===<資料4>==============================================================
4,浦東新区都市(城区)市民教育基地の現状に関する調査報告
(葉忠海『社区教育学基礎』より)
浦東新区の範囲が非常に広いため、新区管委会(管理委員会)は1996年から、区内を都市
の形態や機能により都市部と非都市部という二つの区域に分け、それぞれの区域に都市党
の工作委員会(党工委)と農村党工委を設置してその管理を担当させている。現在都市部で
は10の街道、1つの街道準備チーム、4つの鎮が都市党工委の管轄下にある。市民教育基地
の建設を推進し、街道社区教育の領域を開拓し、成人教育システムを構築することにより、
市民教育基地が二つの文明建設の中でより大きな効用を発揮するために、1998年5月〜8月
に、都市党工委政工処と区成人教育協会が合同調査チームを設置し、新区都市部にある市
民教育基地の現状に関する調査を行った。調査された市民教育基地というのは、都市部街
道(鎮)の住民(一部農村住民、主に成人、以下同)を対象に、各種の教育活動の実施を主要
な任務とし、街道(鎮)の主宰する教育機構をさす。
調査方法としては、アンケート調査、インタビュー調査、座談会や討論会の形をとり、
全体に対する調査と典型例の調査との結合や具体的なケーススタディと理論分析との結合
等の手段により、浦東新区都市部のすべての街道(鎮)にある市民教育基地を調査した。
調査結果は以下のとおりである。
一、基地の現状
1997年末の統計によると、都市部街道と鎮の面積は85平方キロであり、新区総面積の
16.26%であるのに対して、人口が89.2万人で、新区総人口の58.14%もの割合である。そ
の中には、黄浦江沿いの旧居住区もあり、市政の変動でできた新居住区もあり、ハイスピ
ードで都市化された旧農村地区(大量の外来人口が流入)もある。これらの地域では人口
の増加が速く、翌年の1998年8月には、すでに97.18万人に達した。現在、街道(鎮)の人
口規模は大小さまざまであり、人口の最も多い所が15万人であるのに対して、最も少ない
所は1.44万人に留まっている。
都市部街道の基礎がそれぞれ違うため、い(サンズイ+維)坊等極めて早い時期に市民
教育(都市部の成人教育をさす、以下同)基地を設立した特別な街道を除くと、1996年以
前には市民教育基地は空白に近い。以前からの青少年を対象とする校外教育がメインであ
る社区教育においてさえも、街道間の状況は一様ではない。
逆に旧農村部の郷鎮が都市部として指定された時には、旧郷鎮成人学校が基礎としてあ
ったため、それを地区住民が主な対象となる市民教育基地へ順調に転換することができ、
鎮所在地の成人教育をさらに発展させることができた。
浦東新区のめざましい開発に従って、新区の地域や人口規模は絶えず変化しており、市
民に対する教育も強化されるべきであるが、一定の施設がないために、市民教育の発展は
順調には進まなかった。市民教育が新区、とくに都市部の発展に追いつかないという問題
を早めに解決しないと、新区における二つの文明の建設には悪影響を与えることになるだ
ろう。そこで、1997年から2年間、新区都市党工委が市民教育基地の建設を精神文明建設の
重要なプロジェクトとし、すべての街道に一ヶ所の市民学校を設立することをその最も重
要なプロジェクトとして位置づけた。一年余りの努力の末、現在12の街道(鎮)に市民教
育基地があり、街道総数の80%を占めるようになったが、さらに3つが準備中である。
(一)市民教育基地の概況
1.基地の名称。「学校」(社区学校、市民学校、市民教育学校、成人学校)が9つで、69
%を占め、「学院」(社区学院、社区教育学院)が3つで、23%であるのに対して、「セ
ンター」が1つで、8%を占める。
2.管理方法。1つ目は街道(鎮)関連職能部門の責任者が基地責任者を兼任することにより
直接に管理する方法である。二つ目は街道(鎮)が運営を、基地職員が教育を、それぞれ
分担する方法である。三つ目は街道(鎮)が合弁相手と共同で管理する方法である。
3.組織形態。一つ目は外部に校務委員会があり、内部に教務や総務などの職務部門を備えた
機構である。二つ目は内部に幾つかの組織があり、居委会などの末端に分部(或は分院)
などの支部が設置される機構である。三つ目は内部に組織がなく、街道或は居委会の市民
教育を担当する専任職が1〜2名いるだけの機構である。都市部の区画変動や土地の徴収、
移動により、人口が増加する鎮がある一方、減少する鎮もある。その影響で、教育基地の
組織形態も違ってくる。例えば欽洋鎮では、鎮成人学校基地を「一基三校」(党校、成人
学校、企業訓練センター)の体制にしており、鎮の党員幹部教育、企業の職工教育、市民
の社会文化教育及び農業の後継者教育を融合させた。それに対して、厳橋鎮では、人口が
年々増加し、鎮政府が1998年5月に住民が集中して居住する由由団地(新村)に社区学院
を設立し、鎮成人学校、由由中学校、由由管理センターを市民教育基地にした。
4.教育施設。一つ目は街道(鎮)からある規模の施設と相応の教学設備が支給される基地で
ある。二つ目は社区内の関連する職場から校舎や設備を借用し、教室が変動しない基地で
ある。三つ目は社区内にすでにある教育資源を活用する、つまり資源の共同利用というパ
ターンである。場所が一定であるが、教室は臨時に借用する。四つ目は場所も一定ではな
く、街道の職員が職務を担当し、その都度各居委会の活動室で教学活動をする基地である。
5.設立過程。一つ目は鎮成人学校から転身する基地である。二つ目は団地(新村)や居委会
で市民教育活動がすでに展開されているところを別にネーミングする基地である。三つ目
は街道党校や政校の基礎の上に設置される基地である。四つ目は直接に設立される基地で
ある。すでに多年の運営により、経験を積んだ い(サンズイ+維)坊等少数の街道を除く
と、大多数の街道では基地が最近になって設置されたものであり、まだ完全な規定、制度
が作り上げられていない。一部の基地がまだ準備中である。
6.事業規模。設立過程や、校舎、設備およびネットワークの違いにより、規模も大小さまざ
まである。参加人数が延べ何万人にものぼる街道もあれば、数百人の街道もある(統計基
準が一様ではない問題もある)。中では、まだ準備中であるが、すでに開講される基地も
ある。
(二)市民教育基地の役割
街道の社区教育が街道によって、始まったばかりのところもあり、その進捗状況が一様で
はないが、社区教育の場としての市民教育基地が新区の建設においては、重要な役割を果た
すことが、実践の中で明らかになってきた。その役割は主に以下の3つである。
1.陣地としての役割。市民教育基地で展開された教育活動は、その広い教育対象、確保でき
る一定の学習時間、系統的な学習内容を特徴とする。市民の資質や文明レベルを高め、文
明的な都市の建設を促進するうえでは、市民教育基地の陣地としての効用が見落とされて
はいけないし、替えられるものではない。社区教育の主要な場としての市民教育基地がす
でにすべての街道(鎮)に普及し、多次元の比較的に完全なシステムが形成された。基地
の様式は多様で、その学習内容もきわめて広く、社区住民に十分な学習機会を提供するこ
とができた。
2.教育の役割。社区の文化建設だけが市民教育の目標ではなく、社区の二つの文明建設に貢
献できる「四有」人材を養成するのがより重要である。人材の育成が市民教育の最も基本
的な役割であり、社区が発展するための「造血」でもある。社区発展の多様な需要に応じ、
積極的に条件を創出し、市民教育が各種の人材を養成することにより、街道(鎮)の発展
に必要な人材を提供することができる。多くの街道(鎮)の市民教育実践がその点をすで
にある程度証明している。そこでは、在職者或は失業者を対象に職業技術教育を施し、と
くに失業者に再就業できるように技能訓練を提供する。ほかに、青少年の健全な成長を願
い、かれらを対象に校外教育を展開している。同時に、数多くの老人教育を行い、老いて
も学ぶことができ、老いても楽しく生きることができ、老いても貢献することができるよ
うな教育を提供できるように、生涯教育システムの構築のための有益な摸索をしてきた。
特に思想道徳教育、科学知識の普及活動、法律に関する教育などが、市民の文化素養及び
市民全体の資質を高めることに貢献した。
3.集合の役割。い(サンズイ+維)坊街道の市民教育基地では、数年連続して毎年延べ1万人
あまりが学習に参加することが続いてきた。学習内容が客観的な需要及び住民の要望に応
じるものであったから、住民の生活を豊かにすることができた。社区住民の多くが市民教
育基地の周辺に集まり、喜ばしい団欒の状態が形成された。確かに現在のところ、主観的
や客観的な条件の制限により、市民教育がまだ完全に住民の学習要望を満たすことはでき
ないが、基地の集合力の形成が社区教育の今後の発展にとって有利な条件であり、社区精
神文明の建設のために良好な基礎を定めた。
その他に、社区の二つの文明の建設に、市民教育が誘導、条件、支持、養成、範例、放射、
創造など多くの役割を果たすことができる。
二、調査の分析
市民教育基地の現状に関する調査で得た知見は以下のとおりである。
(一)社区教育に対して、人々が共通の認識を持つようになりつつある。
社区教育は教育の問題に留まらず、社区の安定、経済の発展、都市精神文明の建設にもか
かわるものである。このような社区教育の効用が人々に認識されるようになるにつれ、社区
教育の場としての市民教育基地も、関連部門とくにその責任者に重視されるようになってき
た。基地の建設が進み(とくに街道では)、成果も明らかになってきた。
調査チームの主催した座談会から見ると、新区成人教育弁公室、都市党工委政工処、街道
の担当リーダー、社区教育専任幹部など、どの部署の責任者かにかかわらず、一致した認識
をもっている。つまり、社区教育は「誰でも教育に参加し、誰でも教育を受ける」という社
会化大教育であり、地区の社会教育であり、該当地区の青少年、成人及び老人教育を網羅し
なければいけないということである。
社区教育の推進が社会の発展に応じたものであり、その理由は以下のとおりである。
第一に、生涯教育システムの構築から言えば、社区教育が生涯教育の考え方に一致する。社
区教育の家庭、社会、学校と密接に結合するという全面性、住民なら誰でも参加するという
開放性、組織形態と活動方式の多様性、学習者にとって選択の余地が大きいという柔軟性、
社会の各部門が共同参加するという民主性等の特徴があげられる。だから、社区教育は生涯
教育を実現する有効な方法である。
第二に、都市建設の目標から言えば、二つの文明の建設を進めるのに、人々の資質を高めな
ければならない。都市の文明レベルと市民の資質を引き上げるのが、社区教育の重要な役割
である。
第三に、市民個人の需要から見れば、市場経済への移行、知識経済時代の到来、近代企業制
度の実施に伴い、新しい時代に適応するためには、絶えず学習しなければならない。本市の
ある最新の調査データによると、63.4%の住民が社区と個人の関係がますます密接になると
予測し、彼らは社区が安住できる楽園になることを望んでいる。それは安定した生活、文明
的な環境及び、教育を受け、教育に参加することをさす。社区の市民に学習の機会を提供し、
市民のますます高まる学習意欲を満足させることが該当地区の党や政府機関の果たすべき義
務である。
浦東新区は建設、発展中の新都市として、住民の移動という社会変動の真っ最中にある。
例えば準備中の三林城街道には、現在2万人の住民しかいないが、移入した住民と現地の元
農民の割合が共に高く、その差違が文化レベル(学歴)や生活習慣において顕著に現れてい
る。社区内部の整合を早め、社区住民の一体感を育てるためには、市民教育基地という社区
教育の場での住民に対する教育が緊急に求められている。
(二)市民教育基地の成功経験
市民教育基地の発展が早く、運営も順調である街道(鎮)の共通な特徴が調査から見えて
きた。
(1)責任者の重視と専任職員の配置。責任者が自ら関与し、市民教育基地の設立を年度行政計
画に組み入れ、経費を確保し、専任管理職員を配置することによって、管理者、施設、経費、
職員を基本的に保証することができた。
(2)住民の要望や実際の需要に応じた内容。教育内容から見ると、その大部分が市民の需要に
応じた再就業教育、法制教育、社会文化生活関連教育である。党員教育、幹部教育も職務の
必要によってアレンジされている。
(3)柔軟で、多様な様式。学習時間が柔軟で、教学方式も多種多様である。コンピューター、
L.L教室、大画面のスクリーン、多機能ホール、トレーニング器械、模型などの設備を備えた
基地もあり、基本的に各種の教学の需要を満たすことができる。
(4)連携と資源の共同利用。多くの部門が社区内外の教育機構と連携し、共同運営の形で、教
師、設備、学習者の募集等の面においては、お互いに協力する。
(三)発展の中で存在する問題
調査の中で、市民教育基地の発展を阻害する問題も発見した。主に以下のとおりである。
(1)市民教育に対する認識の問題。区の社区教育が青少年の学校外教育から始まり、基礎教育
部門の管轄下にあり、社区教育管理委員会も今までの慣習で青少年の学校外教育だけを管理し
ている。このような認識に基づき、社区教育の担当者に青保弁(青少年保護弁公室)の職員を
指定する所もあれば、社区教育が街道、居委会の定年退職者を対象とした老人教育であると考
える人もいる。明らかにこれらの認識が歪んでおり、それを正し、統一させる必要がある。
(2)市民教育の管理体制が未完成である。上述の認識上の問題が管理体制の混乱を引き起こす。
教育部門の管轄下にある街道、宣伝部門の管轄下にある街道、民政部門の管轄下にある街道と、
さまざまである。その他に、市民教育に関する政策的な規定が欠落されており、街道(鎮)の
ほうが市民教育を展開する積極性があっても、遵守すべき規則がないし、特に問題が生じたと
きに、どの部門に問い合わせたらよいのかわからない。浦東新区にはいまだに大教育概念上の
社区教育を管轄する専門的な機構がなく、第一線の実務者が方向を見失ってしまう。すでに設
立された市民教育基地でも、準備から運営まで街道に任せられているのが現状である。このよ
うに、認識と管理体制上の問題で、街道の市民教育基地が設立される場合、必要な、規範的な
審査手続きが不明瞭である。市民教育基地が必要な条件を備えているかどうかを審査する部署
がないし、名称が適切かどうかに関する明確な規定もない。管理体制の不備が、市民教育の経
費、教師、教材に関する問題をも引き起こす。街道の中で、教育行政部門の審査を経て、学校
設立許可書および費用徴収許可書を得た南碼頭街道社区学校以外に、他の市民教育基地は教育
行政部門の正式な審査を受けていないので、すべて無料の授業となる。しかし、街道の予算が
限られているので、結果的に市民教育の拡大が阻まれることになる。教師も正式なルートでは
なく、大概知り合いを通じて募集するので、その質が保証されない。この問題が専門教科の教
師になると、一層顕著に表れる。また、実用的で、系統的な教科書の欠落も比較的に大きな問
題である。
(3)市民教育の普及率が高くなく、教育対象が単一である。統計資料によると、大多数の市民
教育基地では、教育対象が老人と在校青少年に限られ、在職者が少ない。しかも教育の普及率
も高くない。い(サンズイ+維)坊街道の市民教育基地においてすら、毎年教育を受ける人数
が述べ1万あまりであるが、実際の入学者が街道人口12万に占める割合が低く、今年の教育人
口が地区総人口の30%を占めるべきという新区都市工作委員会の出した目標から、まだ距離が
ある。
三、幾つかの提案
現在新区の都市面積が新区全体の16.26%を占めるのに対して、人口の同割合が58.14%も達
している。だから、市民教育は学習社会の形成、生涯教育システムの構築、新区の成人教育に
とって、極めて重要な現実的な意義と潜在的な深遠な意味を持つものである。市民教育基地の
建設がすでに各行政レベルの責任者に重視され、進展も比較的に早いが、現存の問題を解決す
るための措置を早急に取らなければ、市民教育基地の更なる発展に影響を与えるであろう。市
民教育基地の現状及びそれに対する分析から出した以下の提案が、関連部門の参考になれば幸
いである。
(一)体制の確立
社区教育の発展過程の中で、社区教育の意味が絶えず拡大されてきた。特に近年の人々の認
識が更に新しい内容をもたらした。それと較べると、社区教育の管理が遅れている。縦の管理
ラインが不明確で、業務上の指導が徹底されていない、という現状が社区教育の発展を制約し、
市民教育基地の建設にも影響を与えている。ここで、教育行政部門(普通教育、成人教育、職
業教育を含む)と、民政部門、宣伝部門等の職能部門からなる管理機構を設置した上、成人教
育リーダーチームが総合的な管理を行うことを提案したい。成人教育リーダーチームが必要な
政策、制度を制定し、審査、運営、業務指導などの責任を明確にし、社区教育を総合的に管理
運営する。新区都市工作委員会が今回の街道(鎮)機構を調整する際に、街道に社区教育職能
部門の設置を明確にし、新区全体の統一を図ることも提案したい。
(二)管理の強化
社区教育は生涯教育の理念に基づいた社会事業である。市民教育基地の建設が新しい仕事で
あるので、一連の有効で、規範的な管理制度(学校の設置、教育管理、試験審査、奨励など)
が欠けている。ここで、社会力量(公的なもの以外の)による学校経営の設置標準及び郷鎮成
人学校の建設基準を参考に、実施可能な市民教育基地の建設基準、企画目標、審査手順などの
制度を制定することを提案したい。更に、区、街道の社区教育ネットワークを利用することに
よって、実施状況を把握し、管理を強化する必要がある。
(三)経費の確保
調査から、市民教育基地の経費は大きな問題であることがわかった。新しく設置された街道
或は経済的基盤の弱い街道では経費が確保できない。たとえ比較的経済的条件がよく、毎年市
民教育基地のために一定の予算を組む街道であったとしても、無料の教育活動であるため、そ
の限られた経費が市民学習の需要を満たすことができない。管理体制が確立されるという前提
の下、市の関連部門が次のような規定を作ることを提案したい。つまり、農村の教育事業附加
費の中から、その一部が成人教育のために指定されているように、市民教育基地の財源を確保
するためには、都市の教育事業附加費の中からも、一定の割合を社区教育のために指定するこ
とである。市からこのような規定が出される前に、各区(県)、街道(鎮)がその職権範囲内
で、一定の措置をとり、基地への財政支出を拡大すると同時に、経費の創出を基地に奨励した
り、学習者から合理的な費用を徴収したりするなど、費用を多くのルートから確保することを
提案したい。南碼頭社区学校が新区教育財政部門の審査を経て、学校運営、経費徴収の許可を
取得したことにより、街道から義務付けられる無料訓練の任務を果たした上で、有償の訓練を
実施することができた。それは学習者の学習意欲を高めるためにも、学校の財源を確保するた
めにも有益である。
(四)具体的な指導
市民教育基地の建設がまだ長くないため、その発展過程の中でこの問題が現れるのがむしろ
自然であるが、重要なのは確かな援助と具体的な指導である。例えば教材、教師など運営上不
可欠な事に関しては、関連する職能部門による指導と情報の提供が必要である。新区都市工委
会が関連部門と編集した『市民文明行為規範ABC読本』が援助、指導のよい例である。
(五)典型の樹立
各街道(鎮)がよい市民教育基地を一ヶ所建設し、それを中心にして、各居委会に放射状で
影響を与える。真に区レベルの社区学院(設置した区もあるし、準備中の区もある)を頭に、
街道社区学校を中核に、末端の居委会(村)につながる市民教育システムを形成すべきである。
このシステムの形成ならびにその役割を果たすためには、必要な奨励制度の設置が必要である。
先進的なモデルを樹立、扶助し、彼らの成功経験を整理、広め、モデルとしての効用を存分に
発揮することにより、市民教育基地の発展を促進する。
社区教育は、発展中の事業としてその特有の意義がますます顕著になってきている。社区教
育の発展に従い、社区教育の場としての市民教育基地の建設もその完成に向け、絶えず発展す
ることを信じて疑わないものである。
(葉 忠海『社区教育学基礎』,上海大学出版社,2000年6月所収)
===<資料5>==============================================================
5,上海市閘北区し江西路街道社区教育の発展概況
わが街道の社区教育は4つの段階に分けることができる。
第一の段階は初級段階(1989年〜1993年)である。
1989年にし江西路街道社区教育委員会が設立された。その段階の社区教育の主な対象は小中高の子
どもであり、重点は彼らに対する道徳教育であった。社会の各分野が協力して学校、家庭、社会を
一体化した教育ネットワークを構築し、子どもに対して革命伝統教育、五愛教育、法制教育、労働
教育および思春期教育を行い、そのための道徳教育基地を開設し、各種の講座、学習コースを開講
した。これらによって、子どもの放課後生活が豊かになると同時に、社区の中で教師を尊重し、教
育を重んじる良好な雰囲気が形成されるようになった。
街道としては、小中高の教育改革を積極的に支持した。学校外の環境を整備することに努め、学
校とともに道徳教育の新しい様式を作り上げ、道徳教育の社会化を目指した新しいルートを開拓し
た。同時に各分野において成果をあげ、閘北区の教育になすべき貢献をした。
第二の段階は模索段階(1994年〜1997年)である。
改革の深化及び近代化建設の発展とともに、街道の職能が大きく変化した。特に「二級政府、三級
管理」の改革後、如何に住民の資質を高め、文明小区を建設することによって、社会が安定し、人民
が安心して生活を楽しめるようにするのが街道の主要な仕事となった。
街道党工委、弁事処及び社区教育委員会が討論によって、理論と実践の面で古いモデルを捨て、3
つの転換を図った。
1.社区教育の対象は小中高の在校生だけではなく、すべての社区住民であるべき。
2.社区教育の内容は小中高在校生の思想道徳教育に限らず、全方位であるべき。
3.社区教育の主体は学校に留まらず、社区全体であるべき。
1994年にし江西路街道がまず社区教育訓練センターを設立し、その下に科学知識普及学校、芸術学
校、民族音楽学校、美術学校、体育学校、親学校、週末学校、?西実験芸術団等を開設し、そこで科
学知識クラス、老人書道絵画クラス、再就職訓練クラス、近代管理訓練クラス、コンピューター訓
練クラス、英語学習クラス、法制クラス、地方劇クラス、健康発達クラスなどを開講し、聴覚障害
者たちも読書クラスや無声サロンを組織した。同時に、学校の受験中心の教育から資質教育への転
換に協力し、毎月一つのテーマで一回活動を行う「発達を援助する」シリーズの活動を、今まで52
回を展開した。他に、老人保健、老人心理学、足のマッサージ及び拳術、社交ダンスなどのクラス
を開講した。不完全な統計によると、学習に参加した学習者が延べ39,600人であり、社区総人口の
31.4%にのぼった。
第三の段階は構築段階(1998年〜2000年)である。
新しい世紀に向けて、社区教育に対する認識を新たにしなければならない。社区教育は社区住民
を対象とする教育であり、全民、全方位、全生涯を特徴とする。だから、社区住民全員に開かれる
道徳教育、法制教育、環境教育、人口教育、子育て教育、婦人教育、健康教育、文化教養・娯楽及び
再就職訓練を充実しなければならない。
1998年3月に し江西路街道社区教育委員会が区社区教育委員会、閘北業余大学、閘北成人教育協
会などの協力の下、「生涯教育節」を催し、成功裏に幕を閉じた。それから毎年の3月に街道生涯教
育節を催すことを決め、それをきっかけに、生涯教育(学習)の理念を広く宣伝した。いままですでに
3回を開催し、毎年テーマを決め、徐々に深く掘り下げていくようにしてきた。
よりよく生涯教育(学習)を推進するために、我々は調査研究の結果に基づき、1999年の初頭に「し
江西路街道生涯教育(学習)システム発展計画(1999年〜2004年)」を制定し、更に、「?江西路街道生
涯教育(学習)システム発展計画の段階別実施企画」を制定した。1999年〜2000年は生涯教育システム
を構築する初期段階であり、2001年〜2004年はその形成段階とする。その推進にあたって、我々が家
庭から着手し、毎年の生涯教育節に10戸のモデル家庭を表彰する。広く住民の学習意欲を高めるため
に、学習型家庭の選出基準を決めた。2000年に学習型家庭を申請した家庭が661戸にのぼり、学習型
家庭に選出された家庭には、小さい本棚を贈呈した。さらに学習型家庭を宣伝するために、10種類の
家庭から構成される報告団が、住民を対象に講演をし、効果を収めた。
街道が社区内の教育資源、人的資源を存分に活用することで、各種の教育訓練活動を開催した。区
文化館、体育館、少年宮、観光職業学校及び小中高校が、昼間には在校生を対象に、夜あるいは週末
には住民に開放し、施設のフル活用をすることができた。また、街道が60万元を支出し、街道図書館
と居民委員会図書室を建て増しすることによって、横丁の中に学習の場を確保することができた。そ
れが住環境の改善や宣伝コーナーの設置と相まって、学習型文明社区の建設にとって良好な社会的環
境を創出した。
第四段階(2001年〜2005年)。
積極的に区政府(2000)54号文の精神を貫徹し、本街道の状況に基づき、学習型文明社区としての
し江西路街道の建設に努める。目下のところ、我々は学習型組織に関する活動を展開している。今年
は管轄区内の企業・事業部門の中から、2〜3箇所を選出し、そこでまず試験的に活動を行い、その
成果を生かしながら徐々に広めていく。
住民に良好な学習環境を提供するために、社区学校を主要な施設とし、徐々に分校、居委会学習地
点の三段階ネットワークを形成し、その規範化と科学化を図りながら、今後は主な仕事として社区学
校のカリキュラム設置とそのアレンジを摸索していく。
社会が常に発展しており、教育が経済発展の基本である。我々が近代化に向け、世界に向け、未来
に向け、更に思想を解放し、事物を客観的に捉え、実践と発展に着眼し、外国の先進的な経験を大胆
に吸収し、我が民族の優秀な伝統文化の発揚と人類の創造したすべての文明成果の学習とを結合する
ことによって、?江西路街道特有の社区教育の道を歩もうと努める所存である。
し江西路街道社区教育委員会 2001年7月12日
===<資料6>==============================================================
6,上海市閘北区の社区実務従事者に対する職務資格訓練に関する意見
各街道、鎮:
1996年の市都市会議(城区工作会議)において社区の建設と管理を強化し、都市の近代的管理レベル
を絶えず高める目標が打ち出された。以来3年の間に、我が区の社区建設が十分な発展を遂げ、街道、
居民委員会の社区を管理する能力とレベルも大いに高まった。しかし、都市の社区建設の更なる発展と
ともに、特に新世紀を迎え、第一線の社区実務従事者が新しい状況や新しい問題に直面しているのが実
情である。彼らは学習と訓練を通じ、社区実務の基本理論と科学的方法をマスターすることを切に願っ
ている。その需要を満たすために、我々が第一線の社区実務従事者である居委会の幹部を対象に職務資
格訓練を提供することを決定した。その訓練を通じ、第一線の社区実務従事者の思想と専門的資質をさ
らに高め、基準をクリアした社区建設の人材と中堅の管理者を養成する。それによって、社区の管理を
更に強化し、社区の建設を促進する。
訓練実施方法は以下のとおりである。
一、訓練対象
1.各街道(鎮)居委会専任職幹部・居委会主任
2.社区実務従事者
二、訓練時間(1999年〜2000年)
2000年末までに、上記人員の訓練を終え、以降需要に応じ開講する。
週日と週末の両方にて開講する。週2回、1回半日の4コマを利用する。1期84コマとなり、1999年5
月に開始する。(具体的な時間は別紙で通知)
三、訓練方式
対面指導と独学の結合、授業と独学の結合、講義と考察の結合、試験と審査の結合。
四、訓練内容
一線の社区実務及び居委会の職務に従い、訓練の指導要領と学習内容を制定する。詳しくは訓練計画
を参照されたい。
五、組織と指導
1.区人事局、民政局、成教弁(成人教育弁公室)から構成される訓練事務協調チームが、訓練の組織
及び協調を担当する。区人事局が訓練幹部の人事管理を、区民政局が受講者の組織、募集、管理及
びカリキュラムの設置に関する指導を、区成教弁が指導要領の実施、教学、試験及び証書の配布を、
それぞれ担当する。
2.協調チームの下に弁公室を新設し、その日常事務を担当する。弁公室は民政局基政課に設置される。
3.訓練の実施は閘北社区学院に委託する。
六、試験と証書
1.試験と審査:訓練の成績を総合的に評定する。試験と審査との両方の方法で、成績を優秀、合格、
不合格の三段階で評定する。
2.合格者には社区実務従事者職務資格証書を与える。
七、賞罰措置
1.訓練が終了する度に、一定数の優秀な受講者を選出し、適切な精神的かつ物的な奨励を与える。
2.成績が不合格になった受講者が訓練費用を個人負担にし、職場の公費で賄ってはならない。更に
合格するまで訓練を受け続ける。
3.職務資格証書が社区実務従事者にとって、就業資格と職務に従事する根拠となる。
(葉忠海著『社区教育基礎』、上海大学出版社、2000年6月 所収)