松尾有美:ソウルの風・2017年〜2018年        TOP
           ■新ソウルの風・2022


2014/11/13 松尾有美さん(東京永福)

■2022・新ソウルの風 (松尾有美)通信
 bP(2022/02/27 11:21)

 小林先生、韓国フォーラムの皆様
 いつもお世話になっております。2017年の留学の時も忘れた頃に吹き荒れるソウルの風だったと思いますが、今回は前回を更に上回る空白の期間を記録してしまいました。
 旧ソウルの風は、人と会ったり、セミナーに出向いたりという毎に思ったことを書いていましたが、なかなかそれも叶いませんので、今後は日々の生活の中での韓国社会や人々の様子をより身近なところでお伝えできればなと思っております。

 さて、早いもので、ソウルに来てもう半年が経とうとしています。
以前のように外出して美味しい韓国料理を食べて、人の集まるところに行ってということがなかなかできないのが残念ではありますが、家で少し時間のかかる料理をつくってみたり、近くをふらっと散歩してみたりと、その中でも楽しく生活しています。
 また、こういう状況でありますので、東アジア平生教育研究会のメンバーの皆さん(今季は張知恩先生が会長、メンバーに梁炳贊先生、崔一先先生他)にもまだ直接お会いできていないのがとても残念です。今年はどこかのタイミングで集まれるといいねというお話が毎月のZOOM定例会の常套句となりつつあります。
 そんな中ですが、来月9日に、韓国では大統領選挙があります。先日には各候補者の公約がまとめられたリーフレットがまとめてポストに入れられており、いよいよこの時期が来たなという圧を感じております。「誰に入れる?」、「〇〇は器じゃないと思う」、「△△の点はこの候補がいいんだけどな」というような結構赤裸々な話を、私と同じ世代の周囲の人たちがしているのを聞くと、日本でも選挙の期間くらい、友達同士でこういう話ができればだいぶ世の中の形が変わってくるのだろうにな、とふと思ったりもします。

 しかし、赤裸々に話しすぎることで衝突が生まれることもやはりあるようで、親世代、子世代の政治への期待や思いの違いから、政治の話を避けるということは決して無きにしもあらずです。
 前回の選挙の際には、光化門広場が各テレビ局の設置したステージで埋め尽くされ多くの人々が集まりました。今回の選挙は、まず光化門広場が大改装中なので、コロナ禍でなくてもここに人が集まることは難しかったかなと思います。当日テレビやインターネット、SNSなどでどのように選挙が盛り上げられ、開票速報が流れるのかが今からとても楽しみです。
 明後日からは3月。少しでも早く、春めいた暖かな日が訪れますように。
その頃にまた、ソウルからの春風を運びたいと思います。
 皆様、くれぐれも健康第一でお身体ご自愛ください。

2(2022/03/  )






■2017年3月〜
◆<ソウルから,>  ソウルの風 No.1 

   (東京大学大学院、Thu, 2 Mar 2017 17:58) 南の風3802号
 大学の諸手続きや銀行での手続きを終えてやっと一息つくことができました。到着のご報告が遅れてしまい,申し訳ございません。
 先月の25日に韓国に着き,27日からソウル大学の学生寮にて生活をしております。28日には韓崇熙(ハン・スンヒ)先生にお会いすることができ,韓先生の指導生二人を交えて昼食をご馳走になりました。
 また昨日の3月1日には,光化門での大規模集会に少しですが参加してきました。バスでバリケードが作られていたり,ものすごい数の警察がいたりと厳戒態勢で,一つの歴史がまさにここで転換しようとしている瞬間だなと感じました。まだまだ留学が始まったばかりですが,市民の持つエネルギーの迫力に圧倒されています。
 今日から新学期が始まり,昨日までの大学とは全く雰囲気が違い驚いているのですが,来週の月曜日からはいよいよ授業も始まります。緊張と期待と不安が織り混ざった複雑な気持ちですが,多くのことを吸収したいと思います。
 東京も昼夜の気温差がとても大きいと聞きました。風邪をひきやすい時期ですので,みなさまくれぐれもお体ご自愛ください。また連絡いたします。

<いよいよ始まる大学生活>  ソウルの風 No.2  
  (Wed, 8 Mar 2017 15:18) 南の風3805号
 早いもので韓国に来てもう2週間が経とうとしております。前回のソウルの風からも1週間経ちましたが,この1週間の間にたくさんの出来事がありました。少し長くなってしまいますが,ご報告いたします。
 まず韓国社会について,先週末3月4日(土),ソウル市鐘路区の光化門前の広場で10月から続いている「ろうそく集会」が開催されました。今回の集会は、10日に控えた朴大統領の弾劾の判決が下される前の最後の集会として,多くの注目を集めました。残念ながら私は今回当日に参加できませんでしたが,光化門から李舜臣将軍像まで集まった人々でいっぱいになり,行進をする様子が報道されていました。この日は昼間に親朴派の団体の集会も開催されており,10日の判決に向けた国民の色々な思いが渦巻き,さらに高まった週末でした。
 ここからは大学生活についてです。一昨日3月6日(月)は,ソウル大学での授業がスタートしました。韓先生の「学習社会・教育システムセミナー」という授業で,ヨーロッパ諸国のlearning societyとその教育システムについてのハンドブックを教材に,ゼミ生が輪読,発表をする授業です。初回は院生それぞれの研究計画書を発表しました。私は当分の間,韓国における仕事/家庭の両立支援に関する女性家族部の政策とこれまでの動向について分析し,まとめてみようと思っています。
 この日の昼には,姜大仲先生にお会いし,昼食をとりながら日韓の大学院の制度や授業の様子についてお話ししました。また今週から院生控え室に通うようになり,院生たちの顔と名前が少しずつ一致してきました。焦らずにこれから良い関係が築ければいいなと思っています。
 そして来週の話になるのですが,3月18日(金)19時から韓国東アジア平生教育研究会の月例会に参加してきます。どのような議論がなされるのか,今からとても楽しみです。月例会についての報告は次回にいたします。
 韓国はまだまだ寒い日が続いておりますが,東京はだいぶ暖かくなったと李先生とのメールのやりとりで伺いました。季節の変わり目ですので,皆様風邪などにはくれぐれも気をつけてお過ごしください。またご連絡いたします。

<大統領の罷免と研究室でのピザ> ソウルの風 No.3  
  
(Mon, 13 Mar 2017 15:24) 南の風3807号
 今回は,先週金曜日の朴前大統領の罷免と週末の様子をお届けしたいと思います。日本でも大きく報道されたように,先週10日金曜日に朴前大統領が憲法裁判所の裁判官8名の満場一致の判断によって,罷免されました。
 韓国では現地時間11時に生放送で憲法裁判所の様子が報道され,ソウル大学校の平生教育専攻院生研究室も,各自のパソコンでKBS やJTBCのオンライン配信を映しながら様子を見守っていました。当初は読み上げに40分ほどかかるのではないかという噂がありましたが,約23分頃に「弾劾認定」という言葉と字幕が現れました。拍手とともに「おー!」という声。そして「韓国にまだ正義が残っていた」,「今日は歴史の転換点だ」という声が院生から出ていました。お昼ご飯はみんなでピザを頼んで食べて,その後の報道を見守りました。
 憲法裁判所のあるソウル市鐘路区の安国(アングク)駅には,9日から朴槿恵退陣要求側の市民,そして親朴派の市民が集まっており,当日も朝から両陣営が陣取っていた様子が撮影されていました。宣告文が発表されてからは,親朴派の団体が報道陣や警察と衝突する事態に発展してしまいました。どういう経緯であっても命を落とす人がいるということは,本当に残念だなと思うとともに,集会や何か運動を起こし,そこに集まるということにはある程度の危険性が伴うということを,個人的には改めて考えさせられました。
 10日の夜,11日の午後からは7時から光化門でろうそく集会があり,10日の夜には、私も様子を伺いに行ってきました。一人一人の持つロウソクの火が,これからの韓国の行く道を照らしているようでとても幻想的でした。
 また11日の午後からの集会は,「ジャンチククス(にゅうめんみたいな食べ物)」が振舞われたり,家族づれでいっぱいになってお祭りのような雰囲気だったそうです。
 次期大統領選挙は,5月9日(火)です。これから各候補者の選挙戦が始まろうとしています。今回の選挙でのキーワードの一つは「Big tent(包括政党)」。継続して社会の様子を追っていきたいと思います。またご連絡いたします。

<春のいぶき> ソウルの風 NO.4   
  (2017年3月25日) 南の風3812号
 韓国は徐々に春らしい天気になってきました。先週末ソウルでは最高気温が17度まで上がり,日中はコートがなくても十分に出歩きできるほどの陽気でした。今回は先週17日(金)にありました「東アジア平生教育研究会」の月例会について,報告したいと思います。
 「東アジア平生教育研究会」は,毎月第3金曜日の18時にソウルの教大(キョデ)駅近隣の貸し会議室で開かれており,毎月誰かがテーマを設定して発表をする形で主に進められています。3月は院生3名,先生方7名の参加でした。
 今回は,北海学園大学の内田先生が韓国に調査でいらしていたこともあり,テーマは「日本の地域づくりとまちづくりの概念について」でした。主な内容は地域づくり,まちづくりと言ったときに具体的にどのような地域のどのような環境や雰囲気をつくりあげていくことを前提としているのかについて,増田レポート以降の国の「地方創生」の流れ,そして最後に社会教育の「地域づくり」で大切にしてきた住民自治,地域の中での人と人との関係性づくりについてでした。
 発表後に出た質問の一つに,最近日本で,社会教育や公民館,社会教育主事が再評価されているという状況に対して,これらが「再評価」されるに値する具体的な新しい側面はあるのか?というものがありました。先日李先生とも少しお話しましたが,何か新しい側面が発見されたというよりは,これまでの社会教育,公民館,社会教育主事がしてきたこと,大切にしてきた価値を改めて問い返していく中で,やっぱりこれって大事だよね,という思いが社会の中に生まれてきた,その結果の再評価として捉えていく必要があるという文脈を大切にしていかねばならないなと改めて考えました。
 2時間の研究会後には,ヤン先生が合流して食事。その後二次会もあり,23時半ごろ解散しました。研究会には今回が初めての参加となりましたが,これから毎月あるということなので引き続き参加を続けて内容の報告をしたいと思います。
 今日から朴前大統領に対する検察の調査が始まりました。「国民の皆さんに申し訳ないと思っています。誠実に調査に臨みます。」という朴前大統領の言葉を受けて,メディアは「たった二つの文章,短いメッセージ」と報じたニュースがとても多かったです。今後の動向にも引き続き目が離せません。
 少し長くなってしまいましたが,最後まで読んでいただきありがとうございます。みなさまくれぐれも体調崩されませんように,元気にお過ごしください。またメールいたします。

<韓国政治、怒涛の展開>  ソウルの風 NO.5   
  
(2017年4月1日) 南の風3816号
 ソウルでの生活も1ヶ月が経ち,やっとこちらの生活のリズムに慣れて来ました。大学内は食堂も多く,毎日どこの学食に行こうかと院生たちと話すことが日常となりました。
 日本でも報道されたように,つい先日に大統領の弾劾裁判があったかと思ったら,昨日に朴前大統領の拘束前審議,そして今日の未明には歴代大統領三人目となる逮捕という形となりました。
 拘束前被疑者尋問(韓国語:令状実質審査)が大統領では史上初という報道がありましたが,この制度が始まったのは1995年なので,それ以前の全斗煥,盧泰愚両氏にはそもそも適応させる制度がありませんでした。
 この朴前大統領の逮捕という風を受けて,保守と革新両者陣営がどう動いていくのかに注目したいところです。まずは5月9日の大統領選挙に向けて,各党からの大統領候補者が選出されます。主な政党は4つあり,「共に民主党」「国民の党」「正しい政党」「自由韓国党」で,この中で今のところ候補者が決まっているのは,正しい政党です。正しい政党とは,与党セヌリ党の非朴派の議員たちによって結成された政党であり,今年の1月24日に発足した新しい政党です。非朴派と言えども,保守的な政党と捉えることができると思います。
 そして今日候補が決まるのが,自由韓国党です。ここも保守派の政党なのですが,注目されるのは現職の慶尚南道知事であるホン・ジュンピョ氏が候補として選出されるのかどうか,というところです。まだまだ各候補者についてリサーチ不足ですが,5月9日の選挙に向けて特集番組もこれから出てくると思いますので,注目していきたいと思います。
 今日(3月31日)はTOAFAEC 編集会議と定例会,そして韓国フォーラムがあるということで,南の風を見ながら、そのボリューム感に驚いておりました。
 私も今日の夕方は,院生の自主勉強会に参加してきます。場所は離れていても,同じ時間に社会教育・平生教育についてお互いに議論を深めているということがとても強い支えと感じます。
 明日からは四月,もう春が目前に迫って来ております。皆様,どうか健康第一でお過ごしください。またご連絡いたします。

<平生教育学会―春季フォーラムの様子> ソウルの風 NO.6      
  
(2017年4月13日) 南の風3821号
 ソウルの桜は先週の半ばから少しずつ咲き始め,週末には漢江沿いの汝矣島(ヨイド)エリアを中心に多くのお花見客で賑わいを見せました。ソウル大学内の桜も他の市内のエリアからは少し遅れて,ようやく今日くらいから咲き始めました。桜の淡いピンク,レンギョウの黄色,ツツジの華やかなピンクが校内を鮮やかに彩っています。
 先週の金曜日には韓国平生教育学会と韓国平生教育士協会の共催で,春のフォーラムが開催されました。場所は,麻浦区平生学習館。平日でも多くの人でいっぱいの弘益(ホンイク)大学エリアの一角に位置しています。
 以前すぐ近くまで遊びに来たことがあるのですが,まさかホンデエリアのど真ん中に平生学習館があるとは現地の院生も思ってもいなかったようでした。
 春季フォーラムでは最初に,済州平生教育振興院のホン・スクヒ氏から「平生教育士の教育専門性,どこで育てるのか」というテーマでの発表があり,なかなか言葉にすることができない平生教育士の専門性を現場から拾い上げることの必要性,そして現場へ多くの平生教育士を配置することが平生教育士の専門性を結果として強化していくことにつながるといったことが報告されました。
 平生教育士の専門性として要求されるものは社会の脈絡とともに少しずつ変化していくため,私たちがどうやってその専門性を理解すれば良いのかについて,言葉にしきれないと言うか,やはり現場にしか分からない部分があるのだなということを感じました。
 次に順天郷大学校のキム・ヒョンス先生から「平生教育士の役割再定立と課題」と言うテーマで発表がありました。ここでは平生教育士の業務内容や専門性と等級の関係を,最近韓国平生教育総連合会で示された平生教育運営分野における「国家職務能力標準(NCS: National Competensy Standards)」と併せて新しい平生教育士の等級と職務内容を定めようとする案が報告されました。
 二つの発表とその後の質疑応答の流れから個人的に思ったことは,実践者と研究者の歩み寄りの必要性でした。言葉にならないものを言葉にすることが研究者の役割だとしたら,現場の声にどう向き合うのか,あるいはそうやって紡ぎ出された研究者の示す内容について現場としてはどう反応していくのか。発表者のお二方の直接なやりとりがなかったので,今回の発表を互いにどう受け止め消化しているのか,とても個人的に気になるところです。私もまだ韓国の学会の雰囲気がどういうものだか十分に体感できておりませんが,仲間の院生が「最近現場(平生教育士)の声が大きくなっている」という反応からも分かるように,韓国平生教育士協会という職能団体が学会に与える影響の大きさに驚いております。(今回発表されたホン先生がとてもエネルギッシュだったことも大きいとは思いますが,,)なお上の二つの発表原稿については,韓国平生教育学会のHPでデータが配布されているようです。
 先週末のアメリカと中国の会談後から何が本当で何が噂か分からない情報がたくさん出てきていますが,韓半島を取り巻く国際情勢が少しづつ動いているということは確かです。そしてそれと同時に,大統領選挙まで1ヶ月を切り,自国の内政についても転換点を見せる時期が差し迫っています。来週の韓先生の学部の授業では,大統領選挙候補者の掲げる教育政策について調査し発表し合うこととなりました。
 その様子については,次回のソウルの風でご報告したいと思います。暖かくなってきましたが,みなさまくれぐれもお体には気をつけてお過ごし下さい。

<ソウルでの研究会と来たる大統領選挙> ソウルの風 NO.7 
 
(2017年4月29日) 南の風3829号
 週に一度のソウルの風を目指していましたが,先週は風を吹かし損ねてしまいました。
前回のソウルの風で大統領候補者の教育政策について次回で触れると書きましたが,今回の風では,先週金曜日にありました東アジア平生教育研究会4月定例会の様子について先にご報告したいと思います。
 4月21日(金)の18時から開催された4月の東アジア平生教育研究会には,日本からちょうど韓国にいらしていた東北大学の高橋満先生と院生のチェ・ミンギュさんを迎え,日本の社会教育と地域づくりというテーマで開催されました。昨年度から始まった学会のプロジェクト研究の概要や昨年度6月集会での議論などを振り返り,社会教育としてどのような固有性を持ちながら地域社会での学習を描き出していくのかについて報告があり,それに対して韓国側の参加者からも積極的に質問がありました。「良い実践」という時の「良い」とはなんであるのかという話の際には,ヤン先生から和歌山県での事例が印象的でした。とてもいい活動をしているのに「あそこと比べたらまだまだです」という公民館関係者の話の話を聞いて,ヤン先生は謙遜からそういう言葉が出たのか,あるいは本当に自分たちの実践を高く評価できずにいるのかということを考えたそうです。確かに難しいところだと思います。「良い」という価値観の中に,無意識的に私たちの主観が入っていることに注意しなければならないなということを個人的には感じました。
 二次会では,今回の年報の「韓国の平生学習・この一年」で私の担当である「障害者平生教育」の話を聞くことができました。参考論文として,ヤン先生の指導教員であったキム・ドス先生の「障害者の統合教育と平生教育体制(原文:???? ????? ??????)」(国立特殊教育院,1998年)と先日お送りした檀国大学の特殊教育研究科の教授キム・ドゥヨン先生の連絡先を教えていただきました。そして気になっていた「障害者平生教育士資格」 についても韓国特殊教育学会と平生教育学会が協力して,専門職として体制を整えようとしている最中だそうです。引き続き調査を続けていこうと思います。
 5月を目前にし,日本はゴールデンウィークに入る頃ですね。韓国も飛び石ではありますが,これから5月1日(勤労者の日で会社員は休み),3日(お釈迦様の誕生日),5日の子どもの日と連休が続きます。そして週明けにはいよいよ大統領選挙。おととい火曜日の夜には4回目の候補者のテレビ討論が開催され,これまでの3回よりは討論らしい討論だったという意見があちこちで聞かれました。アメリカのような大々的なネガティブキャンペーンは韓国では見られませんが,どのようにして他候補の支持率を落とすか,という手段の一つとして討論が使われている感じもしました。政策の中身を問うような議論がもう少し詳しく聞きたかったというのが私の個人的な感想です。
 これまでの支持率の調査では文在寅(ムン・ジェイン)候補と安哲秀(アン・チョルス)候補の差がそんなにありませんでしたが,火曜日に発表された支持率では,ムン候補が40%で他の候補者より頭一つ飛び抜けていました。
 韓国に来て昨日で2ヶ月が経ちましたが,着実に時代そして社会の変化に向かう韓国の分岐点に立ち会うことができているこの状況が不思議でもあり,とても貴重な体験だなと感じます。ソウルの風を通して,この雰囲気を少しでもお届けできればなと思います。
 それではみなさま,お体にはくれぐれも気をつけてお過ごし下さい。また報告文をお送りいたします。夜分に失礼いたしました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

<ついにきた!大統領選挙当日> ソウルの風 NO.8   
 
(2017年5月10日) 南の風3833号
 日本でも報道にあったように、昨日、韓国では大統領選挙が執り行われ、共に民主党の文在寅(ムンジェイン)氏が当選し、第19代韓国大統領に就任しました。本来ならば12月20日に執り行われるはずであった大統領選挙が、朴前大統領の弾劾によって前倒しされた今回の選挙は。5月のバラが咲き始める季節にちなんで、「バラ選挙(韓国語:ジャンミ ソンゴ)」と呼ばれていました。
 5月4、5日に行われた事前投票率は26.06%(1107万2310名)。連休の最中ということで、仁川空港にも事前投票所が設置されました。そして迎えた昨日の選挙。投票時間は、朝の6時から夜の8時でした。多くの会社や学校が選挙の日には臨時的に休みになります。現地の友達に付いて行って投票所にも行ってみましたが、小雨が降る中、朝の9時半で友達の地元の投票所には列ができていました。
 夜の6時からは、KBS, JTBC, MBC, SBSなど主要テレビ局が光化門広場に設置した特設舞台で選挙関連番組をしていました。夜の8時前後に広場に行ってみたところ、雨が降る中にも関わらず大勢の人がカッパを着て広場に集まっていました。大きなスクリーンに出口調査の結果が映し出され度に歓声と拍手が湧き上がりました。そして夜10時40分ごろ、文氏の当選が確実になるのが分かると広場にはさらに多くの人が集まっていました。夜11時30分すぎ、当選確実になったら光化門のセウオル号の被害者遺族にその日のうちに会うと公言していた文氏が約束どおり光化門広場に現れ、人々の興奮はピークに達しました。「国民全ての大統領になる。国らしい国、そして頼もしい大統領」という文氏の言葉に大きな拍手。新たな韓国の出発の瞬間に立ち会うことができ、3月の弾劾裁判とは比べ物にならないくらいの韓国のエネルギーを感じました。
 昨日の最終投票率は77.2%、18代大統領選挙時の投票率を1.4上回りました。地域別の投票率をみてみると、光州(82.0%)、世宗(80.7%)が80%を超え、その他の地域でも70%を超える投票率でした。ソウルは78.6%でした。文氏が獲得した票は、歴代最高を記録し(1342万3784票、全体の41.08%)、二位の保守派洪氏との差は557万938票にも及びます。大邱、慶尚南道、慶尚北道以外の地域では文氏の勝利でした。
 本日正午には国会議事堂で文大統領の就任宣言がなされる予定です。どういった言葉で文大統領が所信を表明するのか、今からとても楽しみです。興奮冷めきらぬままの文章ではありますが、また所信表明の様子もご報告したいと思います。
 それではみなさま,お体にはくれぐれも気をつけてお過ごし下さい。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

<正義が勝利する大韓民国> ソウルの風 NO.9    
  
(2017年5月18日) 南の風3837号
 五月も中旬を過ぎ、韓国ではいよいよ1学期の終わりが見え始めてきました。
 文大統領の就任からはや一週間。「私を支持する,しないに関わらず国民全ての大統領になる」と就任挨拶をした文大統領への期待は日に日に増しています。それに呼応するかのように,国民に寄り添い共に歩んでいく新しい大統領の姿があります。公共部門での非正規職員ゼロを目指す動き,大気汚染が深刻化する中で,全国の幼稚園・小学校・養老院を対象に空気清浄機の無償設置を宣言。15日の「先生の日」には,セウォル号沈没の際に亡くなった教師のうち殉職とされていなかった非常勤の教師を殉職と認定し,また北朝鮮のミサイル発射に対しては即時に対応しそのプロセスを国民に公開。そして政府の人事については大統領が直接発表し,記者からの忌憚のない質問を随時受け付ける姿勢を持つなど,この1週間のうちで多くの動きがありました。韓国政府・青瓦台のHPも2ヶ月ぶりに更新されました(http://english.president.go.kr)。
 また昨日5月17日は,江南駅女子大生無差別 殺人事件から1年が経った日でもありました。犯人が女性嫌悪主義者で殺すなら誰でもよかったという理由での殺人だったことから,当時多くの女性が「私は偶然生き残っただけで,私はあなただ」などとポストイットに書き,被害者女性へ追悼メッセージを送りました。昨日も女性団体が会見を開き,行進をするなど事件を風化させまいとする市民の思いが伝わってきます。
 そして今日5月18日には,午前10時から5.18光州事件の記念式典が行われます。式典には現職大統領が参席し,そして保守政権下で禁止されていた民衆歌謡「あなたのための行進曲」が9年ぶりに歌われることが話題となっています。「新しい日が訪れるまで,動揺しない」,「先頭に立って,我行かん,生ある者よ,ついてこい」という強い思いが込められた歌詞を持つこの歌は,昨年光化門広場で開かれたろうそく集会でも歌われており,韓国の民主化のために戦った人々のように不義に屈することなく「正義が勝利する大韓民国」をつくろうとする国民,そして新政府の思いもこの歌を通じて届けられることと思います。
 過去を風化させない,忘れてはいけない。韓国社会の言葉で伝えきれない「躍動感」は,このような韓国国民の想いが大きな原動力の一つとなっているのではないかと思います。
 躍動と言えば,昨日山添さんから6月に出版される「躍動する韓国社会教育・生涯学習」の納品完了メールが届き(山添さん,ご連絡ありがとうございます!),TOAFAEC韓国フォーラムに参加してから微力ながらもずっと関わり続けていた活動が形になることに,何とも言えない不思議な感覚を抱いています。本が届くのをソウルで楽しみにしております!
 今回も長くなってしまいましたが,最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

<北韓と南韓> ソウルの風 NO.10   
 
(2017年5月29日) 南の風3837号
 先日,文政権下の康京和(カン・ギョンファ)外交長官候補者が,南北交流の再開に重きを起き,人道的支援は政治とは別に進めていくことを表明しました。カン氏は,金大中政権下において,専門の外交官でないにも関わらずその優れた通訳で外交部通産省にて働いており,その後は国連人権高等弁務官事務所の副代表,国連人道問題調整事務所の事務次長補など国際連合で主にキャリアを重ねて来た女性です。国際社会において,韓国の対北朝鮮への人道的支援は政権が変わるごとにムラがあると批判があり,その批判への一つの解答として今回の話が出て来た部分も理由の一つとしてあると思います。
 今学期受講している「南北関係論」の授業の中でもこの話題が触れられ,人道的支援をなぜするのかについてその道徳的性格,そして政治的性格について学生同士の議論の場がありました。人道的支援の道徳的性格とは,人権を守るため,人道的支援をすることは当たり前だし,それを止めてしまうことは倫理的に問題があると捉える,人道的支援そのものを目的とする捉え方です。一方で政治的性格とは,人道的支援をすることによって,政治的な交渉や会談が円滑に進めることができると いう人道的支援をある目的のための手段として捉える考え方です。
結果として今回の授業では,長期的な視野を持って人道的支援を継続して行うことにはまずそれを目的とすることに意味がある。その上で追随的に政治的に良い状況をつくることができたならば良いし,そうでないとしてもその後の交流の一つのきっかけとして後には評価されるだろうという意見でまとまりました。
 韓国に来る前には,北朝鮮と大韓民国は当たり前のように民族は一緒ですが違う国同士として捉え,将来に統一するということになっても韓国に取ってどんなメリット・デメリットがあるんだろう,くらいしか正直考えていませんでした。しかし一つの学問として南北の歴史やこれまでの会談の内容やそこで 掲げられた宣言の内容などを知ると,国と国という関係を超えたとても特殊な関係の中に韓国と北朝鮮は存在しており,容易に考えるようなどちらか一つの国家の崩壊と統合という脈絡では統一は語れないということを恥ずかしながら感じました。
 韓国社会が停戦状況にあるということは忘れてしまいがちですが,今年は特に北からのミサイル発射など威圧行為が続いているのもあり,韓国社会の中で北朝鮮の存在を意識することが6年前の留学時よりも多くなっています。
 文政権に入り,これからますます対北朝鮮との外交は重視されていくことが予想されます。近い将来に統一がなされるとすると,北からの人々が韓国社会で生活をしていくために自ずと彼らへの基礎教育の支援や文化交流プログラム,共生プログラムなどといった教育的支援に目が向けられることと思います。「統一」というキーワードをどう自分の中で捉えていくのか,少し大きな問題ではありますが,今後とても大切な視点の一つになって来るのではないかと強く感じました。
 長文でしかも考えがあまりまとまっていないですが,最後までご拝読いただきましてありがとうございます。ソウルの風も10号となりました! これからも色々な視点でソウルの様子をお届けいただければと思います。みなさま,いつでもお体にはくれぐれも気をつけてお過ごし下さい。

<梅雨の訪れ> ソウルの風 NO.11    
 
(2017年7月7日)  南の風3855号  
 前回のソウルの風から1ヶ月も配信が滞ってしまっておりましたが,7月に入り,気持ちも新たにここからもう一度風を吹かせていきたいと思います。
 台風の影響で,北九州を中心にその被害が甚大だということをニュースを通して知り,発達した技術と知識を用いて対策を取ってもいつでもそれを超えてくる自然の力の脅威について,改めて考えるきっかけとなりました。
最近の韓国ですが,梅雨に入った影響もあり,日本と同様かなりジメジメと蒸し暑い日が続いております。
研究室には大体誰か院生がいるのですが,最近は天気の影響もあり普段と比べてあまり人がいません。
昨日は雷とスコールのような雨が地面を叩きつけており,院生控え室では「とうとう韓国も熱帯(の気候)になりつつあるのかな」という話が出てくるほどでした。日本でも近年ゲリラ豪雨と猛暑が続いておりますが,それはほぼ地図上の位置を同じくする韓国でも同じようです。今日から週末にかけて雷雨の予想がされているので,天気予報とニュースを見ながら雨に備えたいと思います。
 また先日,文大統領とトランプ大統領の会談を受けて北がミサイルを発射したことも記憶に新しいです。今年の春あたりからずっと徹底として挑発行為を続けている北 ですが,中国で習主席に対して文大統領が,対北関係において中国の役割の重要性を再度強調したという報道を受けて,中国と北の関係性がこれまでとどう変化していくのかも気になるところです。
 大使館と外務省からパソコンにメールが来るたびに何事かと少し驚くこともありますが,そういったこともありながらいつも通りに過ぎていく日常がまたどこか平穏すぎて不思議な感じもします。何事にも緊張感を持ちつつ,夏休みも過ごしていきたいと思います。

<初夏の訪れと学歴社会ショック>  ソウルの風 NO.12    
 (2017年7月15日) 南の風3859号
 韓国は先週末から今週の初めまで雨でしたが,週の中頃からは暑い日が続いております。夏らしい通り雨も増え,折りたたみ傘を持ち歩く日が多いです。
 先日のソウルの風が南の風で流れて来た際に小林先生が送ってくださったドイツでの文大統領の宣言文。文政府が取ろうとしているこれからの南北関係のビジョン(朝鮮半島平和構想)を受けて,10日に韓国統一部が南北対話の推進に向けて動き始めました。開城工業団地の操業再開,そして民間交流だけに止まらず,南北の地域間交流にも「地方自治体交流協力協議体(仮称)」を新設するなど今後力を入れていこうとしているようです。北の動きに関して対外関係を見てみると,統一部の見解では中国とは距離が生じており,ロシア側との協力関係を模索しているところだといいます。4カ国協議,6カ国協議とこれまでありましたが,4カ国協議の際 に呼ばれるのが韓国,北朝鮮,アメリカ,そして最後の1カ国としてどこが呼ばれるのかも注目しています。これまではずっと中国でしたが,ロシアと北との関係が深まればもしかすると交代もありうるかもしれません。あるいは日本も含めた6カ国協議が主流となるのか。何れにしても今の所北の反応はミサイルの発射以降無いのですが,どう反応を示すのかも気になるところです。

 また13日には,文大統領の教育に関する選挙公約を実現するための専門チームが公式的に動き始めました。高校単位制や教育に関する職の安定,市・道教育庁への権限移譲などを主に進め,これらと共に大学入試の熾烈な競争を無くしていくための方法の一つとして外国語高校,自立型私立高校の廃止を目指すこととなりそうです。こちらに来て周りの院生の高校時代の話を聞いてみると,薄々感づいてはいましたが,自分が経験した高校生活とはあまりにも日常が違いすぎて改めてショックを受けました。こうやって一つ一つ韓国という国を色んな面から知ることによって,まだまだ時間はかかりますが自分の中での韓国社会像が少しずつ描けていけるような気がします。みなさま蒸し暑い日が連日続いていると思いますので,くれぐれもご自愛ください。

<ソウル大の院生> ソウルの風 NO.13  
 (2017年7月28日)
 7月も最終週となり,ソウル大学では9月に始まる二学期の授業の履修登録期間が始まります。
次学期は韓先生の担当される授業が無いので,姜先生の授業もチェックしながら他学科の授業を取ってみようかなと色々な講義計画書を読んでいます。ここ数日暑い日が続いていたので,梅雨が明けたかなと思っていたのですが,昨日の夜から週末にかけて天気は雨の予報。まだ梅雨明けとは明言できないようです。
 夏休みの始めからおこなっていた同期との成人教育理論についての勉強会も折り返しを迎え,院生の皆さんと少しずつ関係がつくれているかなとも思えるようになりました。ソウル大学での院生同士の助け合いや,先輩後輩との関係性のつくり方には,私も日本に戻ったらこうしてみようかなと思える部分も多くて,ハッとさせられます。昨日文大統領が,企業人とこれからの労働や就労政策についての意見をチキンとビールを味わいながら交わし合ったというニュースがありましたが,大統領と院生とではだいぶ程度の差があるかもしれませんが,韓国社会のこういう互いに腹を割って話し合おう,こっちの準備はできてるぞという姿勢にとても新鮮さというか親しみを感じます。
 感想文になってしまいましたが,昨日のとある院生の送別会(アメリカの大学の博士課程へ9月から進学)があったこともあり,自分が今感じている気持ちを表したいと思いこのようにまとめました。7月には東アジア平生教育研究会はなかったですが,8月は11日に開催されるというメールが先日ありました。日本語を読める先生方もいらっしゃるので,6月に出版された韓国本を宣伝してこようと思います。 まだまだこれからが夏本番です。みなさまくれぐれもお体ご自愛ください

<秋の訪れは音楽と共に> ソウルの風 NO.14   
  
(2017年9月1日)
 今日から9月,いよいよ新学期が始まりました。ソウルは快晴。爽やかな秋晴れです。
 ソウル大学では新学期になると大学内のオーケストラ団体の新学期演奏会が開催されます。今学期は今日の夜です。3月の演奏会の時期は,これから始まる留学生活の不安と期待でいっぱいだったのを覚えています。今学期は前学期の個人的な反省を踏まえて,また半年間悔いを残すことが無いように努力したいと思います。
 さて北朝鮮からのミサイル発射や昨日までの軍事訓練等,春からの韓国を取り巻く情勢はまだまだ不安定です。内政に目を向けてみると,29日に2018年度の予算案が企画財務部から公表されました。報告によると,韓国の2018年度歳出は過去最大の429兆ウォン(日本円で約41兆円)で,保健福祉分野,雇用創出,教育,行政・地方行政支援,国防,治安・公安に関する分野で増額が見られました。
 反対に減額となったのは,インフラ,文化・スポーツ・観光,環境,中小企業・産業・エネルギーに関する支援の分野です。文政府の選挙公約(福祉の促進と質量両面での雇用の拡充を目指し格差を是正する。輸出主導型から,所得・消費の伸びが主導する経済への転換)が反映された結果となりました。予算案は本日提出され,これから審議が行われます。
 また最近韓国では政治的なテーマを題材とした映画が公開されており,話題となっています。8月上旬に公開された「タクシー運転手」は,5.18光州民主化運動下で日本から仁川に飛び,光州に取材に入ったドイツ人ジャーナリストと彼を空港から光州まで送り届けたタクシー運転手のエピソードがもとになっています。また8月中旬から公開されている「共謀者たち」という映画は,李明博政権下で行われた公権力によるメディア統制(主要4放送局の社長が退陣,李明博前大統領とつながりのある人がその次の社長に就任したという疑惑)に関するドキュメンタリー映画です。どちらの二つも,普段政治的な主題の映画を見ない層の観客も多く動員しているようです。
 私も時間を見つけて観に行ってこようと思います。 久しぶりの風で,少し長くなってしまいました。またソウルから風を吹かせたいと思います。

<名古屋の風> ソウルの風・番外編  
  (2017年9月19日)  南の風3879号
 埼玉での3日間の学会の期間で久しぶりに皆様にお会いできまして、本当に嬉しかったです。上手く表現できませんが、「あー、帰ってきたんだな!ここがホームなんだな」という気持ちになりました(一時帰国ではあるのですが^^;) 。
 そこに甘えすぎてはいけませんが、いつも温かく迎えてくださる皆さんの前ではやはり気持ちがホッとします。今回お会いできなかったメンバーの皆さんにつきましても、また別の機会を楽しみにしております。またTOAFAEC22号、そしてハンドブックも今回手に取ることができました。ありがとうございます。
 学会の間、たくさんのパワーを頂き、昨日実家の名古屋に帰ってきました。これから家族と愛犬2匹にもパワーをもらって、今週末にはソウルに戻ります。残りの留学生活をさらに充実したものと出来るよう、ポジティブに頑張りたいと思います。
 昨日は真夏のような天気でしたが、今日の名古屋は爽やかな風が吹く秋晴れです。こんな天候の時は体調を崩しやすいものです。季節の変わり目の風邪は本当に厄介ですので、皆様くれぐれもお身体ご自愛ください。
それではまたご連絡いたします。

<研究者とロビー活動、そして公州大学> ソウルの風 NO.15   
 
(2017年10月1日)  南の風3883号
 いよいよ今日から10月です。韓国では,早い人は金曜日の夕方から最大で11日の 「秋夕(チュソク)」の大型連休に入っています。今日はあいにくの曇り空ですが,昨日までは爽やかな秋晴れの一週間でした。
 今回のソウルの風は,9月29日(金)に国会図書館で行われた2017年平生教育政策フォーラム「新しい国家平生教育に向けて/国民の暮らしの責任を持つ平生教育政策と課題」についての報告をさせていただきます。
 もう来年度の予算案は出てしまっており平生教育関連の予算は今年度比で削減されてしまっているのですが,今後の流れを作り上げるための発信の場として国家平生教育振興院と国会議員6名が主催となり開催されました。基調講演はキム・シニル先生がされていました。
基調講演に続く発表主題は4つありました 。1「庶民の平生教育参加の底上げのためのバウチャー制度」,2「雇用のための平生教育政策の新しい観点ーナノディグリーとK-MOOCを中心に」,3「私の暮らしを変える地域学習サービスプラットホームと社会的経済学習団体の連携の可能性」,4「平生教育法の新しい10年のためのパラダイム転換」です。まだ少し詳細を調べる必要があるのですが,姜先生(ソウル大)が報告した平生教育のバウチャー制度は,政府が発表した予算案に少しではありますが内容が反映されているそうです。
若者の雇用問題の解決に重点的な対応を見せている文政府に向けての発信ということで,労働問題への解決策の一つとしての平生教育(第2発表),そして誰もが学び続けることができ(第1発表),なんらかの形で 社会と関わり続けることができる社会(第3発表)をつくり上げるためにはどうしていくべきかという話であったと個人的に思います。
 それを踏まえて,平生教育を通してどのような社会をつくり上げていきたいのかという一つの大きな「青写真」を,これから議論していくことの必要性についての話も出てきました(第4発表)。チュソク明けには国家平生教育振興院のホームページにpdfで資料集の掲示があるそうですので,ご参照いただければと思います。
 また,昨日には公州大学で土曜日に開かれている「現代平成教育の課題」という授業を聴講してきました。李先生と梁先生のお計らいでこのように学習の場が広げられたことをとても感謝しております。ありがとうございます。この授業で取り扱っている本は,なんと!「躍動する韓国の社会教育・生涯学習」です。昨日の授業では,第1章3節「NPOは平生学習の地平を広げることができるか」と第2章1節「地域教育ネットワークが紡ぎ出す教育福祉」をテーマに議論をしました。
 まず平生学習館のNPO委託運営について,日本の指定管理者制度の議論でも言われているように,やはり専門性やノウハウをどのように担保していくのかが大きな問題となっています。いくら水平的な関係でと理論はいえども,現場にはいれば上下関係が露骨ではないにしろ出ている実態を知りました。その点に関しては,行政的な論理での委託関係ではなく,価値志向的な論理である民と官の協治によって平生教育も互いを高め合うことはできないかという意見も出ました。
 実際の現場で働く方が多い研究室ならではの,とてもリアルな実情に迫る話し合いが公州大学の強みだと感じました。
 そして教育福祉については,「教育」そして「福祉」という概念をどのように当事者たちが捉えているのかという話が出ました。実際に小学校で教育福祉事業を担当している方によると,保護者たちが求めているのは支援の福祉的な部分であり(何かを無料にしたり,どこかへ連れて行ったり),教育的な支援はどうしても二の次になってしまっている現状があるという課題点が提起されました。韓国の学校を取り巻く大人のそれぞれの思いは,とても複雑で,支援を受けている子どもがいること自体を嫌がる保護者もいるという少し知りたくない部分もわかりました。普遍主義的支援と選抜主義的支援を考えるときに,教育福祉の支援はその必要のない子どももいる(金銭的に豊かである子)ことを考えると,どうしても選抜主義的なものになります。選抜的な支援が行われるということは,少なからず周りとは違うというレッテルを貼られやすくなるという問題点をどう捉えていけばよいのか。自分自身の中でもまだ問いが見出せないのが正直なところです。
 このところの特殊学校設置などのニュースでもあるように,自分とは違う何か特別な部分があること,そしてそういった違いを持つ人が自分の身の回りの社会にいるということについて,否定的な意見を持つ人々が多数ではないがいます。忘れがちな部分ではありますが,念頭には置いておかなければならない視点だなと改めて思いました。
 少し長くなってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。東京は涼しい日が多くなってきましたでしょうか?近年秋は一瞬で通り過ぎる感じがしますが,金木犀の香り,銀杏の臭い,爽やかな秋風を感じつつ,お過ごし下さい。皆様どうかお体にはくれぐれもご自愛ください。

<障害者平生教育について考える> ソウルの風 NO.16      
  (2017年10月16日) 南の風3885号
 韓国はチュソク連休も先週に終わり,一段と冷え込みが激しくなってきました。
今回は,先週末に開催された韓国障碍者平生教育・福祉学会の第四回学術大会についてご報告いたします。今年のTOAFAEC年報の「韓国の平生教育・この1年」にあるように,韓国では2016年に平生教育法が一部改正され,障碍者平生教育についての充実と国家の責任が明文化されました。それを受けた今回の学術大会のテーマは「「平生教育法」の施行による障碍者平生教育施設の対応と変化」です。
 障碍者の学習はこれまで,学校教育を基盤とする特殊教育の領域で主に行われてきましたが,義務教育終了後の障碍者や成人した障碍者のための支援は見落とされがちな状況がありました。
 彼らは成人の学習を担当する平生教育の視点からもこれまで見落とされてしまっており,いわゆる教育的弱者として捉えられてきました。この特殊教育と平生教育の狭間でどちらからの支援も得ることができなかった彼らを支援するための領域が「障碍者平生教育」という位置付けとなっています。学校教育を終えた障碍者,成人障害者の学習がこれまで支援されづらかった理由として,学会を聞いて感じたのは,支援システムと専門性の不明瞭さの問題が大きかったということです。
 特殊教育と平生教育の間で,これまで支援,サービスの責任?を押し付けあっていた部分もあ り,学習の当事者も困惑するような複雑な体制が今も整理されずに残されています。このような複雑な支援・サービスのルートを,単純化する作業がこれから必要であると,総合討論の部分でも何度も話題になっていました。そして,平生教育学会でも話題になっている専門性の話です。今回の学会では,平生教育士への再教育を通して特殊教育の専門性を養成していくという話が出てきましたが,そこでヤン先生がおっしゃっていた「現場性」という視点が大切となってくると考えます。
 例えば,これまでにも障碍者福祉館が当初想定していなかった発達障碍を持つ利用者が来た時,現場にいる職員が彼らと関わることを通して発達障碍についての知識や関わり方について学んでいったよう に,平生教育士も実際に現場での人(障碍者)との出会いの中で,専門性が育てられていくという地道な道のりが大切なのではないかということです。なんと言いますか,ここで述べられる専門性とは,完璧に何かを全部知っているという意味での専門性では無いような気がします。難しいです。
 また総合討論の中で,当事者団体(障碍をもつ子どもを持つ親)の意見も活発に出されており,障碍者平生教育が目指すノーマライゼーションはとても理想的すぎるといった意見も出ていました。社会に出るということは,社会の目に晒されるということ。今の韓国社会では,まだ障碍に対する理解度が低いという意見と共に,社会の認識を変えることの難しさが訴えられていました。重度の障 碍を持つ障碍者が,社会の中で自分らしく生活するということはどういうことなのか。確かにこれまで考えたことがない視点でした。理想と現実の間での葛藤は教育問題を考える上で少なからず生じるものですが,とても生々しい意見だったなと個人的には思います。
 今回も少し長くなってしまいましたが,最後まで読んでいただきましてありがとうございました。週末から東京も急に寒くなったとニュースで見ました。くれぐれもお体ご自愛ください。またソウルの風にて近況を報告いたします

<ろうそくは続く…>  ソウルの風 NO.17  
 (2017年10月31日)  南の風3886号
 10月も今日で最後の日ですね。韓国は日曜日から急に寒くなり,ソウルでは今日初霜を観測しました。明日からまた少し暖かい日が戻って来るそうですが,もう冬が目の前にまで来ているような感じです。今回のソウルの風は,先週末土曜日に行われたろうそく集会1周年記念集会と,一週遅れではありますが21日に受けてきた公州大の授業の様子をお届けしたいと思います。
 先週の土曜日に,ソウルの光化門と汝矣島でロウソク集会1周年を記念してろうそく集会が開催されました。昨年の10月29日からろうそく集会が始まったので,本当に約1年です。1年前に「朴槿恵は退陣せよ」だったスローガンは,「ろうそくは続く,積弊を清算せよ,社会大改革を実現しよう」に変わりました。また同時に汝矣島では「ろうそくパーティー2017」が開催され,放送局との癒着関係,自身のビジネスでの疑惑などで話題となっている李明博前大統領の拘束と野党への批判が行われました。もちろんろうそく集会でも,李明博の拘束は朴槿恵とともに積弊の精算で取り沙汰されています。集会では久しぶりにろうそく消灯やウェーブなどが久しぶりに登場したようです。
 21日の授業では,「韓国「的」多文化教育は創られるか(金侖貞先生)」と「高齢期における平生学習(崔一先先生)」の論文を取り上げました。金論文では,金先生の言う韓国「的」多文化教育の像とは何であるのかという話が出ました。日本の現状を考えてみても,ヘイトスピーチが近年注目されているようにまだまだ在日コリアンや国内外国人に対する差別は残っており,日本もまた多文化政策/教育についてこれからも考えていかなければならないのではないか思います。その意味では,日本もまだ日本「的」多文化教育のあり方は見つけられていないと思います。また金先生の論文の中での韓国社会の「圧縮多文化化」という言葉が何を意味しているのかを知るために,TOAFAEC12号の金先生の論文を要約する役割を担いました。
 続いて崔論文では,高齢者を弱者と捉える従来の視点からの脱却をすることによって,今増えつつある比較的若くまだ現役である高齢者への平生教育の場が提供され,そして高齢学習者の持つ特徴を理解することにつながるといった話が出ました。一般的に高齢学習者は,新しい知識や観点を受け入れたり,他者との意見交換をしながら自分の考えを再考するという自分の視点の転換がなされにくい存在として理解されており,その中で,高齢学習者のこれまでの人生に敬意を払いながら,多様性を認めつつ学習の場をまとめ上げていく講師や平生教育士の力量がここでも問われてきます。また新しい観点と出会うという視点から,高齢者同士での学習だけではなく,どの世代とマッチングさせるとより高齢学習者が楽 しめる時間となるのかということも話に出ました。
 まとまりがない文章になってしまいましたが,最後までご拝読いただきありがとうございました。明日からいよいよ11月です。そして今週末には公州大学で平生教育学会年次学術大会が開催されます。ソウル大の院生も何人か参加しますので,今みんなで移動の計画中です。
 日本もこれから少しずつ寒くなって来ると思いますので,皆様くれぐれもご自愛ください。

<公州大学にて韓国社会を考える> 
ソウルの風 NO.18  
  (2017年11月2日)  南の風3887号
 間隔が狭い配信ですが,今回のソウルの風では先週の公州大学での授業の様子をご報告したいと思います。先週の授業では,第3章第1節の「労働と平生学習」そして第2節の「社会的経済と平生教育学」を取り扱いました。
 論文の内容を踏まえながらも,とても自由なやり取りが授業の中ではあり,二つの論文の中心内容である働くということと私たちの生活について,それぞれ個人が望むワークタイムバランスを実現するためにはどのような政策や取り組みが必要となってくるのか,考えることのできた時間でした。中でも印象的だったのは,これからは労働に伴う賃金や働く環境についての要求のみならず,労働者は自分たちの余暇の充実についても併せて考えていくことが求められているのではないかという点でした。
 韓国も日本も,ある個人がどこかに就職できるかどうかはその個人に全て責任が全てあります。就職先を得るために,時には自分の希望を下げ就職をする場合もあります。もちろん,何もしなくても就職できるのというのは出来過ぎた話ですので,個人の努力は前提だとは思います。
 しかし今問題なのは,生まれてきた家庭や育ってきた環境の中で生まれた差はもちろんのこと,同じように学歴を積み,あらゆる資格を取っても働き口を得ることができないという事態などが生まれているということです。この問題を解決するためには,個人の領域から社会の領域へその負担を減らしていく必要があります。国家の公的領域として雇用政策をもっと進めていくことも考えられます。それは今文政府が必死に取り組んでいるテーマですので,これからの動向が期待されます。そしてそれと共に,社会的起業のような新たな価値観を元に働くということを根底から考え直すことのできる場が社会の中で受け入れられる準備が求められると考えます。日本でも韓国でも一般的にはまだまだ ベールに包まれた社会的企業という概念やその目的を社会的企業に関わる人だけでなくその周りの地域の人へ分かりやすく発信し,お互いに関心を持ち合うことによってその準備は進められるのではないでしょうか…。
 今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。明日からは公州で学会です。また気温が下がりそうで,いよいよコートの出番かもしれません。皆様も寒さに負けず,お身体くれぐれもご自愛ください。またご報告致します。

<研究者が平生教育を発信する場> 
ソウルの風 NO.19
  (2017年11月15日)  南の風3889号
 定期的にと言いつつまた間が開いてしまいました…。反省です。
更新が途絶えていた間に,公州大学での「平生教育学会年次学術大会(11月3?4日)」,そして昨日(14日)には国会図書館にて「全国平生学習縁石会議創立大会」と「平生教育法 制・改定第2次公聴会」が開かれました。
 公州大学での平生教育学会年次学術大会は「平生教育と社会正義」というテーマで,1日目に基調講演と主題発表,そして二日にかけて11のセッションが開催されました。正直,私は社会正義について自分の中でまだ整理ができていません。大多数の人々が持っていると考えられている「社会のあるべき姿」とは,本当にそれぞれの人々の思いが反映されているものなのか。姿形がなく,上手く言葉で現せない虚構の意識をどうやって合意形成していくのか。まだまだ勉強が足りないなと感じました。しかし一方で,人々がそれぞれ持っている社会のあるべき姿の像や問題点などを人々同士の話し合いや活動を通じて,時に修正し,時に互いの意見に合意することによってその人々が属する社会での 正義が確認されるのではないかと思います。その時に人々へ学習の機会と空間を提供し,人々の間での学び合い,社会のあるべき姿や問題点を認識し,その集団内での合意形成を図ることを後押しするのが平生教育・社会教育の果たすべき役割だということを改めて考えました。とても当たり前のことかもしれないですが,大切な点だと思います。
 そして昨日の国会図書館では,第二回の公聴会に先立って「全国平生学習縁石会議」が創立されました。全国平生学習縁石会議(全平縁)では,「大韓民国の平生学習活性化のために平生教育懸案に対する公論会と平生教育関連法・制度の整備及び社会的運動などを効率的に推進することを目的と(全平縁規約第3条)」し,これからますます"国が責任をもつ 全ての人の平生学習"を目指していく活動(まずは法の制定・改定)が進んでいきます。その後公聴会に入ると,@平生教育法人制度の設立に関する平生教育一部改正法案,A人生第3期平生教育活性化支援法の制定案,B平生教育士の専門性向上と配置の拡大に向けての法制度の改定要求,C平生学習経歴管理及び評価認定に関する法律の制定案がそれぞれ提起されました。そのそれぞれが,上の段落で少しまとめたように,今平生教育として人々の学習の要求にどうしたらより答えることができるのか,何をサポートしていこうとするのか,またどんなサポートができるのかを考えることができる端緒であり,これらが整備された後の韓国の平生教育がどのような動きを遂げるのか期待されます。
 長くなってしまいましたが,今回はこの辺でまとめに入ろうと思います。今日は昼から慶尚北道地方で地震と余震が相次ぎ,明日予定されていた修能試験(韓国版センター試験)は1週間延期になりました。1993年の制度導入時から24年目で初めての事態だそうです。http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=shm&sid1=102&oid=437&aid=0000167745
 天気もいよいよ寒くなってきて,ダウンを着ている人を見ることも多くなりました。東京も寒くなったことと思います。皆さま,風邪などお身体にはくれぐれも気をつけてお過ごしください。

<師走、1年の終わり> 
ソウルの風 NO.20  
 (2017年12月28日)  南の風3894号
 2017年も残すところ4日となりました。先月末に風を吹かせてから,1ヶ月近く停滞しておりましたが,その間色々なことがありました。
 まずは先月末の第9回日韓学術交流研究大会です。会場がソウル大学ということで,アクセスがよかったのか韓国側の参加者がとても多かったです。日本からの参加者の方々も,顔なじみの方から和歌山大学の学部生さんまで,幅が広かったことが印象的でした。「社会問題解決と平生教育・社会教育」というテーマということもあり,日韓双方からそれぞれの社会が抱える問題をベースに報告がなされました。
 日韓共同研究も今年は2本報告がありましたが,日本と韓国が国は違えど共に悩み,それぞれが解決方を示していける基盤が第10回の研究大会開催を前に強くなったのではないかと思います。特に,研究大会の開催直前に起こった地震(浦項での地震)の影響もあってか,熊本地震時の公民館の地域での働き,役割など災害と社会教育・平生教育そして地域社会の関係について,討論などでも取り上げられていました。
 前日のエクスカーションでは,カン・ネヨンさんのいるソウル革新パークにも訪問が叶い,その後の懇親会でも美味しい全羅南道郷土料理をいただきました。
 そして12月は、12日から16日の日程でヤン先生のご紹介で忠清南道教育庁の日本視察に通訳として同行をしてきました。事前の準備や初めての通訳への緊張で、事前にご報告出来ずに申し訳ございませんでした。
 今回の忠清南道教育長の訪日は、学校と地域の連携をこれから進めていく上での日本訪問という位置づけでした。西は村田先生に大阪府・和歌山県で、東は長澤先生そして李先生に千葉県で公民館や関連機関・団体とつないでいただいて,現地の生の声を聞き,現場を観てきました。とても盛りだくさんの日程でして,それ故に勉強になることもたくさんありました。帰国後にゆっくり皆さんとぜひお話ししたいです!また中日の三日目には李先生にもお会いし,浅草やスカイツリー、お台場など一緒に巡ることが出来ました。
 最終日に柏の多世代地域交流団体に行った際には,学校との連携をすることによって高齢者の抱える寂しさと共働きの子どもの抱える寂しさという,マイナスとマイナスの要素をプラスにしていく,という説明に感動し,高柳地区のような場所に住みたいと話す先生もいらっしゃいました。
色々と大変なこともありましたが、全てがとても良い経験となりました。お忙しい中相談に乗ってくださった、ヤン先生、李先生、そして現地コーディネートをして下さった、長澤先生、村田先生にこの場を借りてお礼を申し上げたく思います。本当にありがとうございました。
 こうして振り返ってみると、盛りだくさんの師走、そして1年でした。何だか今年が過ぎるのが名残惜しい気もしますが,気持ちを新たに2018年も一歩一歩前に進みたいと思います。これから少しですが名古屋に帰り、年末年始は家族と新年を迎え、気持ちを新たにしたいと思います。そして小林先生、1日も早いご回復をお祈りいたします。帰国後に風の部屋で、また白ワインをご一緒出来るのを楽しみにしております。
 最後になりましたが,みなさまには旧年中大変お世話になりました。2018年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様、良い年をお迎えください。

<最終号、ありがとうございます!> 
ソウルの風 NO.21    
  (2018年2月19日)  南の風3912号
 いよいよ1年間の留学を終え、次の日曜日(25日)に名古屋へ戻ります。
 思い返してみますと、楽しかったこと、大変だったこと、悔いの残ることなど色々とありましたが、6年前の1回目の留学とは違う角度から韓国という社会を学ぶことができた1年だったと思います。
 近況をご報告いたしますと、韓国は16日の金曜日に旧正月を迎え、15日から昨日まで連休でした。連休前の2月13日には東アジア平生教育研究会が開催され、ちょうど来韓されていた長澤先生から現在の日本の社会教育を取り巻く現状の発表がありました。研究会を行った場所が国家平生教育振興院の12階会議室(院長室のすぐ隣)ということもあり、今回の研究会には今年の1月1日に就任したばかりのユン・ヨガク院長も参席をされました。生涯学習政策局とその中の社会教育課を取り巻く問題、今後新しくできる社会教育士という汎用資格、社会教育主事の養成課程の改編などについての話の後に、日韓それぞれの制度や資格などが互いの国のそれらに与える影響についてや、今後教育行政側から手放されるかもしれない文化行政について一般行政と教育行政どちらが担うことで公共性が担保されるのかなど、かなり深くまで 入り込んだ議論がなされました。また私も僭越ながら1年間の感謝の言葉と今後の研究の方向性についての発表を行いました。韓国語での発表ということで緊張して言葉につまる部分もありましたが、最後まで耳を傾けてくださり本当にありがたかったです。これまで母親の育児と子育ての両立とそれを助ける地域社会の役割という大雑把なテーマに関心がありましたが、李先生のこれまでのご指導と今回の発表を通して、子どもと大人それを取り巻く地域社会に韓国がなぜ今注目をし、地域社会での共同体をつくりあげようとしているのかという根本的な部分に対する答えを探すことを目標としていきたいと思うようになりました。引き続き帰国後も頑張ります。
 研究会終了後には送別会も開いてくださり、この日は目一杯勉強し、 目一杯美味しいものも食べ、美味しいお酒を飲むというとても印象深い1日となりました。この場をお借りしまして、ヤン・ビョンチャン先生やチェ・イルソン先生はじめ、東アジア平研会の皆様にお礼申し上げます。1年間温かく迎えてくださいまして本当にありがとうございました。
 そして同日に開催された第4次平生教育振興基本計画の地域公聴会@平生教育振興院の内容につきましては、2月の末に計画が確定されるということもあり、また改めてご報告させていただければと思います。計画(案)の推進課題の案をチラッとお見せしますと、1・国民誰でも楽しめる平生学習 2・職場と共にいつでも楽しめる平生学習 3・地域のどこでも楽しめる平生学習 4・基盤が 丈夫な平生学習 となっており、「いつでも、どこでも、だれでも」とそれを支えるシステムの構築がキーワードとなっています。(※「楽しめる」の原語は???です。何か良い訳がありましたらご教示いただければと思います。)
 それでは日本で皆様にお会いできますのを楽しみにしております。少しずつ暖かくなってきましたが、こういう時期は誰でも免疫力が衰えるそうです。くれぐれも皆さま、お身体ご自愛ください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




左端・松尾有美さん(20161113 韓国研究フォーラム・風の部屋)


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