事例もあります。)。
 ろば懇のスタート時は、蜷川知事による府の幹部教育(助言者として派遣し、府民の方を向いて仕事をする職員として自己形成)という色合いが強かったようですが、一巡した後は、平の職員が参加するようになっています。
 行政職員が助言者に来るわけですから、地域住民の方は、こぞって参加するわけです。社会教育主事は、ここは、学習の場で交渉の場ではないと叫び続けたわけです。
 社会教育は住民運動の教育的側面という枚方テーゼにも学び、住民活動を組織する社会教育論とも自覚されていました。
 伊東さんが、あげておられる今日的な地域課題には、ぴったりすると思いますが、町内会・自治会を学習集団(社会教育関係団体)にするわけです。コミュニティづくりも同じですが、貴兄が構想しておられる構想も、町内会・自治会を地域支配組織の再編成(小川利夫)になるのか、住民の権利を発展させる最末端の自治組織の再建になるのか、それを保障する主体分析が鍵になると考えます。
 ろば懇の土台には、総合社会教育(社会教育と一般行政の総合、社会教育と学校教育の総合、社会教育行政内の総合)があったのですが、小林文人先生は、60年代に文部省が推奨した総合社会教育計画事業の全国分析をして、当面する地域課題を矛盾の統一体として把握できるかどうか、それは60年代の現状を分析しながら難しいと結論づけながら、(ろば懇の土台になった)京都府の総合社会教育事業だけは別の可能性があることを示唆されていました。
 以上、お返事になったかどうか気になりますが、中川さんや美若さんなどの証言で補足して頂ければ幸いと思います。
 こういう話なら、当時の京都の関係者は、非常に元気づけられることですから、久美浜町の友松元社会教育主事(この方が、一人のキーマンですが、ご高齢で、会合場所を丹後の久美浜町にしなければなりません。碓井正久先生が会いたいと言われてご案内する予定でしたが、友松賢氏が体調を壊され、実現しませんでした。碓井先生は、やむなく神戸で豪遊され、小川利夫先生を見舞って帰られたのですが、直後に、意識不明になられて今日に至っています。といいましても、友松先生に会いたいと言ったら意識不明になるわけではありません。)、岡野元公民館主事、清水義夫氏(現・久美浜町の後継者、本当の現は青年団活動の方で有名な○○氏・・名前が出てきません。失礼。)、和田三郎元公民館主事(元府職)、この動向に対峙して東京に学んで都市公民館を確立していた宇治市の八木隆明主事ら、きりがありませんので、他の市町村は省略しますが、美山町をはじめ当時の主事集団、中川晴夫氏や森・中村氏などの府教委メンバー、みな、総結集すると確信します。こうなりますと津高正文神戸大学名誉教授、森口兼二京都大学名誉教授、広原盛明京都府立大学元学長・府知事選に立候補・落選など、コンサルタントとしてご活躍された方々も呼ばなければ・・・という世界になりますが。そうそう野中広務元自民党幹事長(当時・綾部町議、後に京都府副知事)は、ろば懇の問題性に警告を発していた方で、この方の証言も今の内に取っておきたいです。しかし、これらは別問題のようですね。
 伊東さんの仲間が、京都に来られるなら、同窓会を企画します。質問を事前に箇条書きにして頂ければ、それを案内状に添付して、皆さんに関係資料を持参して、ご参集頂けるように呼びかけたいと思います。以上、お返事まで。(大前哲彦、Sun, 20 Jun 2004 22:40)

★8,<ろばこん・住民と行政・教育行政と一般行政 大前哲彦さんへ  伊東秀明>   
                                南の風第1294号
 ろばこんのお話しありがとうございます。熱い思いがいっぱい詰まっているのですね。
 大前先生の「倉」に篭ってもみたいし、山ほどの質問を携えて京都にでむいてみたい気持にもなりますが、そんなわけにも行かないのが実情です。
 ろばこんに対する当時の社会教育関係職員の熱い思いが伝わってきます。ろばこんに参加する住民は既存の組織の代表で「有志」ではないのですね。この部分は学級講座が希望者で構成されるのとは違いますね。
 磯子(伊東が目の当たりにしている現実の地域)の自治会をみていると 自治会は社会教育関係団体になりそうではありません。偶然理解のある自治会長が学級講座を開設するケースも出てきますが、このようなケースは特別で一般化はできそうにありません。学級講座の中から育った人たちが自治会の「学習部」を組織して 日常的な自治会の活動の中に学習が根付くようにはできないだろうかと考えています。
 ろばこんは蜷川民主府政の賜物と思い込んでいましたが、蜷川知事は社会教育にさほど理解を示してはいなかったようですね。
 社会教育法第8条の理解にはビックリしました。まさに社会教育が先頭になって首長部局を引っ張り出してくる! 首長部局が生涯学習という言葉を使って社会教育の畑を荒らしにきているという伊東の発想のなんと貧相なこと!
 行政に住民の力を活かすこと、そのためにはどのように仕事を進めたらよいのか。その方法を探ると、「社会教育の方法」に行き着くような気がします。高齢者福祉の部署でも子育てを支援する部署でも、既存の団体(自治会など)にのみ頼ろうとせずに、新しい地域の課題を抱ええている「新しい住民(既存の組織の役員や活動家ではないが地域のために何か力を出したいと思うようになってきている人たち)」との接触が行政に求められている。
 職員もそのことに気がつき始めているのだが、ではどうしたら新しい住民と手を携えることができるのかが、首長部局には解らない。
 学級講座という手法がこの問題を解決する手法ではないかと思い、地域の人や、学習可能な施設の職員やほかの部署の職員と話し合いを重ねています。
 これからもよろしくお願いします。(伊東秀明、Sun, 27 Jun 2004 13:39)

★9,<横浜・伊東秀明さんへ−「市民活動への支援」   大前哲彦>   
                       南の風第1360号(2004/10/22)
 中村誠司先生の文章に触発されてメールをします。
> … 沖縄に限らず全国の農山村に共通する課題だと思うし、一方、大都市の中の
> 小地域に新しいシマを創る課題もあるように思う。…(略)…
                (南の風第1359号)
 「ろば懇」に関して伊東秀明さん(横浜)の実践を十分に知らないまま応答していました。昨日、社全協・関西ネットの例会で松岡社全協副委員長から集落・自治公民館分科会のメンバーで盛んに意見交換をしておられる話を聞きました。私も参加させてほしいと希望しますが、それは別にして、伊東さんに、どうしてもお伝えしておきたいと思いました。
 「ろば懇」でも久美浜町の自治公民館活動でも、住民活動が住民の自治主体形成に資するという・・「自治意識を高める」と表現されていました・・枚方テーゼから学んだ社会教育の視点(社会教育は住民運動の教育的側面)を具体化したもので、教育委員会が、町内会・自治会の住民活動・学習活動を公的に支援した所にあると考えています。
 久美浜町の場合では、たった1000円の活動費(お茶代)を補助するだけでしたが、研究集会を開催して、経験交流を媒介していったことがポイントであったと思います。
 前にも述べましたが、どこでも組織労働者層が多数を占めている基盤がありますから、その積極面に依拠して地域づくりの活動を支援していった事例と言えると思います。
 私は、枚方テーゼにあこがれて枚方市に20年ほど住みましたが、自分の居住地の自治会の会長をやらざるをえなくなったわけですが、その実践は、月刊社会教育(92-5)に「企業城下町における地域教育力の今日的再建」というテーマで報告しています。枚方市では白バラ???講演会の講師を依頼され、聴衆の多くが自治会長さんだったものですから、その後、少しは波及しましたが、このような活動の経験交流を意図的に支援してくれる行政サイドの働きがあれば、・・・と考えた次第です。
 伊東さんが、インターネットなどを活用して市民に情報提供するなどによって市民の学習活動を支援しておられる話を聞きまして、「ろば懇」に関心を持たれた背景を理解した次第です。
 神戸市が、7〜8年前に生涯学習圏?だったか、小学校区毎に、住民団体の代表を集めて地域づくりの学習集団づくりを構想されたことがあります。委員会に参加して答申文の作成に参画したことがあるのですが、伊東さんと同じ発想だったように記憶しています。しかし「自治公」の悪い面・・・専門職を手当てしない・・・を危惧しました。答申には強調しましたが、今、どうなっているのか??。(大前哲彦、Wed, 20 Oct 2004 18:13)



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