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  台湾「開放大学法」草案(2003〜04年)
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 <目次>
1,解題1・解題2 (楊武勲)
2,開放大学法・草案−経緯   
               総説明
              草案全文  訳:楊武勲




1,解題1

 台湾では、成人高等教育といえば、従来より一般大学によるエクステンション教育のイメージが強かったが、1998年の社区大学の発足、そして2002年の終身学習法の設立によって、成人高等教育の範囲は拡大し、その意味も問われるようになった。この変化の背景には要因が二つある。一つは、生涯学習の普遍化・高度化であり、もう一つは高等教育の普遍化・多様化である。
 前者については、生涯学習(終身学習)の思潮の導入によって、一生にわたって学習する思想が定着した。そうした中、成人教育においては、既存の一般大学での学習の以外に、社区大学の急増や地域・大学・企業の連携による学習方法などが生涯学習における成人教育の普遍化・高度化を促進する。後者については、高校生の大学進学率が87.5%(2004年)に達したことが示しているように、台湾の高等教育の大衆化の事情によって、成人高等教育は各界から本格的に目を向けられるようになった。以上の背景をもって、成人高等教育に取り組む教育組織(一般大学、空中大学、社区大学)の多様化・拡大化だけでなく、それに伴う教育の質の向上、単位の認定、学位の授与、そして各種の大学の位置づけ・機能や資源配分、そして大学経営などの課題も生じてくる。
 このようにして、200310月に立法院(国会)の会議には「開放大学法草案」が提出されている。この法案は以下の特徴を持っていると思われる。
 
第一に、生涯学習という枠組の中で新しい形態の大学を作ることである。一般の大学以外に、空中大学(空中大学設置条例)と社区大学(終身学習法)はそれぞれの法律によって設置されたものであるが、この二種類の大学と発展中のインターネット大学を統合し、教育を行うことが、「開放大学法」のねらいである(総説明)。開放大学とは、遠隔(空中)大学と社区開放大学に分けられている(第三条)。前者は、既存の空中大学を骨組としたものであり、リカレント教育を実施し、学位を授与することができる大学である。後者は、現在の社区大学に範をとったものであるが、学位授与も可能となっている。
 第二に、開放大学の管理運営について、国、地方政府の各自の責任を明確化することである。国立、公立(直轄市、県、市)、私立という三つの設置形態がある。それぞれの所管機関は中央また地方政府であるが、設置基準の権限は中央政府にある。
 
第三に、開放大学の課程、学位は正式の大学に準じたものである(第六条)。具体的にいえば、履修学生の学歴は制限されずに、学位取得を目的とした学生は基本の学力が要求されている。また、開放大学の組織にかかわる規定も一般の大学のように厳しい(第九〜十三条、十八条)。とくに、学長・副学長の資格・選出方法・任期のほかに、大学の組織の詳細も規定されている。このように、大学の課程および単位・学位の取得、大学の組織の明文化によって、既存の大学以外の正式の大学をつくることを目指すことがうかがえる。
 第四に、マイノリティへの配慮である。低学費の政策の採用のほかに、マイノリティの発展に資するカリキュラムの開発、奨学金・助学金の措置も講じられている(第十六条)。これは、終身学習法の精神を継承したものといえる。
 第五に、開放大学との連携協力を促進するために、公立学校・機構は、正常な運営を前提として、開放大学に必要な空間・設備を提供することが義務化されることである(第十九条)。その理由とは、現在の社区大学の発展の経験をみると、キャンパス・設備の不足が、常に社区大学の教育に障害をもたらすからである。
 第六に、遠隔開放大学の教育方法は、主としてテレビ、ラジオ、インターネットなどマルチメディアの組み合わせによって実施されるが、面接、添削指導なども行われる(第二十五条)。また、学系(学科)の上に、大学院の設置も可能となっている(第二十一条)。さらに、教育の質の維持のため、教師の任用は大学法に準用し、その学科主任の任用は任期制によって教授資格を有する者とする(第二十二〜二十四条)。
 第七に、社区開放大学では学位授与が可能であるが、その教育方法は面接を中心としたものであり、遠隔大学とは異なっている(第二十七条)。また、学術課程、サークル実習課程、生活技能課程から構成されたカリキュラムは、現在の社区大学と類似するといえる(第二十八条)。ただ、社区開放大学はこの「開放大学法」によって設置されるものであるが、既存の社区大学は、終身学習法によって非正規の教育システムの一つとして位置づけられている(第三十一条)。この点、社区開放大学は、社区大学とは一線を画すことがわかる。
 
 以上、開放大学法草案の特徴を挙げてみた。しかし、2004年の年末(予定)に国会総選挙が行われるという事情があるため、現在、この法案の通過を言うのは、時期尚早である。また、この法案については、次のような問題・課題も生じてくる。
1)台湾では、一般的には「成人教育」または「生涯学習機構」は高等教育ではなく、社会教育・生涯学習の範疇に属すと規定されている。そして、社区大学の設置運動においては、「成人高等教育」の運動のひとつとして展開されてきている。
2)社区大学の法制化は、基本的には上記の趣旨に沿って、進められてきたものであるため、単位互換、学位取得の確立は、法制化の成否にかかわっていると認識されている。法案の提案者が言うには、こうした認識によって、政府からの資金・補助を確保しなければならないのである。しかし、成人高等教育と高等教育との概念上の違い、そして単位・学位に関する一般大学・科技大学の存在感は大きく、相互のずれの問題がある。すなわち、たとえ開放大学が学位を授与することができるとしても、社会的な認識においては、その学位の価値は一般大学・科技大学より低いものとなる。結局、多くの資源を配分される開放大学の教育効果が厳しく問われるかもしない、と考えられる。
3)「開放大学法」によって、空中(放送)大学と社区大学を統合することは、必ずしも簡単なことではない。なぜならば、両者の理念の違いがあるだけでなく、中央と地方政府にとって、法制化による社区大学に対する資金・補助は大きな負担となりうるからである。
4)また、現実的には、台湾の高等教育が大衆化と市場化の方向に進んでいるので、社区大学が如何にしてこの教育市場に生き残れるのかは、法制化だけによって解決できるものではないと考えられる。
 このように開放大学法草案は、空中(放送)大学の設置形態だけでなく、一般の大学の学生の招致、単位互換、そして学位の「価値」などにも大きな影響を与えるため、さらなる議論と研究が必要である。しかしいずれにせよ、この法案の内容とこれが法草案として正式に立法院に提出されたこと自体は、台湾の生涯学習の現状と趨勢の一端を示していると思われる。


 解題2 台湾の成人高等教育の現状(補足)

 2004年8月12日、台湾の大学統一試験の結果発表とともに、高校生の大学進学率が87.5%(合格人数89,035人)に達したことも明らかになっている。その結果、「もう一つの台湾奇跡」または「世界一の大学進学率」など揶揄の表現に伴って、「全入時代」だけでなく、「大学教育の高校化」、「大学院教育の大学化」、いわゆる高等教育の質の低下という現実の課題も生じてくる。
 一方、正規の教育システムの成人教育といえば、一般大学のエクステンション教育、学部と大学院の社会人受け入れと空中大学(放送大学)が挙げられる。大学のエクステンション教育は単位コースと非単位コースに分けられ、毎年延べ20万人に達している。社会人受け入れの面では2003年には学部1,410人、大学院1,845人が受け入れられている。
 そして、空中大学は二校あり、台湾全国に学習指導センターが13ヶ所、面接センターが40ヶ所設けられており、2003年度の学生数が35,000人にのぼっている。その中、国立空中大学は創立してから、延べ28万人を受け入れてきている。卒業生人数はわずか19,908人であったが、「学生の質の要求」が行われた結果とされる。
 また、非正式教育システムと規定される社区大学は1998年に設置されて、2003年には57校にのぼっている。それ以外の原住民部落大学(12校)の学生が加算されるならば、学生人数は10万2,000名になっている。その中、学生の大半が大学以上の学歴を持つ者である(台湾教育部調べ)ことから、社区大学の教育機能が人びとに認められていることがわかる。そして、学術課程の開設率の低下や学位取得をめぐる議論などの課題も浮上してくる。
 以上に見てきたように、台湾の成人高等教育は大きな転換期を迎えている。今後の課題は「量の拡大」から「質の保証」への転換だけでなく、正規・非正規の教育機関間の連携協力・競争のあり方も問われていくと考えられる。(楊武勲)





2、「開放大学法」草案         
                                          訳:楊武勲                             
立法院議案関係文書(中華民国四十一年九月から起算)
中華民国九十二年十月十五日配布
院総第八七〇号 委員提案五一四一号


経緯:

 本院委員王拓、曹啓鴻、陳忠信、林徳福など五十一人は、グローバル化における社会形態、産業構造の変化によって、成人の再教育の要請が急増したこと、台湾における公民意識の発展に配慮すること、一般の市民に公共参加を向上させること、そして既存の社会教育と生涯学習の学習システムが個人と国家全体の要請に見合わないことに鑑み、この「開放大学法」草案を提出する次第である。これをもって、成人高等教育システムの基礎として、空中大学、社区大学と新しい形態のインタネット大学を統合し、「開放大学」を構築することを目指している。
よろしくご審議のほどをお願い申し上げる。

 提案者:王 拓、曹啓鴻、陳忠信、林徳福。
 連名者:銭林慧君、魏明谷、余政道、李明憲、呉東昇、頼清徳、陳茂男、王幸男、
       張旭成、蔡同栄、程振隆、邱永仁、尤 清、郭正亮、藍美津、許舒博、
       江昭儀、鄭貴蓮、趙永清、陳道明、郭栄宗、許登宮、洪奇昌、邱創進、
       周清玉、謝明源、陳唐山、蘇盈貴、羅志明、林志隆、許栄淑、張川田、
       林国華、杜文卿、陳朝龍、沈富雄、廖本煙、何敏豪、何金松、王淑慧、
       張清芳、郭俊銘、林文郎、李鎮楠、邱垂貞、黄宗源、洪秀柱。




「開放大学法」草案・総説明

 グローバリゼーションと人類の産業構造の変遷の要請に応じるために、ここ十年、世界諸国と地域においては、既存の一般の高等教育の以外に、時代の潮流にふさわしい成人学習のシステムを設計し、それを通じて国民の素質を向上させることが、意識されている。たとえば、韓国は、1998年より単位累計加算のほかに、四年制、三年制、二年制から構成される終身教育学位の単位バンクのシステムを構築している。ヨーロッパ諸国では、EUの成立に応じるために、各大学間には自主的な協力連携に基いて発展されてきた国家間・大学間の単位互換制度は、すべての成人学習の範疇に及んでいる。中国は、文化革命期において就学機会を失った人々に対して、再学習や継続の補習教育システムを作り出している。これらの国と地域においては、既存の教育と学習方法は、来るべき新世紀の個人と国家全体のニーズに見合わないことが認識されている、ということが語られているのである。
 台湾では、1986年に創立された国立空中大学は、英語名を「National Open University」とされ、成人に学士学位を授与する教育システムとなっている。それ以降の17年間、空中大学によって学位を授与された成人学習者は、18,335人(2001年度後期まで)にも達している。教育の質の維持という成果が上げられているが、それを、台湾における大学の学位を持たない数百万の成人と比較するならば、成人に高等教育の機会を提供する面の満足度は決して高いものとはいえない。20021月のWTO加盟後、海外の学校に対する開放に加え、遠隔教育、インタネット学習が普遍化したことによって、台湾における成人高等教育の環境がさらなる大きな挑戦に直面していくことはいうまでもない。以上のことに鑑み、ここでは敢えて「開放大学法」を制定し、成人高等教育の開放的・弾力的・多元的なシステムを構築する次第である。
 
一方、この法律においては、1998年より各地方政府によって設置された「社区大学」が包摂され、成人高等教育の豊かな資源の一環として捉えられることによって、終身学習機構から正規の社区型開放大学への転換の可能性を広げ、完全的かつ普遍的な成人高等教育体系を構築することを目指している。社区開放大学の学習システムを通じ、社区住民の生活の内容が充実すると同時に、多くの学習者が成人向けの相互的な教育環境の中で各自の私的領域から出発し、社区環境と公共性への関心を持つことと、近年、官民一致して進められているまちづくりとの相乗効果もみられる。そして、個人の自己成長の面では、社区大学は、成人の物事への認識を深化させ、成人の知識・潜在能力を開発することも期待されている。また、過去において資源不足のため、大学に進学できなかった成人たちにとっては、社区大学によって、この悔しさをなくし、再び教育を受ける権利を獲得する、といったような「第二回の機会」を与えられるのである。
 以上の理由に基き、我々は「開放大学法」草案を提出し、空中大学、社区大学および新しいインターネット大学を統合することによって、台湾の成人高等教育制度の決定的な一歩を踏み出そうとしている。「開放大学法」の制定は、グローバル化における国民・国家のエンパワーメントのための、そして社会の成人高等教育のニーズに応じるものであり、台湾社会の未来の発展においては極め重要なものだと考えられる。







「開放大学法」草案・全文

                                          訳:楊武勲

第一章      総則

第一条(目的)
 この法律は、成人高等教育の推進、遠隔学習と地域形態の開放学習との統合の推進を図り、成人の公民意識の育成、公共参与の実現、生活の中身の充実、知識の視野の拡大に資することを目的とする。
 政府は、余裕を持って予算を編成し、社会発展、まちづくりと成人学習の特徴のニーズ、交通状況、人口分布を考慮し、全体的に開放大学の設置を計画するとともに、開放大学に地域教育の資源の協力と発展をも促進するよう努力しなければならない。

第二条(主管機関)
 この法律でいう主管機関とは、中央においては教育部、直轄市においては直轄市政府、県(市)においては県(市)政府をいう。
 各級の主管機関においては、それぞれ開放大学審議委員会が設けられ、これを以って所轄の開放大学の関係事項を審議する。

第三条(開放大学の種類)
 この法律でいう開放大学は、遠隔(空中)開放大学と社区開放大学に分けられる。

第四条(開放大学の設置形態)
 開放大学は、国立、直轄市立、県(市)立及び私立に分けられる。政府は、既存の学校機関およびその他の公共土地、または公設民営の方式によって、これを設置することができる。
 国立開放大学は、中央主管機関の許可、直轄市立、県(市)立開放大学は、その主管機関の許可を以って、これを設置する。
 私立開放大学は、中央主管機関の許可を以って、これを設置する。
 開放大学の設置基準は、中央主管機関がこれを定める。

第五条(開放大学の課程)
 開放大学課程は、学位課程と継続課程に分ける。
 開放大学の学位課程は学術、サークル実践及び生活技能等に分ける。
 開放大学の継続課程の単位は、学位要件の単位とはならない。

第六条(単位・学位)
 開放大学学生は、学位課程の単位を修習し、成績に合格した者が、学位授与法の規定によって下記の学位を授与される。
 一、開放大学学士学位:学生は128単位を修了し、成績に合格した者が、開放大学学士学位を授与される。
 二、開放大学副学士学位:学生は88単位を修了し、成績に合格した者が、開放大学副学士学位を授与される。
 開放大学の学生は、所定の各種の課程を履修し、成績に合格した者が、規定によって修業証明書、単位証明書またはその他の証明書を発行され、または認証によって相当の程度の学歴または資格を取得する。
 前二項における単位、学位またはその他関係課程の認証基準並びに実施方法は、中央政府がこれを定める。
 中央主管機関は、寄付により財団法人開放大学単位及学位認証基金会を設置しなければならない。その基金会は、前項の規定によって、受託により各開放大学の単位及び学位の認証の認定、授与、抹消及びその他関係事項を行う。その組織は他の法令をよって、これを定める。

第七条(学生)
 開放大学学生は、学歴に限らず、満18歳をもって選択履修を登録することができる。
 開放大学の学生は、学位を取得しようとする場合、満20歳以上で、高等学校または同等の学校の卒業、もしくは同等の学力を持つ者とする。
 第二項の資格を満たさない学生は、学位課程を履修し累計40単位に達した者が、第二項の資格を有するものとする。
 第二項、第三項の資格を満たした開放大学学生が学籍を有するものとする。学籍の各種事項に関しては、各学校がこれを学則に規定し、主管の教育行政機関に報告する

第八条(単位制)
 開放大学は、単位制を採用し、修業年限なしとする。

第九条(組織規程)
 開放大学の組織規程は、各大学がこれを定め、主管機関が認定する。

第十条(最高決定機関)
 開放大学においては、校務会議が設けられ、校務の最高決定機関とする。校務会議は、学長、教師代表及び学生代表から構成される。
 校務会議は、毎学期に最低一回開催し、学長が召集し、司会を務め、下記の事項を審議する。
 一、校務発展計画と予算。
 二、組織規程及び各種の重要規則。
 三、課程と附属機構の設立、変更及び中止。
 四、校務、学生事務、総務及びその他校内の重要事項。
 五、教育評価方法に関する研究・論議。
 六、校務会議によって設置された委員会または専門グループの審議事項。
 七、会議の提案及び学長の提出事項。
 八、その他校務の重要事項。
 前項における教師代表及び学生代表は、選挙によって選出されなければならない。その人数は全体の会議の人数の三分の二以上とする。その他出席の人員の選出及び会議の方法は、各学校の組織規程がこれを定める。

第十一条(学長・副学長の選出)
 開放大学においては、学長1人が置かれ、校務を総理する。副学長1人または2人を置かれることができ、学長を補佐し、校務を処理する。
 国立、直轄市立、県(市)立開放大学学長は、各主管機関が任用する。公設民営では、委託の法人が選出し、主管機関に報告し、その許可によって任用する。
 私立開放大学長は、理事会が選出し、主管機関に報告し、その許可によって任用する。遠隔(放送)大学学長の任用は、大学教授の資格を有する者とする。
 開放大学副学士学位を授与する開放大学は、その学長が一般の高等教育機関の副教授以上の資格を有する者、または社会的に学術研究の成績が優秀と認められた者とする。
 開放大学学士学位を授与する開放大学は、その学長の任用が一般の高等教育機関の教授の資格を有する者とする。
 校長、副校長の選出の方式は、各大学の組織規定がこれを定め、主管機関に報告する。

第十二条(開放大学の構成、組織と人事)
 開放大学は、その教育研究、サークル実践、地域との協力、学生補導、メディア教育及び校務の需要に応じ、関係部局を設け、各自に事務を行なうことができる。その組織の分掌事項は、各開放大学がこれを企画し、校務会議の通過を経て、主管の教育行政機関に報告する。
 前項における関係機関の一級機関には主任1人が置かれる。人事・会計主任の任用は関係法律によって行われなければならない上、その他機関の主任は、学長が各大学の組織規程・規定の手続によって、これを選任する。

第十三条(各種の会議・委員会の設置)
 
開放大学は、校務推進の需要に応じ、各種の会議または委員会を設けることができる。その構成及び任務は、各大学がその組織規定を定める。

第十四条(副学士に係る学位・単位認定、編入方法)
 開放大学学生は、副学士学位を授与された者が大学の二年または三年に編入することができる。その単位認定及び編入方法は、各大学がこれを定め、中央主管機関に報告する。
 開放大学はその他の高等教育機関と単位互換、学級編入について連携することができる。その連携の方法は、双方が共同で定め、中央主管機関に報告する。

第十五条(学生の成績審査)
 開放大学学生の成績審査の方式は、開放大学が学則で設定し、中央主管機関に報告する。

第十六条(低学費政策とマイノリティ・グループへの配慮)
 開放大学は低学費政策を採用しなければならない。その基準については主管機関がこれを定める。
 開放大学はマイノリティ・グループの発展に資する課程を開設し、奨励措置を講じ、失学者、心身障害者、原住民族、社会的・経済的地位の低い者、文化的不利益の者その他マイノリティ・グループに就学の機会を提供しなければならない。

第十七条(兵役と入隊猶予の規定)
 開放大学の学生は、兵役猶予または後日入隊を申請することができない。

第十八条(教員と学生の異議申立)
 開放大学においては、異議申立評議委員会が設けられ、教員及び学生の不服の異議申立について評議しなければならない。その組織の方式は、各大学の組織規程がこれを定める。

第十九条(開放大学への施設開放)
 各地方における公立学校・機構は、各自の教育・研究または正常な運営の妨げにならないことを前提として、開放大学に必要な空間及び施設を提供しなければならない。


第二章 遠隔開放大学

第二十条(教育方法)
 遠隔開放大学の教育方法については、マルチ・メディアの組み合わせで行い、需要に応じ、面接、添削指導その他適切な方法によって教育を施す。

第二十一条(大学院の設置)
 遠隔開放大学は、学系を置くほか、需要に応じて大学院を置くことができる。
 前項における学系・大学院の設置、変更または中止は、中央主管教育行政機関の許可を得なければならない。

第二十二条(教員の招聘)
 遠隔開放大学の教員の職級及び招聘は、大学法及び関係規定によって行われる。

第二十三条(学系主任の人事)
 遠隔開放大学は、各学系に主任1人を置き、課程事務を総理する。
 学系主任は、教授の資格を有し、任期制を採用し、学長が各大学の組織規程・規則の手続によって、適当な人員に兼任させる。

第二十四条(その他開放継続学校・成人教育拡張機構の附設)
 遠隔開放大学は、中央主管教育行政機関の許可によって各級の開放継続学校またはその他成人教育拡張機構を附設することができる。

第二十五条(放送局・テレビ局の設置)
 遠隔開放大学は、教育、教育番組の制作、配送などの需要に応じ、放送局またはテレビ局を設置し、また中央主管教育行政機関の許可によって、メディア、ネットワーク、またはインターネット・システムのサービスを提供する業者と協力することができる。

第二十六条(学習指導センターの設置)
 遠隔開放大学は、その学生人数、資源条件によって、各地に学習指導センターを設け、主任1人を置くことができる。学長は、職級相当の教師に専任または兼任させ、各センターの関係事務を担当させる。各地学習指導センターにおいては、開放大学の招聘した専任または兼任教師が教育を担当するほか、専任教師の中の若干名が担任教員を担当し、学生の授業指導及びサークル、生活補導などにあたる。
 遠隔開放大学各地域学習指導センターは、需要に応じ教室、視聴覚教室、実験または実習設備及びその他必要な教育施設を備える。


第三章 社区開放大学

第二十七条(社区開放大学の教育方法)
 社区開放大学の教育は、教師・学生の相互参加、社区参与を講じなければならない。教育方法は主として面接授業によって行うが、遠隔教育を設けることもできる。

第二十八条(学位・単位・課程)
 社区開放大学学生は、この法律の第六条第一項によって学位を取得することができる。その際、学術類課程の単位数は所定の総単位数の半分以上とするほか、教授する教師が原則として講師以上の資格を有する者とする。
 サークル実習課程、生活技能課程及び継続課程は、各領域における特殊の専門能力を有する者を招聘し、授業を行なうことができる。その資格と任用方法は、各大学がこれを定める。

第二十九条(教員評議会)
 社区開放大学においては、教員評議会が設けられ、教師の招聘、任期、解任、停聘、不続聘および解職の原因の認定に関する事項を評議しなければならない。その組織の方法は、各大学の組織規程がこれを定める。

第三十条(継続課程の設置)
 社区開放大学の継続課程の設置は、各大学が実際の状況に応じて、これを定める。特に社区の需要、地方文化、芸術、産業、観光及び人文の特色などに配慮しなければならない。


第四章   附則

第三十一条(政府からの協力)
 各級政府は、成果の優れた、そして開放大学の公共の精神にふさわしい社区大学に対しては、社区開放大学への変更に協力しなければならない。
 前項における変更の指導の方法については、中央主管機関と各社区大学が協調し、共同でこれを定める。

第三十二条(関係法律の修正)
 この法律の施行に伴って、空中大学設置条例は廃止する。中央主管機関は、この法律が通過した一年以内に、この法律の規定に基き、大学法、学位授与法及びその他の関係法律を改正しなければならない。現行の各空中大学組織規程は、これに伴って改正しなければならない。

第三十三条(施行細則)
 この法律の施行細則は、中央主管機関がこれを定める。

第三十四条(施行日)
 この法律は、公布の日から実施する。


付記:
 本論(解題・翻訳)の作成にあたっては、台湾立法院(国会)助理・楊素芳さんの協力・助言を得ている。ここに謝意を表したい。(楊武勲)



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